中国鉱工業生産 2018年5月・・・火力発電と鉄鋼分野の伸びは維持不可能
いつものように、中国国家統計局のサイトからデータを引っ張ってきております。
それではみていきましょう。
前月から若干伸び率が落ちましたが、巡航的に強い動きです。
個別にみていきましょう。
まず1-5月の動きと5月を比較します。
最上流部門である鉱業は1.3→3.0にやや回復。
一方で製造業が7.0→6.6に低下です。
電気・ガスなどが10.8→12.2に上昇
これは、今年の春がいきなり温度急上昇しているからだと思われます。
石炭採掘は回復していますが、発電用の一般炭価格が10%以上上がっています。
中国では海爾、格力、美的などがエアコンを大量に安く販売しています。そのせいで一戸に二台、三台とエアコンがついている家が増えています。ちょっと気温が上がるだけで電力消費量が拡大します。鉱業と電力は外して考えた方が良いと思います。なので、
実体経済は鉱工業生産の数字よりももう少し下とみた方が良いと思います。
とりあえず、他の部分もみていきましょ。
1-5月の動きと5月を比べて上昇しているのは
化学原料および化学製品の製造・・・これは環境規制で春先の生産が落ちていたせいだと思われます。中国の石油化学は汎用化学製品多く、日本などにも市況変動が及んでいます。
医薬品製造・・・これは1-5月と5月変わらずです。中国は最近、大気だけでなく水質汚染に対しても非常に厳しいスタンスを示しています。このせいで、製薬業界のプラント(おもに原薬系)で生産停止に追い込まれたところが出ているそうです。
非金属鉱物製品産業・・・これはよくわかりません。
鉄金属精錬および圧延加工業界・・・この業界は何故か最近になって急激に伸びています。建設需要も他の製造業もそんなに膨らんでいないはずなのに。
非鉄金属精錬および圧延加工業界・・・こちらは環境規制明けの生産が膨らんでいることが主因だと思われ。
自動車製造業・・・よくわかりませんが、伸びています。
コンピュータ、通信およびそのたの電子機器の製造・・・やや意外感のあるセクターです。よくわかりませんが、伸びています。
電気、熱生産及び供給・・・これは熱波のせいだと思います。
つぎに、主要製品ごとにみていきます。
銑鉄、粗鋼、スチール・・・大幅に増加しています。なぜ?
産業用ロボット33.7→35.1・・・高い水準で横ばい圏
車は2.0→9.5・・・なぜ伸びたのかわかりません。
新エネルギー車 85.8→56.7・・・減少ですが、十分に高い水準だと思います。
スマートフォン5.9→10.4・・・回復 持続性があるようには見えません。
集積回路14.6→17.2・・・国策で伸びている。
火力発電8.1→10.3・・・気候の問題
風力発電24.8→6.7・・・風が弱かった?
太陽光26.3→14.8・・・弱い。風力と太陽光が意外と弱い動き。気象要因が影響してそう。
全体的に言えることは、中国の製造業がより高度化した製品群、たとえば産業用ロボット、集積回路、新エネルギー車(EV)、などに移行しているという点。
もうひとつ短期的な動きとして、製鉄業がやたら増産をしているという点が気になる。もしかして、米国から規制される前にたくさん稼ぎたいとか思っている?それとも、どこか東南アジアで大量に鉄が使用されるようになっている?セメントの出荷も回復してきているので、建設が回復?それにしては、固定資産投資などでみると不動産は弱そう・・・よくわからない。
とりあえず、鉄の増産ペースと、火力発電の増加ペースはちょっと維持できないと思います。よって、数字よりも下の数字を景況感として持っています。
以上。