日立、英国高速鉄道車両事業から撤退か?グレート・ウェスタン・ラインの持ち分売却先探す
日立が英国高速鉄道グレート・ウエスタン・ラインの持ち分を売却へ、と伝えられています。
Hitachi lines up £600m plan to cash in on express train fleet The Times
これは、「クラス800」「クラス802」という車両で相次いでおきた車両トラブルが問題だと思われます。
日立はゴールドマンサックスをアドバイザーにして6億ポンドでの売却を目指しているとのことですが、果たしてそれだけの価値をつけられるかは微妙です。
2018年現在、世界の鉄道車両市場は、中国中車、アルストム、シーメンス、ボンバルディアなどが非常に強い状況になっています。
もとはといえば日本の日立などが技術供与して大きくなった中国中車ですが、いまでは世界最大規模の鉄道車両メーカーになりました。
中国中車の売上は国内3兆強、国外3000億くらい、しかも国外の比率は年々高まる傾向です。
これに対し、フランスのアルストムと、ドイツのシーメンスは合併することで対抗。
GEは車両部門はワブテックと合併することになっています。
つまり、新たな順位としては中国中車、アルストムシーメンス、ボンバルディア、ワブテックGEといった順でしょうか。
この状況で、日立は独立独歩を貫く構えをみせていました。
鶏口となるも牛後となるなかれ、といったところでしょうか。
遅ればせながら日本国外へのシステム販売も開始し、その拠点に選んだのが欧州。英国、のちにイタリアに進出します。
日立は英国都市間高速鉄道計画(IEP/ Intercity Express Programme)向けにジョン・レイング社(John Laing)と特別目的会社アジリティ・トレインズ社(Agility Trains)を設立。
イースト・コースト・メイン・ライン East Coast Main Line (ECML)向けにクラス800シリーズ65編成、車両497両
グレート・ウェスタン・メイン・ライン Great Western Main Line(GWML)向けに57編成369両
これらの受注と契約をしていました。
ですが、日立が英国の車両生産拠点に選んだロンドン西部ノースポール車両基地や、ダーラム州ニュートン・エイクリフに新設した日立レールヨーロッパ社の製造拠点がどうもうまくいっていない様子。
せっかくクラス800に英国女王の名前「Queen Elizabeth II」なんて名前をつけたのに、インターシティ125の置き換えで運航した初日に水冷バルブの不具合で天井から水漏れしたり、バイモード運転ができなかったりと散々な結果に。
それでも生産改善などを目指して頑張っていたようですが、今月にはさらにクラス802の車両が架線を引きずって壊す事故も起こしてしまったとのこと。
London Paddington rail disruption likely to persist after power loss The Guardian
さらにはBREXITの行方などもあるのでしょう、27年間の保守契約などを含めた巨額受注でしたが、完全に諦めることにしたようです。
なお、日本企業の海外鉄道事業というと、日本車両や川崎重工も過去に巨額の赤字を垂れ流したことがあります。
日本人同士なら通じるツーカーの感覚も、海外の生産現場・保守管理現場では通じない・・・そういった部分があったようです。
とりあえず、今回の売却額、6億ポンド規模はさすがに無理な気がします。
思えば、中国中車にいろいろと技術供与してしまったのが運の尽き。(当時は中国北車、中国南車)
今はただ諦めて、牛後となる道を選ぶこともまた、日立の生きる道なのかもしれません。