南アフリカがリセッション入りで通貨ランド急落~PMIも29カ月ぶり低水準

南アフリカのGDPが二期連続低下でリセッション入り~南ア通貨ランド急落~シリル・ラマポーザ大統領の白人土地収用問題でIMF支援に暗雲か?

 

南アフリカのGDPが二期連続で低下し、定義上のリセッション(景気後退)となりました。

South Africa enters recession after GDP declines for a second quarter

南アフリカが景気後退に陥るのは2009年ぶりです。

事前予想では南アフリカ経済はプラス成長が予想されていましたので、これはかなり深刻にマーケットに捉えられました。

 

米ドル/南アランド 一時間足

 

 

また、ここもと発表された南アフリカの統計には弱いものが多くなっています。

昨日発表された南アフリカの8月民間部門PMIは47.2となり、7月の49.3からさらに低下。29カ月ぶりの低水準になりました。

S.Africa’s private sector activity falls to 2-1/2 year low in August

 

南アフリカの7月貿易収支は輸出が2.7%減少、輸入は13.8%増加、46.6億ランド(3.17億ドル)の赤字転落となりました。

South Africa’s trade balance swings to deficit in July

 

このように南アフリカの実体経済には非常に弱い統計が相次いでいるなか、政治・外交の面でも問題が発生しています。

 

先日もお伝えしましたとおり、南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は、白人が所有している農地を強制的に収用し、黒人に分配することを発表しました。

 

参考記事:南ア・ラマポーザ大統領による白人農地収用問題

 

これに対して、トランプ大統領が噛みつきました。

 

白人支持層をバックに当選しているトランプ大統領としては、南アフリカの白人が権利を奪われそうな現状をみて、ツイートせずにはいられなかったようです。


 

なお、こちらはJETRO提供の南アフリカ共和国の基礎データですが、これをみてもわかるとおり、

南アフリカは対外債務残高が大きすぎるのです。
そして南アフリカは経常赤字国でもあります。
ここ二年程は鉱物資源価格上昇もあって、南アフリカは貿易黒字基調でしたが、それもどうやら落ち込んできそうな気配です。

 

トランプ大統領のtweetをめぐる経緯は先ほどの記事:南ア・ラマポーザ大統領による白人農地収用問題に書いていますが、とりあえず、これによって問題になるのはIMFです。

通貨問題、債務問題が深刻化した国は、その多くが国際通貨基金IMFの管理下に置かれます。

貿易自由化や関税引き下げ、国有資産売却などいろいろと手枷足枷を嵌められることにはなりますが、少なくともIMF支援によって健全な状態になれば、再度成長をしていけるようになります。(韓国も90年代にIMF管理下に置かれました。その後の高成長はご存知の通りです。)

 

さて、問題はこのIMF、アメリカの拠出金が最大なんですね。率にして17%超です。

二番手は日本と中国どちらかなんですが、両社とも7%に満たない程度です。

中国やロシアなども参加していますが、率にすれば10%程度です。

つまり、IMF国際通貨基金というのは、アメリカを筆頭に西側の意図の及びやすい組織ということです。

 

 

そんな状況ですから、アメリカと事を荒立てればIMF支援を受け入れにくくなるかもしれない・・・

が、そうはいっても黒人の失業率の高さを放置していくわけにもいかない。

南アの問題のほとんどは、資本家と労働者が分離しすぎていることに起因するわけです。高い貧困率、高い失業率、高い犯罪発生率、低い生産効率・・・

ラマポーザ大統領としては大土地所有を排除して小作農を増やしたいわけです。生産効率は一時的には低下すると思われますが、とりあえず失業者に土地を分け与えて働かせたいわけです。

まぁそもそも、もとはといえば黒人が所有していた土地をアパルトヘイトだのホームランド(バンツースタン※1)政策だのを駆使して白人たちが奪い取ってきたのが歴史なわけで、所有権をもとに戻せよ、という主張はそんなにおかしなものじゃないと自分も思います。

※1 バンツースタン/バントゥースタン/Bantoestan・・・意味は「バンツー人の土地」 別名ホームランド(Home Land)

白人が南アフリカを支配していたころ、白人至上主義を実践するための人種隔離政策「アパルトヘイト」が行われました。
この人種隔離政策アパルトヘイトに対しては諸外国から猛烈な批判が起こり、これを避けるために当時の南アフリカ共和国首相であったヘンドリック・フルウールト(Hendrik Frensch Verwoerd)は1959年にバントゥー自治促進法(Promotion of Bantu Self-government Act)を制定。南アフリカを白人地域87%と黒人地域13%に分けました。
ついでバルタザール・フォルスター首相(Balthazar Johannes Vorster)が1970年にバントゥー・ホームランド市民権法を成立させ、黒人地域に一定の自治を与えつつ順次独立させ(トランスカイ、ボプタツワナ、ヴェンダ、シスカイ)、他にンデベレ、レボワ、ガザンクル、カングワネ、クワクワ、クワズールーなどの自治区を置きました。

 

南アフリカ政府はこうやって黒人だけの国を作ることで、これらバントゥースタンで行われた決定は南アフリカ政府の関与するものではないと言い出しました。
バントゥースタンの国から南アフリカ共和国に働きにくる黒人は自国民でないから政治的発言権を与える必要がない・・・とも言いだしました。
こうして作られた黒人だけの隔離地域バントゥースタンはホームランド(故国)と名付けられ、そのネーミングの欺瞞さから非常に強い不快感を沸き起こしました。

 

こういった経緯を経ていますから、IMFのアフリカ担当の方は今回の南アフリカ政府による白人土地収用には反対していません。まぁしかたないし、憲法に基づく範囲であればいいんじゃないの?という態度です。

IMF backs South Africa’s plan to confiscate land from white farmers

しかし、先ほども書いた通り、IMFはアメリカの手先ですから、いつ何時、この方針が変わるかもしれないわけです。

まぁ、そんな感じで、ラマポーザ大統領の苦闘は続くことになります。

 

 

 

市場は南アフリカの経済に対して悲観に傾いています。

鉱物資源価格の下落、経常収支の悪化、財政負担の拡大、白人土地収用問題、米国との関係悪化・・・これら南アフリカが抱えるすべての難題を上手く舵取りすることは、ラマポーザ大統領には無理なんじゃないか?とみています。

汚職まみれのズマ元大統領のあとを継いで当初は市場に歓迎されていたラマポーザ大統領ですが、このところは市場からの支持を低下させてきています。

頑張ってほしいところではありますが、個人的な見解を述べさせていただければ

むり

でしょうね。たぶん。

土地収用やらなければ公約違反で国内から突き上げされますし、すればするでトルコと同じような立ち位置になりそうです。

高金利通貨として日本人に人気の南アランドもごらんのとおり。

 

 

高金利通貨国の苦悩は続きます。。。