どうもこんばんは、中卒くんです。
Twitterでつぶやいたとおり、中卒くんは先週テンセント(騰訊 00700.HK)を買い戻しました。
以前からずっとホールドしてきた銘柄です。暴落の可能性に際して一旦手放しましたが、あまり下げそうにないので急いで買い戻しました。
で、この際なので、いろいろと過去の外電記事などを眺めかえして考えてみました。いま同社が置かれている立場がどうなっているのか、ちょっと振り返ってみたいと思います。
すごく強い動きですねー。
押し目でしっかり出来高を確保し上昇トレンドを維持しています。恐ろしく強いです。
でも、こういう強いチャートの時にこそ、ちゃんと基礎的条件や取り巻く環境を確認すべきだと思います。投資したあとでもいいので、一応確認はしておくようにしています。
まずは各種指標をみてみましょう。
毎度のように、4-tradersを参考にします。元データはロイターです。
年度 | 2018e | 2019e |
PER | 52.7 | 41.7 |
EV/EBITDA | 36.4 | 27.8 |
PBR | 14.6 | 10.9 |
営業利益率 | 33.1 | 30.3 |
純利益率 | 27.0 | 24.6 |
Operating Leverage | 0.72 | 0.70 |
Financial Leverage | -0.64 | -1.06 |
ROA | 15.4 | 15.8 |
ROE | 31.5 | 30.4 |
(2018年02月19日時点)
経営指標は良好ですが、やはり、さすがに高いですねー。
チャートに勢いはありますが、成長性の高さは十分に株価に織り込まれた状態だと思います。ホルダーですが、無理に買い増ししていきたくはありません。。。ヒストリカルでみても、PERは+5~8程度高いですから。
で、ここからが本題です。
ここ一年のテンセントはやたらと投資活動が活発でした。以前から投資は活発でしたが、今年は輪をかけて活発でした。全体で120件以上もの出資が行われたといわれています。
とりあえずそのなかから、テンセントがらみの主だった出資関連記事をまとめたのでご覧ください。(なお、ニュースサイトなどから集めていますが、不正確な箇所もあるかもしれませんので間違っていてもご容赦ください。くれぐれもこの情報で投資行動を決定なさらぬようお願いします。)
2018-02-15 テンセントなどがJDの物流子会社に25億米ドル投資
2018-02-15 テンセント、韓国カカオに50億円追加出資
2018-02-10 テンセントがVR・映画製作のSkydance mediaに出資
2018-02-09 盛大遊戯にテンセントが30億元出資
2018-02-02 JD、テンセントなどがが海瀾之家に100億元投資か
2018-01-30 万達商業地産にテンセントとJDが340億元出資
2018-01-30 テンセント、永輝超市傘下のO2O生鮮事業に約10億元の出資
2018-01-26 米メディア会社スカイダンスにテンセントが出資
2018-01-24 仏カルフールとテンセント、資本業務提携
2018-01-25 テンセント、AIバイオ会社XtalPi Inc.に追加出資
2018-01-17 オンライン賃貸情報サイト「自如」にテンセントが出資
2018-01-17 カナダ「Wattpad」にテンセントが5000万米ドル出資か
2018-01-04 テンセント、中国IT企業AISECに出資
2017-12-25 大手PEやテンセントなどがWMモーターに資本参加
2017-12-19 永輝超市の株式5%42億1600万元分をテンセントが取得
2017-12-18 中国ブランド通販のビップショップにテンセントとネット小売り大手JDが出資
2017-09-06 テンセント、ドイツの「空飛ぶタクシー」の開発元リリウム(Lilium)に出資
2017-09-01 中国鉄路、テンセントやアリババに混合所有制改革で協力要請
2017-08-21 チャイナ・ユニコムが混合所有制改革を巡る筆頭株主への出資者を再公表 総額617億2500万元を調達
2017-08-10 米スマホベンチャー「エッセンシャル」にテンセントが共同出資
2017-08-03 英ゲーム会社ミルキー・ティーにテンセントが出資
2017-07-31 英ゲーム開発会社フロンティア・デベロップメンツにテンセントが出資
