トランプ大統領が在韓米軍撤退を計画か?~議会は『米韓同盟支援法案』を提出して阻止する構え

トランプ大統領が在韓米軍撤退を計画か?~議会は「米韓同盟支援法案」を提出して阻止する構え

 

韓国から米軍撤退か?議会は『米韓同盟支援法案』の提出で阻止へ

トランプ大統領は2月中旬に北朝鮮の金正恩と2回目の米朝首脳会談を行う予定になっています。

このなかで北朝鮮側の非核化を引き出すために在韓米軍の撤退をディール材料にするのではないか?という懸念が一部に広がっています。

米下院議員は超党派でこれを警戒。

『米韓同盟支援法案』を提出し、在韓米軍の撤退を阻止する構えです。

 

 

『米韓同盟支援法案』の中身

『米韓同盟支援法案』の中身は以下のようなものだそうです。(産経2019年1月31日付など各種新聞ソース)

  • 現在 約25000人いる在韓米軍を22000人以下に縮小するための2019会計年度の国防予算利用を禁止
  • ただし、北朝鮮が「検証可能かつ不可逆的な非核化」を実現したことを国防長官と統合参謀本部議長が上下両院外交委員会と軍事委員会に証明したらならば、予算執行を許可。

 

つまり、ぜったいに撤退を禁じるというものではなく、条件付きで禁じる、むしろうまくディールが進むなら撤退にもGOサインを出すような内容になっています。

 

 

 

在韓米軍負担問題により現実味を帯びる撤退論

現在、米国と韓国とは在韓米軍の駐留費用負担を巡って交渉が行き詰まっています。

昨年末に両国の防衛費分担金協定は期限切れとなったのですが、トランプ大統領はこれを機に2倍の負担を韓国に要求。

これを文在寅政権が拒み、交渉が頓挫しています。

トランプ大統領としては、選挙戦のころから在韓米軍の撤退を口にしてきましたから、ある意味では在韓米軍撤退は選挙公約のようなものです。

基本的にトランプ大統領は海外のことは放っておいて、アメリカはアメリカのことだけを考えるべきという考え方であり、海外派兵からの撤退のひとつとして、韓国からの撤退を考えている部分があります。

在韓米軍の駐留経費問題で交渉がまとまらないことを理由に、在韓米軍の一部を撤退させるのではないか?という懸念は多方面で高まっています。

 

 

在韓米軍駐留経費問題の交渉経緯

  • 韓国には現在、20以上の拠点に約28500人の在韓米軍が駐留
  • 韓国側はこの負担経費として8億5500万ドルの駐留経費を負担
  • これまで5年周期で契約更新されてきたが、今回は米国側が韓国側負担増加を主張して更新されず、昨年末に失効
  • 新たな協議期限は4月15日
  • アメリカは当初16億ドルを要求、その後12億ドルに引き下げたが、韓国側は拒否
  • 米国側は12億ドルに下げるなら1年間契約にすると提示

 

と、こんな感じだそうです。(Bloomberg他各種メディアより)

 

 

在韓米軍撤退に反対しない文在寅政権?

基本的に、文在寅政権は左派政権です。

ガチガチの左派政権であり、北朝鮮に融和的なのは皆が知るとおり。

はたから見たら絵空事にみえる南北の平和的統一すらも、この人たちにとっては現実です。

とりあえず、在韓米軍撤退を米国側に強く求めることはないでしょうが、米国側が在韓米軍撤退を推し進めたいというのなら、強く反対することはないでしょう。

むしろ、内心では喜んでいる可能性すらあります。

 

そもそも朝鮮戦争休戦協定では米軍撤退が前提だった

そもそもの話ですが、朝鮮戦争休戦協定では、

「南北朝鮮の関係各国政府に対し、休戦協定が署名され発効してから3ヶ月以内に、朝鮮半島からのあらゆる外国軍の撤退問題および朝鮮問題の平和的解決などを交渉によりそれぞれ解決すべく、それぞれに任命された代表による双方間のよりハイレベルの政治会談を開催するように」(協定第60節)

とされています。(Wikipedia)

外国軍の撤退は休戦協定の前提となっており、これに従って北朝鮮から中国軍は撤退しました。

ところが、米国は休戦協定を受けた後もあれこれ理由をつけてこれを無視、いまに至るまでずっと韓国に駐留し続けています。

さらには、休戦協定の第13節(d)で新規武器の配備を禁止されているにもかかわらず、ラドフォード統合参謀本部議長およびアイゼンハワー大統領は核武装したMGR-1オネストジョン対地ロケットとM65 280㎜カノン砲、MGM-1マタドール地対地巡航ミサイルを配備。

在韓米軍の核武装化を進めます。

 

 

 

トランプ大統領は韓国だけでなく世界中から撤退したい~『米韓同盟支援法案』では防げそうにない流れ

ぶっちゃけた話、上記の経緯を踏まえて理屈で考えれば、悪いのはアメリカの方だったりします。

国連主導で和平協議が行われて、中国とソ連は手を引いたのに、アメリカは韓国から手を引かなかった。

そこがすべての発端でした。

トランプ大統領はこのことをわかっているのかわかっていないのかわかりませんが、とりあえず韓国から撤退したいようです。

これは先日、アフガニスタンから米軍が撤退するといったことや、シリアからの撤退を表明したことなどからも見えます。

トランプ大統領は、海外派兵を続けるだけの余裕がアメリカになくなっていることをわかっています。

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とりあえず、この方向は日本にも影響してきます。

間違いなく、日本にも米軍駐留経費の負担増額をもとめてくるでしょう。

撤退論なども出るかもしれません。

これをうまく利用できるかどうかは、日本側の力量です。

とりあえず、横田基地の日本への返還を求めてほしいと思います。

以上。