北大西洋条約機構(NATO)の国防相理事会、ロシアが開発した新型地上発射型巡航ミサイル9M729(SSC-8)を中距離核戦力全廃条約(INF全廃条約)違反であるとして非難
ロシアが開発した新型地上発射型巡航ミサイル9M729(SSC-8)の性能が、中距離核戦力全廃条約(INF全廃条約)に抵触しており違反であるとして、北大西洋条約機構(NATO)の国防相理事会が批判しています。
NATO事務総長のストルテンベルグ氏によると、ロシア側は新型地上発射型巡航ミサイル9M729(SSC-8)の存在を認めたとのこと。
ロシア側は9M729(SSC-8)に関して詳しい説明を拒否しているとのことですが、どうやら巡航距離が500㎞以上と非常に長く、デコイなどを使って迎撃を回避でき、しかも核弾頭を搭載できる可能性があるようです。
今回の件に対しNATO米国代表部のハチソン大使は、外交的解決を目指すとしつつも、地上発射型巡航ミサイル9M729(SSC-8)によるINF全廃条約違反が長く続くようであれば、米国はこれを除去する用意があると警告。
U.S. would destroy banned Russian warheads if necessary: NATO envoy
なにを意味するのかはわかりませんが、軍事行動もとるということか?ということでNATO各国が慌てました。
これについて、ハッチソン大使は発言をtwitterで説明(ほんとtwitterする高官が多いですね)
https://twitter.com/USAmbNATO/status/1047203183964160001
「私は先制攻撃するなんて言ってない」
とのことです。
なんだか弱腰ですねえ。
とりあえず、ロシアの開発した新型地上発射型巡航ミサイル9M729(SSC-8)ですが、まだその全貌がみえていません。
ですが、9M729(SSC-8)という型番からするとロシア製短距離弾道ミサイル(SRBM) 9K720 Iskander(イスカンデル)よりも射程、精度、防衛回避能力などが向上していることは予想されます。
イスカンデルKはすでに最大射程500㎞ですから、9M729(SSC-8)がそれを超えるとなると確かにINF全廃条約違反になるでしょう。
INF全廃条約(中距離核戦力全廃条約)は1988年に米ソ間で発効し、両国が保有する射程500~5500㎞の地上発射型ミサイルの全廃を定めたものです。
これに違反するということは、もはやロシアは軍拡競争の火ぶたを切る、という判断になります。
ロシアは地対空ミサイルシステムS-400で迎撃能力を確保しつつ、中距離巡航ミサイル9M729(SSC-8)で核攻撃能力を保有することになります。
これはNATOのみならず、周辺諸国にとって非常に脅威です。
今回の件、今後一層揉めそうに思います。
以上。
追記 10月21日
ロシアの中・長距離巡航ミサイルシステム9M729(SSC-X-8)の開発を受け、トランプ大統領が「核廃棄条約を破棄する」と語っています。
やはり、こういう方向になりました。
盾と矛の関係でいうと、イージスなどのミサイル防衛システムは盾、中・長距離巡航ミサイルシステム9M729(SSC-X-8)は矛ということになります。
今までのミサイル防衛技術の開発は主に弾道ミサイルを想定したものであり、高度に制御された巡航ミサイルを打ち落とすことは難しい状況です。
このような中、ロシア側が中・長距離巡航ミサイルシステム9M729(SSC-X-8)を開発したことで、モスクワから撃てばロサンゼルスまで核攻撃出来てしまう状況になってきました。
アメリカとしては核戦力のこれ以上の廃棄は現実味がない。むしろこれからは更なる軍拡だ、という判断のようです。
なお、中・長距離巡航ミサイルシステム9M729(SSC-X-8)は地上発射型ですが、いずれ潜水艦などから発射できる海上巡航ミサイルSLCMの開発にも成功するでしょう。
さらには、ロシア側はRS-28(NATOコードネームSatan2)という射程距離11000㎞を超える弾道ミサイルを開発中と言われています。
実質的に、ここまで至ると盾の意味はほとんどなくなると思われます。
今後はレーザー兵器などによるミサイル防衛開発を急ぐほかないでしょう。
これは、日本の防衛体制に関しても言えることです。
現在、ミサイル防衛の主力はイージスおよびイージスアショアですが、これらでは長距離巡航ミサイル9M729(SSC-X-8)は阻止不可能です。
新たな兵器開発が喫緊の課題となっています。