コンゴ民主共和国フェリックス・チセケディ大統領が就任
コバルト資源の安定供給を優先し、選挙不正に目を瞑る国際社会~フェリックス・チセケディ氏がコンゴ民主共和国大統領に就任
昨年末から揉めていたコンゴ民主共和国の大統領選挙ですが、マルタン・ファユル候補による異議申し立てを憲法裁判所が却下したことにより、フェリックス・チセケディ氏の大統領職就任が確定しました。
コンゴ民主共和国では長らくジョゼフ・カビラ大統領による独裁が継続。
任期を大幅に超えたあとも民主的な選挙が行われない状態になっており、国民に不満が高まっていました。
コンゴ民主共和国の大統領選挙が延期~ジョゼフ・カビラ大統領後任のエマニュエル・ラマザニ元内相が優勢も事態は流動的~
フェリックス・チセケディとエマニュエル・ラマザニ、マルタン・ファユルによるみつどもえのコンゴ民主共和国大統領選挙
昨年になり、ジョゼフ・カビラ大統領はようやく民主的な選挙を行うことを表明。
自身の後任にエマニュエル・ラマザニ内相を据えたいと考え、選挙戦を行ってきました。
しかし、長年の独裁による国民の支持離れは著しく、野党候補二人、マルタン・ファユル(Martin Fayulu)とフェリックス・チセケディ(Felix Tshisekedi)に支持が流れる展開に。
これをみて、ジョゼフ・カビラ大統領は野党候補のうち一人、フェリックス・チセケディに近づき、支援の申し出と政治取引をしたと伝えられています。
フェリックス・チセケディの大統領職就任に反対するマルタン・ファユル氏とカトリック教会
このあからさまなカビラ大統領の政治生命維持に反対したのがマルタン・ファユル氏
マルタン・ファユル氏の支持母体は国内カトリック教会と言われており、同団体が独自集計した数字によればファユル氏が過半数の票を獲得しているとしてフェリックス・チセケディに反旗を翻しています。
なお、コンゴ民主共和国のカトリック教会は近年の反政府活動の中心的存在になってきており、ここもと特に三年間程度、カビラ大統領の早期退陣の旗振り役になってきた団体です。
今回、カトリック教会の推すマルタン・ファユル氏が大統領になれなかったことで、同団体が中心となって今後も反政府運動をする可能性があります。
そして、カビラ前大統領がやったように、カトリック団体に対してフェリックス・チセケディ大統領も弾圧する方向になるかもしれません。
もしそうなれば、コンゴ民主共和国のカトリック団体のバックに隠れているベルギーの影響が炙り出されることになるでしょうし、欧州を巻き込む流れになるかもしれません。
国際社会はフェリックス・チセケディ氏の大統領就任を遠巻きに眺める状況
しかし、現在のところ、国際社会はどの国も様子見を決めています。
とりあえずフェリックス・チセケディ氏に大統領を任せてみよう、という感じです。
コンゴ民主共和国は世界のコバルト生産の6割超のシェアを握る国ですから、ここで大きなトラブルがおきては困る、ということでしょう。
【統計】コバルト生産量と埋蔵量~DRC(コンゴ民主共和国)が世界生産の約2/3シェア【グラフ】
ただ、かといって積極的にフェリックス・チセケディ氏の大統領就任を認めるものでもなさそうです。
ベルギーを含めEUは「疑いが残っている」として慎重姿勢を示しており、ローマ・カトリック教会も結果を受け入れない方針のよう。(AFP)
南部アフリカ開発共同体(SADC)とケニアは祝意をしめしていますが、就任演説に出席した首脳はケニアだけでした。
国際社会は、いまのところただ傍観することに徹しています。
【コバルト】カタンガ・マイニング(Katanga Mining)~カモト鉱山、KOV鉱山を運営
コバルトのロイヤリティ料率を約3倍に引き上げ~コンゴ民主共和国~
なお、コンゴ民主共和国の問題は、根本的には民族問題だと思われます。
細かい民族集団、地縁集団が戦いあっている構図。
それが解決されることはどの大統領でも無理、と諦めているようなところがあります。
世界は、そういった混乱よりも、何事も起きないことを望んでいるようにもみえます。
以上。
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