鉄道技術見本市イノトランス2018(InnoTrans)~スピードから環境・情報化へ~

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世界最大の鉄道・LRT・バスなど交通インフラ技術見本市イノトランス(InnoTrans)2018年閉幕~今回のテーマは情報化と環境性能~

 

二年に一度、ドイツ・ベルリンで開催される世界最大の鉄道・LRT・バスなど交通インフラ設備の技術見本市イノトランス(InnoTrans)2018年が閉幕しました。

今回は、明らかにこれまでのイノトランス(InnoTrans)とは異なる傾向になっています。

今回のイノトランス(InnoTrans)は、これまでのようなスピードを競う展示から、より環境負荷の低い製品、省エネ、経営の持続性、情報化による顧客満足度向上、設備不具合の発見などに焦点をあてるような製品が多くなっていることに気が付きます。

各社の動向をみていきましょう。

 

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独シーメンス・・・「デジロML シティジェットエコ(Desiro ML City Jet Eco)」「ヴェラロ・ターキー(Siemens Velaro Turkey)」

ドイツのシーメンス(Siemens)とオーストリア連邦鉄道は、バッテリー駆動の試作車両「デジロML シティジェットエコ(Desiro ML City Jet Eco)」を開発。

電化区間の架線を通じて蓄電池に電気を蓄え、非電化区間では蓄電池に蓄えた電気を利用して走行する車両。

こういったものは日立で既に開発済みですが、ドイツのシーメンスもこういった製品を開発し始めているようです。

シーメンスは他に、ICE3をベースにしたトルコ向け高速車両ヴェラロ・ターキー(Siemens Velaro Turkey)を展示。

高速鉄道ユーロスターにも採用されているICE3(最高時速320㎞/h)をトルコ向けに設計し直したヴェラロ・ターキー(Siemens Velaro Turkey)は最高時速300㎞。シーメンスによる高速鉄道の展示はこれだけ。明らかにスケールダウン。

またシーメンスは、得意のマインドスフィア(Mind Sphere )などIoT技術を利用した情報化による生産性向上を今回のイノトランス(InnoTrans)ではアピール。

なお、さきほどのデジロMLシティジェットエコもそうなのですが、シーメンスの最新型車両は情報化投資が充実しており、IoT技術により故障の発生確率を事前に察知。シーメンスのデータセンターがリアルタイムで管理してくれるそうです。

こういったシステムをスペインの高速鉄道に実際に導入した例では、定時運航率を99%に上昇させることができ、チケットの払い戻しが減って収益にも好影響が出ているとアピールしているとのこと。(日経新聞2018年9月19日朝刊15面)

こういった車両は東日本旅客鉄道(JR東)の総合車両製作所新津事業所で作られていますが(E235系)、シーメンスもいよいよこのような製品を出してきました。しかも汎用的な管理システムで・・・。

 

 

 

 

仏アルストム(Alstom)・・・燃料電池電車「コラディア アイリント(Coradia iLint)」、電気自動車バス「アプティス」

先日もお伝えしましたが、フランスのアルストムは世界初となる燃料電池で走る鉄道車両、「コラディア アイリント(Coradia iLint)」を開発。

関連:アルストムが開発、燃料電池鉄道列車「コラディアiLINT」が営業運転開始

既存の「コラディア リント」を燃料電池対応にしただけの車両ではありますが、極めて画期的。

非電化区間が多い国では一般化しそうな製品となっています。

仏アルストムのアンリ・プパール=ラファルジュ最高経営責任者CEOは「もはや最高速度などは誰も口にしない。どれほどクリーンな電車を出せるかが重要だ」と語っていたそうで、今回のイノトランス(InnoTrans)を象徴するような発言だと思います。(日経新聞2018年9月22日朝刊7面)

アルストムといえば世界最速の高速鉄道TGVを開発・製造しているメーカーです。それがスピード競争ではなく環境性能を重視するという姿勢への転換、非常に大きな意味合いを持つと思います。

 

またアルストムは同時にEVバス「アプティス(Aptis)」を開発。

アルストム(Alstom)のアプティス(Aptis)は非常に特徴的なタイヤの配置となっており、車両の四隅ぎりぎりに全輪操舵できる車輪を設置しています。

アプティス(Aptis)は車体は12メートルもの長さがありながら、タイヤを四隅に置いて全輪操舵できることでカーブしやすくなっているとのこと。

またアプティス(Aptis)は窓の面積をを20%拡大、ドアは三か所設置して乗り降りしやすくなっているとのことです。

なお、アルストムとシーメンスは統合予定となっています。

中国の鉄道車両製造二社(中国南車と中国北車)が合併して中国中車になったわけですが、それに対抗して欧州でも統合予定となっています。

 

