AppleがiPhoneのモデムチップの自社開発を目論む理由
AppleがiPhoneに搭載されるモデムチップの自社開発に乗り出すのではと報じられています。
モデムチップはスマートフォンを構成するパーツのうち1,2を争う重要部品です。
AppleはiPhoneに搭載するモデムチップに関して、これまではインテル製を、それ以前はクアルコム製を利用してきましたが、ここにきて自社開発製品に切り替えていこうとしているのだとか。
この情報をまず最初に報じたのはロイターでしたが、他の報道機関もAppleの求人情報などからその可能性を報じており、俄かに信ぴょう性を高めています。
これまでにも噂には上っていたアップルによるiPhoneモデムチップの自主開発
ぶっちゃけたはなし、Appleによるモデムチップの自主開発が報じられたのは今回が初めてではありません。
ですから今回もどうなるかはわからない部分があります。
しかし、開発部の人事がどうもあわただしく動いているだとか、人員の募集がクアルコムのお膝下でガンガン行われているという情報も流れており、できることならモデムチップを自主開発したいなぁという、Appleの意欲はみえます。
問題は、可能かどうかという話ですが。
Appleが自主開発を目指すモデムとは?
モデムっていうのは、たぶんパソコン通信時代からの人にはなじみ深いものです。
当時は、アナログデータとデジタルデータを変調・復調するものでした。
変調装置(MODdulator)、復調装置(DEModulator)をあわせてMODEM、モデムといっていました。
現在ではそうした変調・復調に加えて、複数の周波数帯域をあわせて高速化したり、多重化したりするのもモデムの役割となっています。
2G、3G、4G、そして5Gなどに対応するかどうかもモデムの性能次第であり、非常に重要なパーツなわけです。
AppleがiPhone用モデムチップの内製化を目指すわけ~インテルの5Gモデムチップ開発遅れ?
AppleがなぜiPhone用モデムチップの内製化を目指すのか。
それは、単純に内製化した方が安上がりだから、というのとは違うと自分は思います。
ひとつには、インテルの5G向けモデムチップ開発が遅れているという理由がありそうです。
インテルはいまだに5G向けモデムチップが開発できておらず、この調子でいくとアップルは5G端末を出せません。
これはビジネス上、非常にヤバイです。
しかしこれは、あくまでも短期的な問題に過ぎないと思います。
もっと重要なこととして、自分は以下の可能性があるのではないかとみています。
AppleのiPhoneでもSoCにモデムチップを統合したい
AppleのiPhoneはいまだにモデムチップをインテルから調達しているわけですが、世の趨勢としては、モデムチップはSoCに統合するのが流行りです。
統合することでスペース的に余裕がもてますし、熱処理の問題も軽減、品質管理上のメリットもありますし、処理速度も上がります。
先日発表されたクアルコムのSoCでは5Gモデムは別途用意する形になっていましたが、もちろん、これを統合していきたいのがクアルコムの狙いです。
クアルコム社 最新型SoC『Snapdragon 855』を正式発表~X50 5G modemと組み合わせて5G環境を提供
ファーウェイ(Huawei)が5G対応チップセット『Balong 5000(バロン5000)』の仕様を発表~MWCでフォルダブルスマートフォンの発表も~
もし仮に他社がそうした開発を成功した場合、AppleのiPhoneの商品としての魅力はかなり落ちることになります。
設計の自由度の面で明らかにディスアドバンテージを喰らうことになりますし、処理速度、消費電力面でも問題です。
Appleはクアルコムとの間でモデムチップの特許紛争を抱える
Appleは、クアルコムとのあいだで目下、特許問題で係争中です。
そのひとつはGUIなのですが、もうひとつはモデムチップの問題と言われています。
技術的にちょっと高度過ぎて自分には解説しきれませんので、興味のある方は調べてみてください。
アップルのiPhone、ドイツでも販売停止処分~クアルコムとの特許問題
【Parm Pre/電源】クアルコムとアップルのiPhone特許訴訟問題
で、今回アップルはクアルコムのお膝下で人員募集を行っているそうです。
でもそれって・・・元クアルコムの従業員を引っこ抜きたいということですよね。
そうした従業員が提供する技術を導入したら、またクアルコムの特許にふれるようなことになりかねないのではないかと思うのですが・・・
とりあえず、それでもなんでも、Appleはモデムを自主開発したいもようです。
AppleはiPhone用モデムチップ技術開発に向けてコスト増大へ
というわけで、Appleはモデムチップ技術を手に入れるため、今後、多大なコストを払うことになりそうです。
また、もしそれに失敗した場合、商品としての魅力が落ちます。
非常にリスキーな立ち位置にいるな、と個人的にはみています。
以上です。