ユーロ圏共通予算への支持広がるか

ユーロ圏共通予算への支持広がるか

 

フランスとドイツ主導でユーロ圏共通予算を導入する動きが広がっています。

EUは共通通貨ユーロを導入して域内経済の統合を図ってきましたが、域内輸出が好調なドイツばかりが潤い、域内輸入が拡大している南欧諸国などでは大幅な経常赤字体質が定着。

また東欧などは労働力の供給国に成り下がり、地盤沈下が著しくなっています。

財政的にも各国で格差が広がっており、EU統合で潤う国から再分配する手段の創設が必要になってきています。

 

 

 

なぜ今、ユーロ圏共通予算か?

なぜいま、ユーロ圏共通予算なのか。

単純にいってしまえば、財政の統合をせずに金融面だけ統合したことの問題が露呈してきているから、と言えると思います。

日本でもどこの国でもそうですが(都市国家を除く)、財政的な配分を全く行わずに金融面だけ自由化したら、域内で格差が大きく広がるのは必然で、それを調整するための税の配分システムなどが存在します。

たとえばそれは日本で言えば地方交付税交付金や国庫支出金、また地方税の配分比率の変更などですが、こういったことをしながら地方間の格差を是正していくのが域内統合の本来のありかただと思います。

しかしEUではそういう方向性でシステムを作らなかった。

そのことで、潤う国と乾涸びる国が出てきてしまいました。

いずれこういった格差が域内でできることはわかりきっていたのに放置してきたツケが欧州債務危機で経験しているのに、それがなかなか改善しない。

EU域内諸国の経済成長率は2000年代に比べて明らかに落ちてきており、これを改善させるためにも再分配システムが必要だとの認識に立つ国は増えているわけです。

このユーロ圏共通予算を主導しているのが、潤っている国であるドイツとフランスです。

 

 

 

フランスのルメール経済・財務相、「ユーロ圏共通予算への支持広がっている」と見解表明

フランスのルメール経済・財務相は3日、ユーロ圏共通予算への支持が広がっているとの見解を表明。

ただ細部についてはまだ協議の余地があるとのことです。

France finance minister sees “widening” consensus for euro zone …

一番の障害は、このユーロ圏共通予算が安定化基金に利用されることへの懸念をオランダなどが持っていることのようです。

たんなる救済資金とならないように、ユーロ圏共通予算は別の目的で利用するようにオランダは要求しています。

 

 

 

ユーロ圏共通予算の概略~ようするに日本の地方交付税交付金みたいなもの

ユーロ圏共通予算の概要としては、具体的なものは出てきていないのでなんとも言えませんが、日本の地方交付税のようなシステムを想定しているようです。

ようするに、潤う国から乾涸びる国へカネを渡して、そっちで開発などをしてもらう、、、といった使い方を想定しているようです。

 

ユーロ圏共通予算を受け取るには財政規律を守る必要~イタリアを牽制か

ただ、ユーロ圏共通予算は財政的に劣る国に無条件で渡すのでなく、財政的な規律を守っている国にのみ渡す案が示されているとのことです。

これはイタリアのような規律を公然と無視する国がEUにタカることへの抵抗があるとみられ、このあたりでイタリアなどの反発を受けないか、やや心配ではあります。

 

 

ユーロ圏共通予算の導入には域内全加盟国の承認が必要

ユーロ圏共通予算実現の最大のハードルは、この計画への承認が全会一致で必要だということです。

とりあえず現状ではオランダが難色を示しており、イタリアなども自分たちだけをノケ者にするような案が盛り込まれていれば反発するはずで、なかなか実現への道筋は長いような気がします。

 

 

それでも、個人的には今回のユーロ圏共通予算導入への動きはポジティブに受け止めるべきと思います。

とりあえず、今までそういった財政負担をドイツが嫌がってきたことが問題だったわけで、当のドイツが折れていることが何よりもポジティブな材料です。

のぞむらくは、政権が大きく変更される前に話が進むことですが。。。さてどうなるでしょうか。