導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)を巡るこれまでの経緯と今後の展開

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導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)について、かるく解説

 

いそいで書いた太陽誘電によるエルナー買収についての記事ですが、たぶんわかりにくかったと思います。

関連:太陽誘電がエルナーを完全子会社化~その経緯と目的についてまとめ~

とりあえず、文中で使用したものについてかるく解説しておきます。

まずは導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)について書きます。

といっても、技術的要素については各社技術資料が詳しいですのでそちらを見ていただくとして、とりあえず、どういった背景でどういった経緯で導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサが重要なのかについて、書いていこうと思います。

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コンデンサにはいろいろある

コンデンサはタンタルコンデンサ、アルミ電解コンデンサ、積層セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサなどいろいろな種類がありまして、それぞれ静電容量と定格電圧の領域、周波数特性、温度特性(温度による容量変化)、実装面積、極性の有無、あとは価格、調達の容易性などの違いから、用途によってさまざま使い分けて利用されてきました。(もちろん、もっといろいろありますが、ここでは全部は書き出しません・・・)

アルミ電解コンデンサは、価格が安く、量産もらくちんで入手性が高く、静電容量の増加も用意で幅広く使われてきました。

しかしアルミ電解コンデンサはいかんせん湿式(液体を使う)ですから、液漏れや熱による膨張などいろいろと扱いにくい部分があります。

しかもアルミ電解コンデンサはESR、ESLが高いためリプル(脈流)の波形が大きくなりやすく、ジュール熱の発生によって温度が上昇しやすい。自分で発熱して自分で寿命を縮めてしまうという、厄介な性質がありました。(ここらへんは高校物理の範囲ですかね)

 


 

横道に入りますが、昔のパソコンがやたらよく壊れたのはこれが理由です。

1990年台はパソコンがやたら売れて、日本のアルミ電解コンデンサだけでは賄えず、台湾などのやすいコンデンサを積むメーカーが多かったんです。

特にマザボのメーカーは台湾に多かったため、系列取引で台湾企業の酷いコンデンサを積んだものが多かった。

一年、二年でコンデンサが妊娠してやがて破水(膨らんで、のち液漏れってことです)、パソコン全体が使えなくなる・・・みたいなことがよくありました。

CPUがダメになることなんてめったにないんです。だいたいが電源、マザボ、ビデオカード上のコンデンサの問題でした。

あとはファンのベアリングがおかしくなって音を鳴らすとか・・・要するに物理的要素でダメになりやすかったですね。

ベアリングがダメになる→ファンがまわらない→空冷不足で基板上の電解コンデンサが発熱→液漏れ

みたいなルートでダメになることが多かった・・・ほんと、そのころから考えたら、いまのパソコンは天国ですw

 


 

でまぁ、ちょっと横道に入りましたが、元に戻します。

 

アルミ電解コンデンサの近縁種に、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサってのがあります。

これは陰極材料に電子伝導度の高い固体導電性ポリマーを利用したもので、リプル問題をそこそこ克服し、周波数特性や温度特性も十分で、寿命も格段に伸ばしたものです。

ちなみに2000年代後半からパソコンがめったに壊れなくなったのは、主にこいつのおかげです。

ただ、この導電性高分子アルミ固体電解コンデンサですが、アルミ電解コンデンサと違って固体ですから、自己修復性もありませんし、静電容量を効率よく稼ぐこともできませんでした。

パソコンにはつかえても、産機などに使うには不十分。


 

2010年代に入り、アルミ電解コンデンサの世界に革命的な変化が訪れました。

アルミ電解コンデンサと導電性高分子アルミ固体電解コンデンサのいいとこどりをした導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサってのが開発されます、通称ハイブリッドコンデンサ。

陰極材料に新たな素材を開発することで、液体と固体の良いとこどりをした導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)は、リプル問題の低減はそこそこ維持されつつ、静電容量・定格電圧も十分満足なほど高く、温度特性が優れているという特徴があります。

