48V電源規格(LV148)マイルドハイブリッド化を進めるアウディ、フォルクスワーゲン、ダイムラー(メルセデスベンツ)、BMW~国策としての自動車電源基準~
今回は、ドイツがなかば国策として推し進めている感のある電源の48V化(LV148)とマイルドハイブリッド化についてみていきます。
欧州では2021年から環境規制が一気に厳しくなることが決定されており、これに対して各自動車メーカーは一斉に対応に乗り出しています。
この2021年からの環境規制ですが、制度が作られた2009年4月当時はEVの開発と並行してディーゼル車の技術開発を進めていけばクリアできる問題だと思われていました。
欧州理事会/欧州議会における「CO2排出規則」は、2015年までに130g/km以下、2021年までに95g/km以下とする目標です。
これはかなり厳しいものですが、基本的にディーゼル車は二酸化炭素排出量がガソリン車に比べて少ないため、EVの開発と同時にディーゼル車比率を増やせばどうにかなる問題だと思われていました。
実際にこの方針のもと、欧州ではディーゼル車の販売比率がどんどん増えていきます。
しかしその後、大変な問題が発覚します。
ご存知の通り、2015年9月にディーゼル車に関する各メーカーの不正行為が発覚したのです。
とくにドイツのフォルクスワーゲングループ(アウディ・ポルシェ)やダイムラー(メルセデスベンツ)、BMWなどはこの影響を大きく受けて業績も低迷。
ECUの内容を書き換えて、試験時だけ排ガスをクリーンにするよう小細工が行われていたこの事件、欧州で大変な問題に発展します。
当初、各メーカーは「走行性能に問題はない、安全性は担保されている」と主張していましたが、そんなことで許されるはずがありません。
だって、その不正車両が走ることで大気が汚れ、その汚れた大気を吸った人たちが健康を害すのですから。
日本でも昨今、マツダやスズキ、スバルなどで排ガス検査の不正が明るみになっていますが、これらのメーカーはリコールをしないそうです。
しかも日本政府もこの方針を黙認しています。安全性には問題ない、と。
ふざけるなと言いたい。それら不正な車両が走ることで被害を被るのは、汚い空気を吸わされる無関係な市民です。
とりあえず、制度を破ってもお咎めなし、企業の利益のために見て見ぬふりをする・・・そういう日本の政府と産業界の態度は本当にろくでもないな、と思います。コンプライアンスがグダグダですから、そのうちまた大変なことをやらかします。間違いありません。
っと、まぁ、話がズレました。48Vマイルドハイブリッド化の話に戻します。
とりあえず、そんなわけで欧州ではディーゼル車が売れなくなってきました。
環境対策コストをしっかりやると、ディーゼルはすっごく高くつくことがみえてきました。
また、ディーゼル車の都市中心部への乗り入れを規制するような司法判断なども出てきて、ますますディーゼルが売れなくなってきました。
また、欧州では今年2018年10月よりWLTP(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure)による燃費検査が義務付けられます。
このWLTP基準で測ると、今までよりも発進、停止が多い分、燃費はかなり悪化して出てしまうとされています。この状況で2021年排出基準を守れ・・・ということになってます。
関連記事:18/6/7午後 WLTPと2021年EU規制で自動車販売はどうなるか
こうした状況下で、ドイツ政府とドイツのメーカーは方針を転換します。
ディーゼルを完全に諦め、電気自動車(EV)の開発に一気に舵をきりはじめました。
2021年のCO2排出基準95g/km以下とする目標を達成するために、EV化は避けられない状態です。
しかし、それだけではコストが高くかかる・・・他の方法も混ぜて、コストを抑えつつ、効果を最大限にするためにはどうしたらいいか?
その解答が、48Vマイルドハイブリッド化というわけです。
(ごめんなさいね、あいかわらず前置きが長くて読むのダルいですね・・・)
48Vマイルドハイブリッド化とは?
