【質問箱】景気後退懸念の要因はなにか?

【質問箱】景気後退懸念の要因はなにか?

 

質問箱に以下のような質問をいただきました。

https://twitter.com/chu_sotu/status/1108753941225828352

 

「ここもとの景気後退懸念には、米中貿易戦争の影響が出ているのではないのか?」

 

という質問です。

いつも質問箱のご利用ありがとうございます。

この質問はたぶん、自分が書いたこちらの記事

19/3/20~6~ASワトソン、テンセントが出資へ?/LIXIL潮田洋一郎の退任を求める外資大株主/ボルトン、北朝鮮との交渉に中国の出席を暗に求める/米中貿易協議、中国側が積極的でなくなる

のなかの以下の部分

中国が通商協議で積極姿勢を後退、米当局者が懸念
中国政府側が米国への過度の譲歩に対して慎重になっているもよう。(中略)お互いの経済に大きなダメージが及びそうなことがみえてきており、本音では妥協はしたいところだけれど、最後の最後のディールが続く。ぶっちゃけ、ずっと交渉していても、お互いそんなに問題は無かったりするわけで。(笑)

 

これについて質問されたものだと思われます。(違いますかね?)

とりあえず、この件について書いておきます。

 

 

 

いま起きている景気後退懸念は、景気循環が最大要因

とりあえず、いま起きている景気後退懸念っていうのは、あくまでも景気循環が一番根っこにあると思っています。

これは昨年のいまくらいの時期に書いた記事ですが

世界経済に急減速の兆しあり

こちらは昨年3月1日に書いた記事です。

記事のタイトルのまんまです。

当時から経済統計が悪化しつつあり、非常によろしくない雰囲気が漂っていました。

株価は強く推移していましたが、実体経済は悪化しつつあることが見えていました。

多くの人は実数をみるのでしょうが、自分はどちらかというと、モメンタムを見ます。

多くの人がモメンタムを見ていると思ったら、それよりさらに前の変化をみるようにします。

そうやって常に前倒し前倒しで予想を組み立てていますが、そうした組み立てでみてみて、このタイミングで株価が崩れる可能性があるのではないか、とみていました。

実際には米国の株価はその後、堅調に推移しました。

しかし、日本株や欧州株、中国株などはやはり、このあたりのタイミングで完全に下向きトレンドを確認するに至っています。

 

なお、この記事を書いた時点ではまったく米中貿易戦争の話なんて出ていません。

米中貿易戦争の話題が始まったのは3月23日あたりですから。

世界は陰謀でまわってるぅ~~米中貿易戦争~~ 3月24日の記事です。

 

また、その後にも鉱工業生産をもとに以下の記事を書いています。

18/5/31午後 4月鉱工業生産速報 電子デバイス中心に年後半にも景気後退突入の兆し

この時点で、しっかりと電デバの崩壊がみえています。

自分ですら予想できているんですから、たぶん他の多くの市場参加者も理解できていたはずです。

 

 

根っこにあるのは景気後退懸念、それに加えて中国のデレバレッジ、さらに米中貿易戦争と金融引き締め方針

つまるところ、自分は今回の景気後退懸念の根底にあるのは、米中貿易戦争ではないと思っています。

根底にあるのはあくまでも景気循環です。

在庫循環と設備投資循環です。

これらがピークを打ったそのタイミングで、中国が何をトチ狂ったのか、デレバレッジを始めました。

これがよろしくなかった。

中国経済に下押し圧力になりました。

2018年1-5月中国固定資産投資 デレバレッジの動き始まったか?

デレバレッジ開始か?中国開発銀行がスラム街再開発計画向け融資を停止 

デレバレッジの流れ自体は2017年暮れあたりから出ていましたが、大きく影響が見え始めたのが年央くらいです。

この中国が政策ミスをおかしたタイミングで、それを見計らったかのように、米国は中国に貿易戦争をしかけました。

米国が、中国の巨大化を懸念しているのがチラッとみえた瞬間でした。

当初、多くの人は(メディアも)、今ほど米中貿易戦争を懸念していませんでした。

今でこそこんなに騒がれていて、背景に覇権争いがある、と解説されますが、当時はそういった論調がほとんどありませんでした。

大方は「経済に悪影響のあることはしないはず」という見方でした。(これは過去の新聞記事などを見返してみればわかります。)

 

 

 

もちろん、米中貿易戦争の影響がまったくないとは言いません。

ただ、それだけが理由だと思っていると、大きな間違いに繋がると思います。

昨今では、米中貿易戦争が解決方向になるから買いだ!という声が聞こえます。

でも実際には、シクリカルのボトムが見えてきたから買い!という人が多いんじゃないかと思います。

大きな資金を動かす方たちは、とくにマクロ経済の動向をみます。

たぶん、そういう見方で動いているんじゃないかと思っています。

 

 

というわけで、当面の問題はシクリカルのボトムが本当にみえたのかどうかじゃないかと思っています。

ここへの見通しが揺らぐ方が、米中貿易戦争への見通しが揺らぐことよりも影響が大きいはずです。

今のところ、ボトムは見えてきた、というのがコンセンサスです。

確かに見えてきていると思います。

ただ、多くの人が同じ方向を向いているからこそ、慎重になった方がいいと自分は思っています。

タイミング的には、次の悲観のタイミングが一番おいしいはず、と思っています。

以上です。