神経剤ノビチョク使用によるセルゲイ・スクリパリ氏暗殺未遂事件で新展開~偽名の容疑者の一人はロシア軍参謀本部情報総局GRUのアナトリー・チェピガ大佐か?~調査報道機関ベリングキャット伝える
「神経剤ノビチョクによってセルゲイ・スクリパリ氏を暗殺しようとしたルスラン・ボシロフ(Ruslan Boshirov)なる人物は、ロシア軍参謀本部情報総局GRUのアナトリー・チェピガ大佐であった」と調査報道機関ベリングキャット伝える。
Skripal Suspect Boshirov Identified as GRU Colonel Anatoliy Chepiga bellingcat
3月にイギリス・ソールズベリーで発生した元ロシア情報当局の二重スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏(Sergey Skripal)とその娘、ユリア・スクリパリ氏(Yulia Skripal)に対する神経剤ノビチョクを利用した暗殺未遂事件に関して新展開。
監視カメラの内容などから容疑者として疑われつつも、これまで一貫して民間人であると主張してきたルスラン・ボシロフ(Ruslan Boshirov)と名乗る男性が、実はロシア軍参謀本部情報総局(GRU)のアナトリー・チェピガ大佐(Colonel Anatoliy Chepiga)である可能性が出てきました。
これは、イギリス調査報道機関ベリングキャットが英当局の公開した顔写真と過去のパスポート画像などを検証してはっぴょうしたものです。
ルスラン・ボシロフことアナトリー・チェピガ
ベリングキャットによると、ルスラン・ボシロフという名前は偽名で、本名はアナトリー・チェピガ。ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の大佐であり、2014年12月に「ロシア連邦英雄」勲章を授与された人物とのこと。
アナトリー・チェピガは1979年4月生まれの39歳。中国国境にほど近い村で生まれたのち、18歳で軍のエリート養成学校に入学。2001年に卒業後、GRUのエリート部隊に所属しチェチェン共和国での活動に三度派遣されたとのこと。
ロシア側はルスラン・ボシロフを民間人だと主張しており、国営テレビ放送RTもそのように報じていましたが、ベリングキャット側はこれを否定的にみているようです。
なお、もう一人のアレキサンダー・ペトロフ容疑者(Alexander Petrov)については今のところ新たな情報はありません。
個人的見解
プーチン大統領は会見で、ルスラン・ボシロフなる人物を「完全に民間人だ」と言っていました。
自分もRTのインタビューなどを動画でみましたが、ルスラン・ボシロフなる人物(アナトリー・チェピガ?)は「本当に迷惑している。我々はソールズベリーが綺麗な場所だと知人に聞いていて観光に訪れただけなのに」と語っていました。
しかしその動画ですが、ルスラン・ボシロフなる人物が独りで語り、片割れのアレキサンダー・ペトロフなる人物(この人もたぶん偽名でしょう)はただ同意するだけ。無駄なことを語らないようにしているのがミエミエで不自然でした。
もし今回のべリングキャットの報道が事実であり、ルスラン・ボシロフが本当にアナトリー・チェピガと同一人物であるのなら、国家ぐるみとみられても当然だろうと思います。
ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の大佐クラスであればプーチン大統領も知っているはずで、プーチン大統領が記者会見で「彼らは民間人だ」と言ったことは、犯人を隠匿していることになります。
ただ、個人的にはこれはプーチン大統領の指示で動いた可能性よりも、軍部・情報当局が勝手に粛清に動いた可能性があると思います。
もし後者であるなら、これはプーチン大統領の統治能力の翳りを象徴する事件であり、非常に多方面に危険性を孕んでいることになります。
プーチン大統領は次期大統領は務めない、憲法の規定通りやめることを宣言しています(院政に入るか、また首相に戻るか、そこらへんはわかりませんが)。
よって、プーチン大統領の退任が迫るにつれ、統治能力にかげりが出るのは仕方ない部分はあります・・・そして、今回のセルゲイ・スクリパリ親子へのノビチョクを利用した暗殺未遂は、それが表面化したものである可能性があるわけです。
もしルスラン・ボシロフとアナトリー・チェピガが同一人物であるなら、国家ぐるみであった方がよっぽどマシだと思います。国家ぐるみでなかった方が怖いです。
その不確実性たるや、計算できないリスクとなります。
今後の展開を注意深く見ていく必要があろうかと思われます。
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以上です。