まず最初に、マイルドハイブリッドとストロングハイブリッドの違いをざっくりと説明しますと、
ストロングハイブリッドとは、プリウスに搭載されたTHS(トヨタハイブリッドシステム)みたいなもので、高電圧・大容量電池による高出力が特徴で、長時間、長距離のモーター走行が可能になっています。
システムも複雑で、省エネ技術を最大限に推し進めるため複雑な制御をおこなっており、当然、製造コストは高コストになっています。
高電圧のため安全対策にもコストがかかり、電池重量などから車両も重たくなりがちなシステムとなっています。
マイルドハイブリッドとはクルマの発進時や加速時などに補助的にモーターが稼働することで燃費性能を上げるシステムです。
ストロングハイブリッド、フルハイブリッドに比べて排ガスや燃費性能に関しては限定的な改善効果しかありませんが、システムが非常に単純なため導入費用が安く済むことがメリットになっています。
また、充電池やオルタネータ、モーターなどがフルハイブリッドに比べて小型になっているため、マイルドハイブリッドは軽量化を実現しつつ燃費を上げられる、折衷案のようなものになっています。
これら利点の他にも、マイルドハイブリッドは高い電圧が必要ないため、高電圧にともなう厳格な感電防止対策などのコストもかからず、そのぶん低コスト化が実現します。
またマイルドハイブリッドではハーネスなどの太さなども既存のものと大差ないもので済むため、そのぶんコストが安くなるとのことです。
とりあえず、マイルドハイブリッドは、安いけれどそれなりに燃費改善効果もあるシステムとなっています。
LV148とは?
LV148とは、ドイツの自動車メーカーが主導する48Vの車載電源規格です。
自動車の電装化がすすむなかで、現在の12V電源ではあまりにも心許ないという声は多方面から出てきており、電源の高電圧化が求められていました。
こうした中、ドイツの自動車メーカーだけがつるんで新たな電源規格を策定、非関税障壁のようなものを作り出しました・・・それがLV148、電源の48V化です。
LV148は、ドイツの自動車メーカー各社がハイブリッド技術などで出遅れたこと、トヨタ自動車やルノー日産三菱グループなどとのシェア争いに勝つためにとった手段だと思います。
とにもかくにも、このLV148ですが、ボッシュやコンチネンタルなどドイツの自動車部品メーカーも参加しており、ドイツが国主導でやっているのではないかと思うほど、ドイツだらけになっています。
48Vマイルドハイブリッドとは?
そしてこの、LV148を使って、前述のマイルドハイブリッド化を実現したシステムこそが、48Vマイルドハイブリッドというわけです。
48V電源を積み、これを使ってエンジンをモーターでアシストする48Vマイルドハイブリッド。
これが非常にちょうどいい塩梅となっているようです。
アウディはA8すべてに48Vマイルドハイブリッド・システムを採用。
ダイムラーもEクラスに48Vマイルドハイブリッド・システムを採用。(メルセデス・ベンツE350カブリオレ、E350クーペ)
またダイムラーはメルセデスベンツS450にも新型直6エンジンM256とともに48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載。
今後あらゆる欧州車にこの48Vマイルドハイブリッドは搭載されていく可能性が出てきています。
これが、太陽誘電社長が「エルナーのが手掛けている導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサが48Vマイルドハイブリッド市場に最適」と書いていることの意味です。
電子デバイス産業新聞 特別インタビュー 太陽誘電(株) 代表取締役社長 登坂正一氏
とりあえず、48Vマイルドハイブリッド化に限らず、電気自動車/EV化に限らず、自動車メーカーはあらゆる手段を使って欧州の排ガス規制に対処していこうとしています。
また、これに先立ち中国でも2019年からEVなどの販売量割当が行われます。
世界は間違いなく化石燃料から電気の時代に入っていっていると思います。
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18/6/7午後 WLTPと2021年EU規制で自動車販売はどうなるか
以上です。