フリーポートマクモラン株急落~世界有数の金鉱山閉鎖の可能性~途上国は中国と米国のあいだを泳ぐ~

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フリーポート株急落-インドネシア新規則で主要鉱山の先行き不透明に

なかなかにショッキングなニュースが飛び込んできました。

世界最大級の銅、モリブデン、金の資源メジャーであるフリーポート・マクモラン社(Freeport-McMoRan Copper & Gold Inc. / NYSE:FCX)のグラスベルグ鉱山(Tambang Grasberg)が、インドネシア政府による環境規制を理由に閉鎖の危機に陥っているとのことです。

これを受け、同社の株価は14.35%のマイナスとなりました。

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グラスベルグ鉱山(wiki)は世界最大の金鉱山であり、二番目に大きな銅鉱山でもあります。

※wikiでは世界三位の銅鉱山となっていますが、個人的知識では二位なので二位と書いています。たぶん算定の仕方の違いだと思います

 

インドネシアのパプアニューギニア島にある同鉱山は、今までも何度も環境汚染が問題視されてきました。

そもそもこの鉱山(と前身のエルツベルグ鉱山)の存在は、この山の水が流れ込む川の金の出処を探るところから始まりました。そのくらいそもそもの銅、金の含有量が多いのです。上流部でガシガシと鉱山を掘れば、下流域が汚染されるのは当然なのです・・・しかも熱帯雨林気候ですからスコールが降ります。雨がドシャドシャ降ります。グラスベルグ鉱山は露天掘り鉱山です。表土が削られて鉱床が曝露されたところに雨が降りますから、酸性鉱山廃水が発生します。現代版芦尾銅山です。流域の熱帯雨林と河川、海が汚染されました。

これに怒った先住民が武装闘争を始めました。パプアニューギニアといえば、本田勝一著 極限の民族 (1967年)でも取り上げられたダニ族の住む地です。つい数十年前までは、ペニスケース(ゴサガ/コテカ)をつけた先住民が首狩りして食人していたような地域です。なかなかな地域です。パイプラインなどインフラが破壊されまくります。


極限の民族―カナダ・エスキモー,ニューギニア高地人,アラビア遊牧民 (1967年)

 

フリーポート側もこの原住民を雇って鉱山開発をしています。しかし賃金水準がやたら低い。そんなわけで労働争議がしょっちゅうおきます。フリーポート側はインドネシア軍にお願いしてスト退治やテロ退治をさせていたんですが、これがよろしくない・・・虐殺や拷問などが発生したそうで(※)、2012年にはPublic Eye Awardsの6位に選ばれてしまいました。

※ 1975年から1997年の間に、軍によって160人もの原住民が殺されたそうです。またその後も、元CIAの顧問を雇ったり、軍に援助をしたりなどして強姦や拷問が頻発しているとの報告があるそうです。(NYTimes Below a Mountain of Wealth, a River of Waste )


 

ちなみに、この1975年から1997年というのがミソです。まさにスハルト政権下なのです。軍事クーデターでスカルノ(Sukarno)から権力を奪取したスハルト(Haji Muhammad Soeharto)は、反共、親欧米路線を推進します。CIAとも結託して、欧米資本に有利なようにことを動かしていきます。しかしそれも1997年のアジア通貨危機の混乱で終焉を迎えます。その後はスカルノの娘、メガワティ(Diah Permata Megawati Setiawati Sukarnoputri)を担いだ闘争民主党PDI-P(Partai Demokrasi Indonesia-Perjuangan)が政権を担います。当然、ナショナリズム色が強くなります。

(ちなみに、スカルノとスハルト、名前は似てますがぜんぜん方針が違いますので要注意)

欧米メディアはこれを批判的に伝え続けました。しかし、皆さんがいまご覧のとおり、インドネシアはしっかり繁栄してきています。ゴジェックなどのユニコーンも生まれてきました。欧米メディアは、悪事の片棒を担いでいたにすぎません・・・。


すみません、脱線しました。

とりあえず今回の件に戻ります。

 

上記のような流れをうけ、闘争民主党系のインドネシア政府は2009年に新鉱業法を施行しました。これは鉱物資源を付加価値を付けてから輸出するように、との命令です。たとえば鉱石ではなく、精錬してから輸出しろということ。

 

その後、2014年、2017年と関連法の整備が進むのですが、この2017年の法改正はなかなかに厳しいものになりました。とくに、鉱山権益の51%をインドネシア資本に譲渡しろ・・・という部分にフリーポートマクモランは猛烈に反発します。せいぜい30%までしか受け入れられない、と。


そんな争いのなかで出てきたのが、今回の規制案です。

選鉱のあとに出てくる尾鉱の90%を山に戻すように・・・

とインドネシア政府は言っているそうです。

 

これは厳しい。

今までは50%で済んでいました。

これは、高地にあるグラスベルグ鉱山の選鉱過程の問題でもあるのですが、インフラが整っていない地域から運ぶために、泥や砂利のような状態にして水と混ぜてパイプラインの中を流しているそうなのです。それで出た残渣を9割戻す・・・ベルトコンベアを新たに何百キロも作らなければならないわけです。熱帯雨林の中を。もちろん、原住民に破壊されないように警備する必要もあります。維持管理費が莫大になります。資本コストからみて経営できない・・・というフリーポート側の主張なわけです。

実質的に、インドネシア政府に鉱山権益を返せ、と言っているに等しいのです。接収みたいなものです。


いままでは、インドネシア政府はここまで強気なことを言いませんでした。

たしかにスカルノはナショナリズム色の強い政権でした。

その娘の作った政党も同様になることはわかります。

しかし、世界がアメリカ中心に回っているときに、そのアメリカ企業にケンカを売るような真似はできませんでした。

 

そんなことをしたら外国資本に嫌気されて撤収されてしまうかもしれません。

CIAに汚職や女性問題をネタに強請られるかもしれません。

アメリカに敵対したら、下手したら軍事クーデターや革命だっておきかねません。

 

 

いま、インドネシア政府が強気になれる理由は、上記のようなことを心配しなくてよくなったからでしょう。

つまり、アメリカの力が落ちたから・・・だとおいらは思います。

そして、中国の力が強まっているから、というのもあるでしょう。

 

 

つい先日も以下のような報道がありました。

中国と233億ドルの事業協力、一帯一路加速
李総理、「一帯一路」とインドネシア発展戦略の連結強化

インドネシアは、中国との結びつきを急速に強めています。

 


 

多極化した世界で、新興国はしたたかに泳いでいます。

 

今後、ますますこういった事例が増えていくものと思われます。

いままでアメリカを恐れてビクビクしていた途上国は、多極化した世界のなかで中国とアメリカを両天秤にかけ、自国に一番有利な選択をするようになっていくでしょう。それはつまり、軍事力や外交力、政治力を背景にした欧米資本の優位性が失われる・・・ということです。

 

とりあえず、フィリピンには注目です。ドゥテルテ政権はかなり中国に近づいています。欧米資本への締め付けが厳しくなる可能性があります。同国でニッケル鉱山を展開している企業としては、住友金属鉱山などがあります。投資の際には政治リスクも考慮に入れておいた方が良いと思われます。

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なお、上記はあくまでも中卒くん個人の見通しであり、特定の投資スタンスをお勧めするものではありません。投資にあたっては自己責任、自己判断でお願いいたします。