ちなみに具体的にどんな素材が利用されているのかはよく知りません。これは各社の技術資料などを参照してください。

 

 

とりあえず、こうした優れた特徴をもとに、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)は主に自動車などの分野で多く使われています。

この導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)に軸足を移しているのが近年の日本のアルミ電解コンデンサメーカーの特徴であり、エルナーもその一社となっています。

車載向けハイブリッドアルミ電解コンデンサを開発・量産化へ エルナー 2014年7月3日 プレスリリース

 

このエルナーがやっている導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)ですが、自動車と親和性が高く、多くの国の自動車メーカーが採用しています。

太陽誘電社長の登坂正一氏はインタビューのなかで「欧州の48Vマイルドハイブリッド※1市場をエルナーの導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)で狙っていく」旨の発言をしています。

電子デバイス産業新聞 特別インタビュー 太陽誘電(株) 代表取締役社長 登坂正一氏

 

 

※1 48Vマイルドハイブリッド・・・クルマの電装化の進展で、既存の12V電源では足りないよーって声が電装部品メーカーから出ていたそうです。そんなわけで、「それなら12Vのほかに48Vの電源も積んじゃおう」ってなりました。

ここらへんは60Vを超えると人体への影響から構造にコストがかかるから、、、みたいな解説をどこかで聞きましたが、とりあえず48ってのがコストパフォーマンス的に良かったそうです。

で、48Vもあるなら、電源をスタート時のアシストとかにも使ったらどうよ?みたいなことになった・・・これが48Vマイルドハイブリッド。・・・と、まぁざっくり簡単にまとめたけど、わかりにくいはず・・・いつか軽く纏めます。

 


とりあえず、中国は2019年から、欧州は2021年から、かなり厳しめな環境規制に移行します。

これらはCAFE基準(Corporate Average Fuel Efficiency / 企業別平均燃費基準)となっていて、車種別でなく、メーカーごとに出荷台数に応じた過重調和平均燃費を算出するものです。

これら規制に対応するための方策として、マイルドハイブリッド化なり、ストロングハイブリッド化なり、EV化(電気自動車化)の流れは間違いなくおきるわけです。

そうした需要で必要とされる適性は、自動車の部分ごとに違う訳ですが、とりあえず定格電圧と静電容量のバランスから、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)は結構いい線いってるわけです。

というわけで、ニチコンや日本ケミコンなども導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)へ投資を拡大させており、同業のエルナーにも太陽誘電が出資、自社のMLCC(積層セラミックコンデンサ)と補完関係を期待しているというわけです。たぶん。

 


ちなみに、良いことだらけのように書いた導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)ですが、デメリットももちろんあります。

 

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)のデメリットとしては、おもに物理的側面が大きいと思います。

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)はその構造からして低背化に限界があります。

また、上記の構造上の問題とも絡みますが、耐振動構造をどう確保するかという問題もあります。

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)の振動対策としては、基板への実装に当たって接着剤・ポッティング等により固定化するなどの対策はありますが、内部リードの破断(くっついている部分にかかる応力由来)にかんしてはなかなか解決方法がありません。一応、ニチコンがスリットを入れる方法をとっていますが、それでも80%程度減まで負荷を下げる程度でしかありません。

というわけで、将来的には導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)からMLCC(積層セラミックコンデンサ)に置き換わっていくのではないか?というふうに見ている人は多いと思います。たぶん。

自分はここらへんプロじゃないんで、詳しいこと知ってるかたいらっしゃいましたら教えていただけると幸いです。


太陽誘電としては、まずは導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサで顧客を獲得しつつ、MLCC(積層セラミックコンデンサ)で置き換えられる部分は置き換えていく営業をしたいのだと思います。

 

たぶん、そんな感じで経営戦略を持っているのだと思います。

そしてそれは、そんなに間違った経営戦略ではありません。

自分が同じ立場にいても、おなじ経営判断をしたと思います。

 

とりあえず、以上で導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサの経緯と説明はおしまい。

次は48Vマイルドハイブリッドについて説明します。

 

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