フィリピンのドゥテルテ大統領がフィリピン国内のすべての鉱山閉鎖をしたい意向を示す
フィリピンのドゥテルテ大統領がまた、フィリピン内のすべての鉱山の閉鎖を求める意向を示しました。
Philippine leader again vows to shut mines after deadly landslides
これは、台風22号によって今月15日に大規模な土砂崩れが多発し、多数の死傷者が発生していることを受けた発言です。
この災害では少なくとも54人が死亡したとされています。
シマトゥ環境天然資源相はこの土砂崩れののち、コルディレラ地域の小規模鉱山すべてについて閉鎖を命令。
こうした小規模鉱山の乱開発が土砂災害に拍車をかけた可能性を政府高官が話しています。
ご存知の通り、フィリピンの鉱山といえばニッケル鉱です。
ニッケル鉱の生産でフィリピンは第2位、31.6万トンの生産で、世界シェア11.9%を占めています。
(2013年統計/データブックオブザワールド2018)
なお、1位はインドネシア83.4万トン、31.4%のシェアです。
しかし、です。
フィリピンにとって実は鉱業はさほど重要じゃありません。
フィリピンのGDPにおいて鉱業の付加価値生産高が占める比率は1.5%~1.6%程度でしかない。
ほとんど要らない子なわけです。
しかも、鉱山があるおかげで環境汚染や災害が酷くなって困っているわけです。
フィリピンは熱帯地域が多く、台風もやってきますから、露天掘りの鉱山に雨がドシャドシャと降り注ぐ・・・すると硫化物を含んだ水が海に注ぎこんでしまうわけです。
こうした状況から、ドゥテルテ政権は就任当初より鉱山開発に否定的なスタンスをとってきました。
ドゥテルテ政権発足後すぐに環境天然資源相に就いたレジーナ・ロペスはガチガチの環境保護論者で活動家でしたし、その後のロイ・シマツ氏なども鉱山開発推進には否定的な態度を示してきました。
ロイ・シマツ環境天然資源相はとりあえず、外資の権益を守るために、若干スタンスを軟化させましたが・・・
このあたりのことは以前にも書きましたが、
関連記事:フィリピンのドゥテルテ大統領、鉱山廃止決定へ?住友金属鉱山はどうなる?
とりあえず、フィリピンが鉱山開発を拒否して困るのは、日本の住友金属鉱山でしょう。
住友金属鉱山は、開発しているニッケル鉱山のほとんどがフィリピンにあります。
しかも、住友金属鉱山はテスラやトヨタ向けリチウムイオン二次電池用正極材などを作っており、それらはパナソニックを経由して製品化されています。
もしもフィリピンの鉱山開発が全面的にストップした場合、住友金属鉱山の業績のみならず、パナソニックやトヨタ自動車、テスラにも影響してくるわけです。
思うに、世界的に見て、あまりにも資源価格が安すぎるのかもしれません。
サプライチェーンの最上流である鉱山の開発をしても旨味が少なすぎる。
また、鉱山開発を許可しても当該国がたいして潤わない・・・その状況こそが、こういった規制論に繋がっているように思います。
インドネシアでも鉱山権益の国有化の流れがありますし、今後ますます上流権益をめぐる争いは増えていくと思います。