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米通商法201条によるセーフガード発動・・・について今更書いてみる 洗濯機編

今更ですが、米通商法201条による太陽光パネルと大型洗濯機に対するセーフガードについて書きます。

米政権、洗濯機と太陽パネルのセーフガード発動 アジア・欧州で反発高まる (Reuter)

太陽光発電パネルの輸入による国内産業の損害を認定-セーフガード発動ならカナダ以外の全ての国が対象に- (Jetro)

まず洗濯機に関して。

米国市場で洗濯機市場の25%を占める韓国製(サムスンとLG)の洗濯機が対象と言われています。それもありますが、個人的には近年急増している中国製品に対しても危機感を持っているのではないかと思っています。

How Asian giants can counter Trump’s washing machine tariff (Bloomberg)

上の記事にあるように、アメリカで一番多く売れている洗濯機ブランドはWhirlpoolが43%、Haierが15%、Samsungが13%、Others12%、LGが12%、Electroluxが5%とのことです。


 

ハイアール(海爾、Haier 1169.HK / 600690.SSE)やマイディア(ミディア、美的、Midea 000333.SZSE)の両社は近年、輸出主導で成長を加速させています。

たとえばこれは美的集団の2017年中間期決算資料からの抜粋ですが


By geographical segmentのところを見てわかるとおり、Other countries and regionsがYoYで77.05%もの高い伸びを示しています。美的の生産工場はかなり自動化されてますから(以下の動画参照)、どんどん作ってどんどん世界中にばら撒く戦略になっています。

こんな戦略をとられたら、ワールプール(Whirlpool ティッカー:WHR)などの米国企業のみならず、サムスンやLGだって厳しいはずです。

仮に米国内に美的(Midea)が工場を作るにしても、こういった自動化された工場を作ることになるでしょうから(美的は傘下にドイツロボットメーカーKUKAを抱えています)、あまり労働市場にはプラスにならないような気がします。

 


 

なお、世界のシェアでみると(データ出典元&年度が不明なのでURLは貼りませんが)ハイアールがダントツの19%弱、ワールプールが15.5%で二位ですが、以下中国美的集団が9%、LG7.5%、エレクトロラックス7%となっているそうです。美的とハイアールは近年、急速にシェアを拡大しています。

 


 

ちなみに、エレクトロラックスもかつて中国生産はしていました。また、Whirlpoolは過去に三洋電機の中国合弁会社を買収しています。

米ワールプール 合肥三洋を買収

家電大手のエレクトロラックス、中国戦略を見直し

それでも生産コストの管理ができず、中国勢に負けてしまったという現状があります。

ちなみにWhirlpoolと美的(Midea)を巡っては以下のような報道もありました。

Whirlpool A Gleam In Midea CEO’s Eye

美的(Midea)はイタリアのClivet SpAを買収、ハイアールはビルトインタイプや医療用設備など高付加価値を追及しているFisher & Paykelを買収するなど、高級路線のラインナップも充実させてきています。

Midea buys majority stake in Clivet

China’s Haier to take complete control of NZ’s F&P Appliances

 

とりあえず、この二社の勢いは凄まじいものがあります。


中国の製造業企業は、けっしてマージンのいい商売をしているわけではありません。むしろ近年、利益率を悪化させています。なるべく大きくシェアをとる方向で経営している企業が多いです。これが通商問題を悪化させています。

中国は指摘されているとおり、外資による投資の際にパテントへのアクセスを求めてきました。また、地縁血縁の人知り三百両がはびこる中国ですから、地方政府とつながりのある企業は低利融資などを受けることができ、実質的な補助金を受け取りながらビジネスを展開できました。これによって中国企業はカネを溜め込み、技術開発やM&Aに注ぎ込み、業界トップをとる企業がゴロゴロ出てきました。

たとえばそれは、ドローンのDJI、通信機器のHuaweiやZTE(中興通訊 000063.SZSE /0763.HK)、AI監視カメラのHikvision(杭州海康威視数字技術 002415.SZSE)、カメラモジュールの舜宇光学(sunny optical 2382.HK)などなどです。これらは世界の最先端を走る存在になってきています。

今後も、こういった最先端が中国から始まり、アメリカがイノベーションの中心から脱落するのではないかと、業界および業界のロビイングを受けている議員たちが懸念しています。

今回とりあげた通商法201条に続き、232条によるアルミ・鉄鋼の輸入制限、301条による広範な関税措置へと現在広がっています。特に301条に関しては昨年7月の段階で調査開始したことが騒がれていましたが、まさかそこまでやるか?っていうのが大方の見方だったと思います。おいらも1月くらいまではそうでした。2月くらいからは「その可能性もありうるかな」という感じでみていました。自分のTwitterで「特殊関税」などで検索してみると、

2月18日、つまりアルミ・鉄鋼への関税のあとくらいに、人民元高や特殊関税によるインフレを気にし始めていることがわかります。

(おいらはもう歳なので、いつ、なにを、どのように考えていたのか正確なことを忘れてしまいます。そんなときにTwitterみたいなマイクロブログは便利ですね。過去になにを考えていたのかよくわかります。)

ちなみに、ジャナスの人は1月いつだったかに、トランプによる301条発動がリスクになりうると言ってました。たしかBloombergTVで。素晴らしい見識だと思います。

 

 

とりあえず、長くなりましたので切りますが、この特殊関税のラッシュがどの程度の規模で広がるのかは注意が必要です。

それは、程度によっては

インフレの芽

になりますから。

 

(相変わらずまとめる能力が足りなくて我ながら情けない。書きたいことから何を削るかが難しい。)