日本の阪和興業、中国の電池リサイクル業大手GEM(格林美)、ステンレス大手の青山控股集団、リチウムイオンバッテリー最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)、インドネシア・モロワリ・インダストリアル・パーク(IMIP)が、インドネシアのスラウェシ島で水酸化ニッケル、コバルトなどの大量増産へ
なお、出資比率はGEM(格林美)が36%、寧徳時代新能源科技(CATL)が25%、青山控股集団(Tsingshan)が21%、インドネシア・モロワリ・インダストリアル・パーク(IMIP)が10%、阪和興業が8%
なお、IMIPはPT Bintangdelapan Groupと青山控股集団(Tsingshan)との合弁企業とのこと
China battery firms set up $700 million nickel joint venture in Indonesia ロイター
このプロジェクトでは、インドネシアのスラウェシ島にある青山控股集団(Tsingshan)の工業団地に少なくとも年間5万トンのニッケル精錬能力を持つプラントを建設するとのこと。
また、コバルトも4000万トン精錬することを計画。
さらに年間50000トンのニッケル水酸化物も生産する予定とのこと。
なおニッケルは青山控股集団(Tsingshan)から仕入れるとのこと。
青山控股集団(Tsingshan)はインドネシアにおけるニッケルの最大生産企業とのことです。
GEM(格林美)と青山控股集団Tsingshanは他にも、中国の福建省南東部、寧徳(Ningde)の工場で年間7万トンの電池材料を生産する計画もあるとのこと。
以上が記事のまとめになります。
以下は個人的な意見を多く含みます。
電池リサイクル業のGEM(格林美)は資源大手グレンコアからコバルトの調達をする契約があります。
GEM(格林美)は今後グレンコアが生産する1/3のコバルトを引き受ける契約があります。
グレンコアはコンゴ民主共和国でコバルトの生産をしています。
しかし、このグレンコアのコンゴ民主共和国でのコバルト生産は、いろいろと問題含みです。
Glencore Said to Face U.K. Bribery Probe Over Congo Dealings (2)
グレンコアはこのコンゴのカタンガ・マイニングにおける取引をめぐり、英国の重大不正捜査局SFOから捜査を受けているとのこと。
グレンコアおよびイスラエル人資産家ダン・ガートラー氏、コンゴ政府関係者との贈収賄問題について問題になっているとのことです。
コンゴ民主共和国DRCにおけるコバルト生産は、児童労働や私兵による略奪など様々な人権問題が指摘されてきました。
そうした国で急速に調達を拡大しているのが中国です。
また、GEM(格林美)は寧徳時代新能源科技(CATL)への大規模供給契約をすでに結んでいます。
つまり、
グレンコア傘下カタンガ・マイニング→GEM(格林美)→寧徳時代新能源科技(CATL)
という流れがすでにできており、今回の青山控股集団(Tsingshan)などとの提携は、まさにそのサプライチェーンを強化するためのものといえると思います。
なお、今回の件に日本の鉄鋼商社である阪和興業が関わっているのが興味深いところ。
同社にとっては金属原料事業はセグメントとしては小さいのですが、一発逆転を狙っているのでしょうか。
今後の動向には注目です。
以下、関連記事
中国は2019年からのNEV規制を控え大量のリチウムイオンバッテリーを必要としています。
関連記事:非関税障壁で守られた寧徳時代新能源科技(CATL)は中国製造2025を象徴する企業だ!
そのため、リチウムに関して天斉リ業にチリのSQMへの出資をさせたりしています。
関連記事:リチウム生産大手SQM(ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ)は天斉リ業に買収されるのか?
三元系正極材の材料であるニッケル、コバルト、マンガンの調達に関しても中国は積極的に行っています。
関連記事:18/6/12午前 中信金属、華友鈷業、格林美、チャイナモリブデン、中国五鉱集団、紫金鉱業がコンゴ民主共和国で鉱山開発
なお、日本では住友金属鉱山が三元系正極材向けニッケルを製造しています。
企業短評:住友金属鉱山についてみてみよう~三元系正極材用ニッケルが好調~
ニッケル輸出二位のフィリピンではニッケル鉱山の閉鎖をドゥテルテ大統領が指示するなどしており、インドネシアのニッケルが注目を浴びています。
フィリピン:台風22号で土砂崩れ発生 ドゥテルテ大統領がすべての鉱山の閉鎖を示唆
以上。