【5333】日本ガイシ(日本碍子)の業績・決算と株価

【5333】日本ガイシ(日本碍子)の業績・決算と株価

今回は電力用碍子で世界一のシェアを誇るほか、NAS電池など産業向け電池生産の展開も行う日本ガイシについてみていきます。

日本ガイシはその高度なセラミック技術を応用してDPFやGPFなどの環境対応製品を開発したほか

ピエゾアクチュエータなどのエレクトロニクス製品の分野にも事業を展開しています。

とりあえず、まずは日本ガイシの事業内容から見ていきましょう。


日本ガイシの事業内容

日本ガイシの事業内容は以下のセグメントに分類されます。

  • 電力関連事業・・・碍子、NAS電池
  • セラミックス事業・・・GPF(ガソリン・パティキュレート・フィルター)、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)、自動車用NOxセンサ、ハニセラムなど
  • エレクトロニクス事業・・・SAWフィルター用複合ウエハ、HDD用マイクロアクチュエータ、透光性アルミナ「ハイセラム」、セラミックパッケージ(光通信用、高周波デバイス用)
  • プロセステクノロジー事業・・・半導体製造装置用静電チャック、セラミックヒーター、放射性廃棄物処理装置、セラミックフィルター、波長制御乾燥システム

また新製品としては、紫外LED用マイクロレンズ、チップ型セラミックス二次電池EnerCeraなどを開発

研究開発により新製品を作ることに積極的な社風のようで、常に次の商売のタネを探すようなビジネスをしています。

 

日本ガイシの売上の半分以上、利益の8割以上をガソリン車、ディーゼル車向けが稼ぐ構造

さて、ここで日本ガイシにとって非常に厄介な問題があります。

ここもと10年ほど、日本ガイシはガソリン車、ディーゼル車向けのセンサ事業に非常に頼った経営をしてきました。

のちほど業績解説のなかでも書いていきますが、日本ガイシの売上の半分、営業利益の8割程度がセラミック事業から上がるものです。

そしてこのセラミック事業の売上の大部分は、DPF、GPF、NOxセンサなどの売上によるものです。

これらの部品は、ガソリン車やディーゼル車などの化石燃料を燃やして走る車向けの部品であり、電気自動車(EV)に世界がシフトしていけば不必要になる製品群です。

こうしたことから、同社の業績はじり貧になるのではないか、という懸念が市場には浮上しています。

 

 

日本ガイシはEV化でじり貧か?

なお、同社はこうした見方に対して、以下のように反論しています。

  • 自動車市場はこれからも拡大する
  • 確かにEVは売れていくだろうが、それほど速いペースでは変化は進まない
  • 自動車市場自体が拡大することにより、EVだけでなくガソリン車なども売れていく

しかし、自分はそうした見方には大いに疑問があります。

自分の見立てでは、生産コストに関しては間違いなくEVの方が安くなります。

また、電池の性能がこの調子で改善していくのなら、あと10年もしないうちにEVだらけになるように思います。

日本ガイシの経営陣による予測は、かなり甘いのではないか、と感じています。

人は往々にして嫌なことから目をそむけたくなるものですが、まさにそうした状況に日本ガイシは置かれているのではないか、と自分は見ています。

 

 

 

日本ガイシの2018年Q3業績

さて、ここからは日本ガイシの2018年Q3業績をみていきましょう。

以下のようになっています。

ごらんのとおり、日本ガイシの業績はQ3決算段階時点でかなり悪化しています。

なお、セグメント業績は以下のようになっています。

 

日本ガイシの2018年Q3セグメント業績

日本ガイシのセグメント業績は上記の通り、セラミックス事業とプロセステクノロジー事業しかまともに稼げていません。

また、電力用碍子はシェアトップですが、コスト競争力がなくて赤字体質です。

NAS電池も受注にムラがあり、他の技術などとの競合もあることから想定通りの販売には繋がっていません。

 

日本ガイシが通期業績下方修正

その後、3月25日に通期業績が下方修正されました。

上記の通りとなっています。

想定よりも営業利益段階で1割減となっております。

 

こちらはセグメント別にみた通期業績下方修正後の業績です。

電力事業の赤字が急拡大するほか、

エレクトロニクス事業はQ4単独では赤字に転落することが示されました。

 

 

日本ガイシは分社すべきではないか

なお、これまで森村グループの企業は、一事業一会社の精神で分社化しまくってきました。

ところが、日本ガイシはこの方針とは逆に、どんどん事業拡大し、赤字事業も黒字事業も、低採算事業も効率的な事業も併存するような経営になっています。

森村グループの沿革はスピンアウトの連続だった~昔の日本企業は極めて合理的だった件~

自分は、こうした経営はあまり好ましいとは思えません。

儲からない事業からはさっさと撤退すべきなのではないか、と思います。

その事業に携わる人にとっては辛いのかもしれませんが、いま日本社会に必要なのは生産性向上であり、不要な産業の人を減らして、必要な産業に流すことではないかと思います。

そうした観点からみても、株主による圧力が必要なのではないか、と見ています。

 

日本ガイシの株価

日本ガイシの株価は、ここもと良いとこなしの動きとなっています。

今期予想EPSをもとにするとPER15倍くらいですか。

まぁ、バリュエーションからみたら妥当な株価水準にみえますが、ただ先ほども書いたように、日本ガイシにはガソリン車、ディーゼル車向けセラミック事業が大黒柱であるという、最大の懸念材料が横たわります。

要は、事業自体の余命が何年あるか・・・とカウントする段階にあるわけです。

そういう意味でみると、PER15倍はやや高いようにも思われます。

チャートパターンもトレンドラインが下向き。

あまりよろしくない動きにみえます。

 

 

 

なお、上記はあくまでも個人的見解であり、特定の投資スタンスを勧めるものではありません。

投資にあたっては自己責任で行っていただきますようお願いいたします。

以上です。