KKRが買収した日立国際電気、早くも中国企業に転売の可能性~成膜技術に注目か?
中国企業は日立国際電気の半導体部門を買収か?
2017年12月に投資ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)に22億ドルで買収された日立国際電気ですが、このたび転売先が早くも見つかったとのことです。
相手は中国企業と中国系ファンドとのこと。
背景および企業名、ファンド名などは一切明かされていないとのことですが、英Financial Timesが報じているのでたぶん本当なのでしょう。
米国が中国包囲網を強化する中、半導体関連技術が中国に流れることにはセンシティブな論調が沸き上がりそうです。
日立電子、国際電気、八木アンテナが合併してできた日立国際電気
日立国際電気は、日立系の三社、日立電子、国際電気、八木アンテナが合併してできた企業です。
三社に共通するのは無線通信機器に関連するビジネスをしていたというもの。
ただ、共通していない部分もかなり大きく、たとえば国際電気は半導体製造装置を手掛けていたり、日立電子は放送用・映像装置を製造していたりしました。
純粋に無線という点では八木アンテナくらいなものでした。
日立国際電気がKKRに売却される
日立電子、国際電気、八木アンテナ合併後は日立製作所の連結子会社でしたが、日立製作所の経営が集中と選択に向かう中、2017年12月、非中核事業として投資ファンドKKRに22億ドルで売却されました。
KKRに売却されたあとは事業の再編に着手
国際電気の半導体製造装置、成膜プロセス技術はKOKUSAI ELECTRICにまとめて別組織化するなどし、他は無線技術に纏めるような再編になっています。
事業をわかりやすく切り分けて、売れる相手に高く売ろうというKKRの考えがよくわかります。
半導体製造は中国製造2025の最大のポイント~中国が日立国際電気を買収したいわけ
中国は目下、半導体の自国内生産を押し進めたいと考えています。
中国にとって最大の輸入品は原油やLNGなどの化石燃料ではなく、半導体です。
(このことについては、以前書いた以下の記事に詳しくまとめてありますので、よろしければごらんください。)
中国はこうした状況を改善し、自国内で開発から製造まで一貫して半導体を生産したいと考えています。
そうすることで、単なる組み立て産業から脱却し、真の意味で製造強国になれる、と習近平指導部は考えています。
それが、中国製造2025の中心的な価値観です。
現在中国は、開発はかなり優秀な企業が出てきました。
たとえばファーウェイ傘下のハイシリコンなどは、クアルコムなどと匹敵するレベルにあると言われています。
ファーウェイ傘下の半導体設計企業『HiSilicon(ハイシリコン/海思半導体)』
ですが、半導体の製造技術に関してはまだまだ未熟です。
製造は主に台湾系のTSMCなどに丸投げすることが多く、結局ファブレスメーカーあっての中国半導体産業だったりします。
こうした状況を打破するため、中国は自国内で半導体製造企業の育成を急いでいます。
インゴットからウェハー、ウェハーからチップ、封止してパッケージ化するところまで、中国はすべて自国内で、しかも自国資本の企業にさせたいのです。
中国・清華紫光集団、今後10年間で半導体製造に11兆円投資へ
【中国】半導体製造イノトロン(合肥長鑫/睿力集成電路)、蘭ASMLからEUV露光装置の調達めざす
ところがアメリカはこういった中国の願いを挫こうと考えてインす。
中国半導体メーカー福建省晋華集成電路(JHICC)に対し、米国が輸出管理規則(EAR)に基づく制限措置を発動へ~本格的に中国企業をハブり始めた!
アメリカとしては、いつまでも中国には組み立て工場でいてもらわないと困ります。
自分達と同じような半導体の知的財産管理、開発・製造ビジネスまでやりだされてはこまるのです。
だから、あれこれとイチャモンをつけて中国の半導体技術向上を邪魔しようとしてきました。
中国企業への日立国際電気売却はうまく行くか?
上記の点を踏まえると、今回の日立国際電気の売却も、かなりスッタモンダしそうな気がします。
アメリカは、たぶん邪魔をしてくるんじゃないかと思います。
また日本政府も、邪魔するんじゃないかなと。
KKRが日立国際電気を買収したころは、まだここまで米中対立はありませんでした。
それが今はこんな状況・・・
ぶっちゃけ、KKRとしても困っていると思います。
いろいろとお疲れさまですね。
以上です。