2017-07-27 インドの配車アプリ大手オラ(ANI Technologies Pvt. Ltd)とテンセント、4億米ドルの出資協議
2017-07-27 インドの教育ベンチャー企業BYJU’sがテンセントから出資受け入れ
2017-07-05 インドネシア配車アプリ大手ゴジェックにテンセントが1億米ドル超出資か
2017-07-03 テンセント、TCLマルチメディアのスマートテレビ事業に資本参加
2017-06-07 スカイワース傘下企業にテンセントが3億元を出資
2017-06-19 中国シェア自転車大手「摩拝単車(モバイク)」にテンセントが6億米ドルの融資を主導
2017-06-21 北京掌趣科技の株式2%をテンセントが取得
2017-06-01 中国のオンライン学習サイト「猿輔導」にテンセントが追加出資
2017-05-25 テンセント子会社スーパーセル、英ゲーム会社スペースエイプの株式62%を5000万ユーロで購入
2017-05-12 米ゲーム開発会社ポケットジェムズにテンセントが9000万米ドル追加出資
2017-04-24 テンセント、キングソフトのゲーム子会社Seasun Holdings Limited(西山居)に9.9%出資へ
2017-04-05 VFX大手プライム・フォーカスへの出資をテンセントと協議か
2017-03-24 テンセント、中国の動画ストリーミングアプリ快手(Kuaishou)に投資
いかがでしょうか?
個人的には、前半の方の案件はネット、ゲーム、エンタメ系ばかりで、テンセントの本業との関連もあり特に違和感はないのですが、年後半のJDと万達などへの出資は意外でした。O2Oビジネスに関しては、JD、万達ともに以前から取引があるのでその流れでの出資というのもあるのでしょうが、それにしてもここ三か月ほどの動きは金額が大きいです。海瀾之家、永輝超市、VIPSHOP、JD、カルフール、歩歩高など小売りへの投資額をまとめれば6000億~8000億程度でしょうか?これは本気で
Alibabaを追い落とす
つもりで囲い込みを始めているように見えます。もしそうであるなら、Alibabaは大変です。いわゆる、喰われる側の企業になってしまいます。
ただ、これらの囲い込みにはテンセント側も相当のカネがかかっていますから、投下資本に対する利益としてみたら、果たしてどうなのだろう?と感じます。シェア自転車事業のモバイク vs Ofoの消耗戦のようになる可能性すらあります。
(ちなみに、チャイナユニコムへの投資にもちょっと首をかしげたくなります。これは本業とはやや離れていますし、投下資本の回収でみても時間がかかりそうです。チャイナユニコムへの投資に関しては、中央政府からの圧力があったのではないかと勘ぐりたくなります。)
そんなわけで、個人的には今後のテンセントのEBIT成長率は2017年上期までよりも落ちるとみています。Wechatという魔法の杖を使って出資先企業の業績を引き上げて出資分に応じたインカムを得る・・・そういった錬金術に軸足を移していくようにみえます。それはつまり、かつてアメリカの投資銀行がやってきたことですが・・・そうやってコングロマリット化した企業は、当然
コングロマリットディスカウント
を受けることになります。三井物産や三菱商事などの日本の商社株、電機メーカーで言えばソニー、重電でいえばGEや日立なんかはいい例ですね。事業が分散していて、そのぶん評価が低くなるってあれです。PER10倍割れがあたりまえ、みたいに言われてしまうアレです。
いずれかの時点で、テンセントもそういったコングロマリットディスカウントされる時期がきます。いまはO2Oビジネスが本業のネットなどと相乗効果を発揮していると見られているから大丈夫ですが、本格的にAlibabaと消耗戦に入るなどして収益性に黄色信号が灯ったら、とたんにコングロマリットディスカウントが思い出されることになるはずです。その時は、現状の高PERは正当性を失うことになります。PER40倍からPER8倍へ落ちるなら、1/5になってしまうということです。
それは、GEなどでもそうでした。人気の時にはピカピカに輝いていた人気企業でしたが、今ではご覧の体たらくです。
テンセントがGEのようになるとは言いませんが、頭の片隅にそういったリスクへの心構えを入れておいても悪くはないはずです。
by中卒くん