中国はレアアースを米中貿易戦争の武器に使うことを示唆か?~習近平国家主席が江西金力永磁科技を視察
江西金力永磁科技(JL Mag Rare-Earth Co)を習近平国家主席が訪問~レアアースの対米輸出制限を示唆か
米中貿易戦争が激化するなか、中国の習近平国家主席が江西省の江西金力永磁科技を訪問したと、各種メディアが報じています。
つい先日、米国は米中貿易戦争の一環としてファーウェイへの禁輸措置をとったばかりであり、
中国が米国へのレアアース輸出を禁じるのではないか?と懸念が広がっています。
なお、このことは先日、質問箱への回答で自分もさんざん書かせてもらいました。
思った通りの展開になってきたな、という感じがします。
https://twitter.com/chu_sotu/status/1129058849023905793
https://twitter.com/chu_sotu/status/1129058437399080960
https://twitter.com/chu_sotu/status/1129057971139272704
中国が対米輸出制限するかもしれない?レアアースとは?
ここでレアアースについて軽く解説しておきます
レアアースは別名・希土類元素とも呼ばれ
スカンジウムとイットリウム、およびランタノイド15元素をまとめた略称です。
用途としては、
ネオジム・・・永久磁石用として超絶重要
ジスプロシウム・・・永久磁石用、および磁気ディスク用
セリウム・・・ディスプレイ用、HDD用などガラス基板研磨剤として超絶重要
イットリウム・・・YAGレーザーに絶対必要
ジスプロシウム・・・プリンターヘッド
ランタン・・・プリズム、光学ガラスに必要
ガドリニウム・・・同上
などなどとなっており、とくにネオジム、セリウム、イットリウムあたりは非常に重要で代替が効きません。
そして、これらの生産の大部分が中国ということになります。
⇒【統計】レアアース(希土類)の生産量と埋蔵量 国別シェア【グラフ】
これはなぜかというと、簡単にいってしまうと
「中国は環境規制が緩いから」
ということになります。
レアアースは単離が難しく、しかも鉱物中に放射性物質と一緒に含有されていることが多いのです。
中国はあまりそこら辺をシビアに扱わないので、生産量がやたら多いということになります。(しかも単離させる技術力もちゃんとある。)
一応、各国政府もレアアースの重要性を認識しているため備蓄はしています。
ですが、もし中国が禁輸措置を発動し、その問題が長期化すればandroidOSどころの問題じゃないことになります。
価格は高騰し、モノによっては技術的に後退を余儀なくされることもあるかもしれません。
中国がレアアースを武器に使うのは習近平が初めてではない。
自分がなぜレアアースに注目してきたかというと、じつは昔から中国はレアアースを武器にすると公然と述べていたからです。
それは鄧小平の時代にさかのぼります。
鄧小平は南巡講話のなかで、「中東には石油がある。中国にはレアアースがある。中国はレアアースで優勢を発揮できる。」と述べているのです。
中国は当時、レアアースの一部でほぼ100%の供給を担っていました。
現在では80%ちょっとまで下がりましたが、それにしても高い水準です。
中国は本気で怒ったらこれを閉じてきます。
それは、尖閣問題で日中が揉めた時期を思い出してみたらわかります。
あのときもレアアースの狂乱が起きました。
そして、経産省はオーストラリアのライナスへの投融資を商社などに持ち掛けます。
⇒中国がレアアースを貿易戦争の武器に使用か?~ライナス株に恩恵とアダマス・インテリジェンスが指摘
結果、その狂乱につきあわされた双日とJOGMECは大きな損をすることになるわけですが、今回もどうもそんな感じの展開になってきなぁあという感じがします。
とりあえず、日本としては旗色を明確にせず、中国の禁輸対象に含まれないように、のらりくらりとしてほしいものです。
アメリカに付き合ったら馬鹿をみます。
以上。