中国版ナスダック『科創板』で何が変わるのか

中国版ナスダック『科創板』

2017年頃から言われてきた国内金融市場の活性化策の一環として、

今春から中国本土市場に『科創板』が創設される

とのことです。

これまで中国国内の有力ハイテク企業は米国市場や香港市場で株式公開することが多く、せっかくのハイテク企業の成長による富の形成を中国国内の人々がほとんど享受できない状況にありました。

(たとえばアリババは米ナスダックですし、テンセントは香港市場に上場しています。)

こうした状況を変化させるために、中国政府は2017年頃から国内金融市場の改革方針を打ち出しています。

今回の『科創板』創設は、そうした方向性のひとつの流れといえます。

 

『科創板』の上場基準は?~種類株解禁?

『科創板』の上場基準は、既存の上場基準よりもかなり緩められるとみられています。

報道によれば種類株の解禁などもされると言われており、こうした点でベンチャー企業などの上場はしやすくなるでしょう。

※種類株・・・議決権をなくした株式や、議決権を制限した株式など。優先株、劣後株などいろいろとあるが、これを許すと株主保護の観点からいろいろ問題があるとされ、多くの場合には嫌気されてきた。しかし近年、米国ナスダック市場を中心に種類株を容認して新規公開企業を募る商取が増えてきており、株主保護より上場手数料、といった流れが出来上がってきつつある。

 

 

『科創板』ではPER23倍のバリュエーション規制が撤廃?

中国本土市場では、新規株式公開(IPO)の際に、PER23倍までしか許されない、という規制があります。

しかしこれを導入してあると、PER23倍以上で売れるような企業は上場をためらうことになります。

結果的に有力な企業が上場をやめ、どうでもいい企業ばかりが上場しやすくなっており、『科創板』ではこの基準を緩和、もしくは撤廃するのではないかと言われて椅子

 

 

『科創板』では値幅制限が撤廃?

『科創板』では中国本土株式市場で悪名高い値幅制限が撤廃されそうです。

中国本土株市場は、10%の値幅制限が導入されており、ちょっとしたイベントでストップ安、ストップ高を数日にわたって繰り返されることになります。

とくにIPO時などはこれは良く起こることであり、改善を求める声が上がっていました。

 

 

『科創板』ではロックアップ期間が3年⇒1年に短縮

『科創板』では関係者既存株主が売却できない期間が3年から1年に短縮されるとのことです。

日進月歩のITビジネスの世界でロックアップ期間が長ければ、新たな事業に乗り出したくても踏ん切りがつきません。

こうした状況を改善させるためにもロックアップ期間は短くすることが望まれていました。

 

 

 

『科創板』では同一日売買が禁止?

ただ、バリュエーションを無制限にする一方で、『科創板』に上場した銘柄に対しては、日計り売買が禁止されることになりそうとのことです。

 

 

『科創板』の第一号はTikTokのBytedance?

『科創板』の第一号案件は目玉となる企業を誘致したいところ。

そこで白羽の矢が立ったのがBytedanceだそうです。

しかし、同社はSouth China Morning Postによる報道を否定。

考えていないとのことです。

 

『科創板』を対象にしたミューチュアルファンドが受け付け開始から急増

『科創板』の発表以降、この市場を対象にしたミューチュアルファンドの申請が急増。

受付開始最初の週で20件をこえたとのこと。

なお、まだ第一号案件すら決まっていないという段階です。

みな、我先にと飛び込むのが中国流。

はやくも投機の芽を感じさせる出来事だと囁かれているようです。

 

 

『科創板』で投機熱再燃?

なお、上記のようなこともあり、やはり『科創板』もまた投機的な売買が増えるのではないか、と言われています。

日本でも2000年代に日本版ナスダックやらヘラクレスやらマザーズやらと色々できましたが、それと同じことを中国は推し進めようとしています。

当時の日本市場もガバナンスがぐちゃぐちゃで投機的な動きが多かったわけですが、その再来が予想されます。

 

中国は目下、米中貿易協議で産業保護政策の撤廃を求められています。

政府や地方政府が産業保護出来ない分は、資本市場を通じてカバーしようという思いも透けて見えます。

ただ、もとから大きな政府路線である中国が、果たして『科創板』のような大きな変化をそのまま受け入れられるのかは少々疑問があります。

そういった政治的なリスクも踏まえて、『科創板』の今後の動向をみていきたいところです。

以上。