 

 

 

中国中車(CRRC)・・・CFRP製車両CETROVO

 

中国中車(CRRC)はイノトランス(InnoTrans)にて炭素繊維強化プラスチック製(CFRP)の地下鉄用車両「CETROVO」を公開。

日本やドイツの技術を吸収して世界最大の鉄道メーカーになった中国中車ですが、これまでひたすらスピードをアピールしてきた姿勢から一変、軽量化による省エネ技術に焦点をあててきました。

車体が軽くなることでエネルギー効率は13%改善するとのことです。また、インバーターに炭化ケイ素SiCを採用、エネルギー効率を15%高めるとのことです。

また、情報化なども充実させ時速140㎞の完全無人運転を実現。

車両の窓にはタッチパネル式の透過型液晶ディスプレイを搭載し乗客の満足度を高める工夫がされているとのこと。

なお、今回のイノトランスから中国中車は実物展示も始めました。一帯一路を推し進める中国において、欧州はユーラシア大陸の反対側にあるというだけで陸続きの地域です。本格的に市場開拓に取り組んできている可能性があります。

 

 

日立レールイタリア(旧アンサルドブレダ)・・・2階建て通勤車両「ロック」

 

日立レールイタリアと日立は、二階建て通勤車両「ロック」をイノトランス(InnoTrans)にて参考展示。

日立の二階建て車両ロックは、最高時速160㎞、5両で656人の定員

すでにイタリアの鉄道会社トレニタリア向けに契約を最大300両、26億ユーロ分獲得とのこと。納入は19年6月の見込み。

同じくイタリアの鉄道会社FNMから50~120編成、FNM子会社のフェッロヴィーエノルド社からも120両の車両を受注とのこと。(日経速報2018年9月19日)

 

 

 

なお、欧州鉄道産業連盟(UNIFE)によると鉄道事業は21~23年平均で1920億ユーロ(約25兆円)と、15~17年平均に比べ18%程度拡大するそうです。(日経新聞2018年9月22日朝刊7面)

世界的に環境保護意識、循環型社会への移行が目指されており、このような環境下で鉄道には非常に注目が集まっています。

世界の眼は、すでにスピード競争から環境意識重視に転じています。

 


以上のように、今回のイノトランス2018では、これまでのスピード競争を競う「技術のみせびらかし」から、より現実的な稼ぎを目指した展示に代わってきていることがみてとれます。

 

 

しかし、展示されている技術をみると思いますが、どれもこの20年間で日本企業が推し進めてきた技術ばかりなのでは?という気がします。

シーメンスのデジロMLに搭載された「電化区間で充電、非電化区間でバッテリー駆動する鉄道」なんて、日本ではもう10年以上前に実現しています。

おなじく、IoTを使った車両のメンテナンス管理なんてJR東が導入しているE235のそのまんまじゃありませんか。

アルストムの燃料電池電車だって、日立の研究所が2000年代初頭から開発を始めていたものです。

 

なんで日本は毎回のように、技術は先んじて作るのに、ぜんぶおいしいところを持っていかれそうになるんでしょうか?

 

 

 

 

いま日本は、世界の潮流に逆らって、環境意識無視、スピード重視のリニアモーターカー技術に邁進しています。

 

JR東海が推進する中央リニア新幹線は、時速500㎞の走行時に現行の新幹線の3~5倍の電力が必要と言われています。

高規格の軌道、トンネルを超高圧の地下に建設しなければなりません。

大量の土砂が出ますから、その残土処理をどうするかで揉めています。

また、大井川の流量が減少することが危惧されており、多方面から非難があがっています。

JR東海の中央リニア新幹線、大井川水系の流量減少を招く可能性~コンプライアンスが問われる事態に~

リニアは、あきらかにエコではないのでは・・・と思います。

 

 

 

世界の流れにただ一国、逆行する国ニッポン

すばらしい根性だと思います。

さすが精神論の国です。

あとのことなど気にしちゃだめですね。

JR東海元会長で、政府要職を歴任した葛西敬之さん※の夢実現のために、みんなで歯を食いしばって頑張るしかないですね。

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(葛西敬之さんは、国家公安委員や教育再生会議委員、原子力損害賠償支援機構運営委員会委員、東京電力に関する経営・財務調査委員会委員などの政府の役職を歴任した素晴らしい方です。安倍首相を礼賛する四季の会の主要メンバーでもあり、産経新聞の「正論」コラムニスト、全寮制男子校海陽学園の理事長も務めています。)

 

 

以上。