フェトフッラー・ギュレン氏のトルコ引き渡しを米政府が検討~カショギ氏殺害事件の余波~

カショギ氏殺害事件に絡むサウジへの圧力を避けるため、米政府はギュレン運動の指導者、フェトフッラー・ギュレン氏の身柄をトルコに引き渡すことを検討か

 

「トランプ政権がフェトフッラー・ギュレン(Fethullah Gülen)氏をトルコ側に引き渡すことを検討」とNBCが報じています。

この背景には、ジャマル・カショギ氏殺害事件をめぐりサウジのムハンマド皇太子に対して圧力を強めるトルコ側を懐柔する目的があるとされ、波紋を広げています。

To ease Turkish pressure on Saudis over killing, White House weighs … NBCNews

 

今回はこの、フェトフッラー・ギュレン氏についてみていきましょう。

 

フェトフッラー・ギュレン氏とは?

フェトフッラー・ギュレン氏はイスラム道徳をベースにした市民運動「ギュレン運動」の指導者で、現在はアメリカに在住するトルコ人学者・・・とされる人物です。

 

フェトフッラー・ギュレン氏が興したギュレン運動

ギュレン運動について書き出すと長くなるので割愛。

(そのうち書くかもですが、なにぶんこの手の話題は公平に書くことが難しいので書きにくい部分があります。)

色々な人が、色々な側面からこのギュレン運動については語っています。

ギュレン運動は単なる慈善活動だという人もいれば、いや右翼団体だという人もいる、新興宗教だという人もいれば、カルトだという人もいる、、、とりあえず、評価は定まっていませんし、定まるような類のものでもないと思われます。

とりあえず、一般的なスンニ派イスラムと異なる点は、

  • フェトフッラー・ギュレン氏が個人崇拝の対象になっているという点。
  • そして政治的参加意欲が(本人はともかく)信者において強いという点。
  • 有権者の1割超がギュレン運動支持者である可能性が指摘されている。

このことだけは、理解しておく必要があると思います。

日本でもそういう政党がありますが、まぁ、自分的にはそれらと似たようなもの・・・と感じています。

 

 

フェトフッラー・ギュレン氏とエルドアン大統領

この政治的影響力を利用して政治的権力を拡大したのが、誰でもないトルコのエルドアン大統領です。

ギュレン運動は初期においてエルドアン大統領の支持母体であり、エルドアン大統領とフェトフッラー・ギュレン氏との関係は良好だったといわれます。

 

 

フェトフッラー・ギュレン氏が汚職追及?

2013年、エルドアン政権下において都市開発を巡る汚職事件が発生します。

ギュレル内相の息子などを経由した不正な資金の流れが暴かれ、24人が逮捕拘束。

バイラクタル環境保護相の息子も一時拘束され、バウシュ欧州連合相が収賄に関与したと報道されるなど混乱が広がります。

この責任をとってチャーラヤン経済相など3閣僚が辞任しましたが、これをギュレン運動支持者によるソフトクーデターの動きであるとエルドアン大統領は非難。

両者の関係は一気に緊迫化します。

 

 

フェトフッラー・ギュレン氏がクーデターに関与?

そしてエルドアン大統領とフェトフッラー・ギュレン氏の関係が決定的に悪化したのが2016年7月15日のトルコクーデター未遂事件です。

民間人を含め290人もの死者数をだしたクーデター事件でしたが、このクーデターをおこした首謀者たちがギュレン運動の活動家たちだったことでエルドアン大統領はギュレン派の粛清を開始。

同時に、当時アメリカに在住していたフェトフッラー・ギュレン氏の身柄引き渡しも要求します。

なお、この件に関してはクーデターを米政府が煽った可能性も指摘されており、トルコ政府はアメリカ人の牧師(とされるが、実際はCIAエージェントではないかと疑われている)アンドルー・ブランソン牧師を逮捕しました。

アンドルー・ブランソン牧師が解放へ~正体はやっぱりCIA?トルコリラはどうなる?

 

 

フェトフッラー・ギュレン氏の身柄引き渡し問題

トルコ政府は2016年のクーデター未遂をめぐりフェトフッラー・ギュレン氏の関与を疑い、米政府に身柄引き渡しを要求しますが、これを米政府は拒否。

米国とトルコとの関係が悪化します。

トルコはその後もフェトフッラー・ギュレン氏の身柄引き渡しを求め続けます。

 

 

ジャマル・カショギ氏殺害事件発生~フェトフッラー・ギュレン氏の身柄引き渡しへ?

そうした中で起きたのが、ジャマル・カショギ氏殺害事件です。

この事件ではサウジ上層部が積極的に関与していたことをサウジ政府も公式に認めていますが、一番の本丸である、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(ムハンマド)皇太子の関与に関しては、一切なかったとサウジ政府は説明しています。

ようするに、トカゲの尻尾切りをしようとしています。

これに対してトルコ政府はムハンマド皇太子の関与があったことを暗に示唆。

ジャマル・カショギ氏殺人事件のほとぼりが冷めそうになるたびに証拠をちくちくと提出して人々の関心を呼び起こす作戦をトルコ側はとっています。

 

トランプ政権はムハンマド皇太子を守るためにフェトフッラー・ギュレン氏をトルコに渡す?

アメリカはサウジに対して大量の兵器を販売しており、サウジはアメリカの防衛産業の一番のお得意先です。

トランプ大統領はサウジへの1100億ドルの兵器輸出契約を最初の外遊で成果としてあげており(契約相手はムハンマド皇太子)、この実現を強くサウジに迫っています。

こうしたなかで、これ以上ムハンマド皇太子を苦境に陥らせるのは避けたい、、、というのがトランプ政権の思惑のようです。

今回、フェトフッラー・ギュレン氏をトルコに身柄引き渡しするのではないか?との情報は、こうした背景を踏まえてのものです。

 

 

 

フェトフッラー・ギュレン氏はトルコに引き渡されるのか?

これに関し、アメリカ国務省のナウアート報道官は「カショギ氏の問題とギュレン氏の身柄引き渡し問題には関係がなく別の話だ」と説明しています。

ということはつまり、フェトフッラー・ギュレン氏の身柄引き渡しの話は進んでいる・・・ということになります。

 

しかし、個人的にはフェトフッラー・ギュレン氏の身柄引き渡しはちょっとありえないんじゃないか、、、と思います。

よほど、クーデターへの関与を決定づけるような証拠があればまた別でしょうけど、もし今、トルコにフェトフッラー・ギュレン氏を身柄引き渡しするようなことになれば、米国内でかなりゴタゴタになるような気がします。

政治的に耐えられるのか?という気がします。

もしありうるとするなら、この機会にフェトフッラー・ギュレン氏とクーデターを結びつける何かが明らかにされること。

それがあれば、身柄引き渡しは行われるでしょう。

 

 

とりあえず、なんでもあり、な展開になってきている国際情勢。

見ていて飽きませんね(笑)

今回は以上です。