JT(日本たばこ産業)の株価が大きく値下がりしています。
大手格付け機関ムーディーズによる債務格付け引き下げや、証券会社のレーティング引き下げを理由に解説する人がいますが、個人的にはそれは違うように思います。
もっと大きな流れ・・・端的にいえば、ESG投資重視によるタバコ銘柄のポートフォリオからのハズシが続いているものと思われます。
最近、主に公的資金を運用する機関投資家などのあいだではESGなどという単語が流行っているそうです。
これは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を重視した企業への投資のことで
古くはSRI(Socially Responsible Investment)と言われた投資法と似たようなところがあります。
具体的には、アルコール、ギャンブル、タバコ、環境汚染企業を排除して投資先を決めたり(ネガティブスクリーニング)、ESGに積極的に取り組む企業を選んで投資したり(ポジティブスクリーニング)することになります。
またこれらESGへの関与の度合いを各企業ごとにレーティング付けし、それをもとに機関投資家がESG投資を行う・・・ような流れができあがっています。
- Dow Jones Sustainability Indices
- FTSE 4 Good Index
- MSCI ESG Indexes
これらのESG指標はとても便利です。
なにが便利かって、ESGに注目したせいで運用成績が振るわなかったとしても
「ESGのインデックスからは負けてないから問題ない」
と開き直れるのです。インデックスなんてもんはそういうために存在しています。
一応、MSCI ESG Indexesのリストはこちらです。ネット上で落ちてたものなので今は変更されているかもしれませんが、ご参考まで。
https://www.msci.com/documents/1296102/3556282/2017+Dec_ESG+Select+Leaders+list.pdf/831a09c7-2745-48dd-9b2b-bbcaefd321b5
で、株価の話に戻します。
世界的に、たばこ関連の株価は軟調です。
フィリップモリス
アルトリアグループ
JTに限らず、タバコ関連株はどこも高配当です。
ですから、疑似債券のような感覚で、高配当ディフェンシブストックとして、買っている投資家はいました。とくに年金基金などは長いこと上位株主の常連でした。
そうした投資家の一部が、ESGを理由に売りに傾いています。
彼らは、ESGを理由にしているのですから、売ったら売ったきり、買い戻しません。ですから、需給関係でみるとかなり悪化することになっています。
※実際には、ここ数年でタバコ株は大きく値上がりしましたので、利益確定の売りも出ていると思います。それと金利上昇に備えて疑似債券を売る流れもあります。しかし今回は、それに加えてESGがらみの売りも入ってきているようです。
BNP Paribas Asset Management extends tobacco exclusion
policy
とりあえずそんな感じでJT株の話を〆ようと思いますが、このESG投資の流れ、最初に述べたとおり、タバコだけに限ったものではありません。アルコール、ギャンブル、ポルノ、環境汚染、企業統治不備、不正競争などなど、ありとあらゆることがESG投資の枠組みで語られます。
つまり今後は、環境に悪い企業(石炭、石油など化石燃料企業)が外されたり、不祥事企業がより売られやすくなったりしやすくなります。
そういった感じでみていくと、公的資金みたいな大人が無理に売りをぶつける場面が理解しやすくなります。彼らは絶対的なリターンはどうでもよく、とにかくESGというお題目に沿っていればそれでいいのです。
ESGから外れた銘柄の下げトレンドがみえたら、そのトレンドは今までよりも続きやすくなるのです。
それはとっても美味しいと思います。
おこぼれを戴かない手はないと思います(笑)
以上、あくまでも個人的な見解です。
参考にして損をされても補償はいたしません。
by中卒くん