コンゴ民主共和国の大統領選挙~ジョゼフ・カビラ大統領後任のエマニュエル・ラマザニ元内相優勢~
コンゴ民主共和国の大統領選挙が延期で暴動発生、死者多数
コンゴ民主共和国の大統領選挙が延期になり、暴動発生で死者が多数出ています。
DR Congo presidential election postponed for a week
Congo election suspicions swirl after blaze leads to fresh delay
任期を二年過ぎても大統領選をしなかったコンゴ民主共和国のジョゼフ・カビラ大統領が退任
今回の大統領選は、じつはスケジュール通りであれば2016年に行われているべきものでした。
2005年に大統領に就任し、2011年に再選されたジョゼフ・カビラ大統領の任期は、本来であれば2016年12月19日まで。
ところがそれを過ぎても退任せず、ずっと大統領職に居座ってきたのがこれまでの経緯です。
コンゴ民主共和国の憲法によれば、連続二期までしか大統領職を続けられないため、忠実な部下が大統領を引き継いでくれる状況になるまで、大統領選挙を延期してきたというのが、これまでの経緯となります。
ロシアのプーチンがメドベージェフを使ったようなやり方です。
ようやくコンゴ民主共和国大統領選挙実施。ジョゼフ・カビラ大統領は後任にエマニュエル・ラマザニ元内相を指名
ようやく二年経過し、大統領選挙が実施されることになったコンゴ民主共和国。
ジョゼフ・カビラ大統領は、後任の大統領にエマニュエル・ラマザニ元内相を指名。
ジョゼフ・カビラ大統領は選挙には出馬せず、ラマザニ氏が大統領になったあとに首相に就任する・・・そして2023年の大統領選で大統領に返り咲こうという考えのようです。
しかしどうやら、そう簡単に思惑通りに進まない事態になりそうで・・・
コンゴ民主共和国大統領選支持率第一位はフェリックス・チセケディ氏、エマニュエル・ラマザニ氏は二位か?
世論調査によると、ジョゼフ・カビラ大統領が指示するエマニュエル・ラマザニ元内相は支持率2位。
1位は野党のフェリックス・チセケディ氏となっており、ジョゼフ・カビラ大統領の思惑通りにいかない展開となっているようです。
これを察してか何者かによる投票所への襲撃が多発。
治安が維持されるまで大統領選が開けないとして、今回の延期に至りました。
貧富の格差が進むコンゴ民主共和国、ジョゼフ・カビラ大統領の治世下で富裕層によるコバルト鉱山資源の支配が進む
コンゴ民主共和国は、近年非常に注目を浴びる国になっています。
というのもEV(電気自動車)で多用されるコバルト資源の供給量で、コンゴ民主共和国は世界1位、しかもシェアは過半だからです。
【統計】コバルト生産量と埋蔵量~DRC(コンゴ民主共和国)が世界生産の約2/3シェア【グラフ】
このコバルト資源を巡って活発に外交と産業政策を行っているのが中国です。
中国は自国のEVメーカー、電池メーカー、資源開発企業総がかりでサプライチェーンを構築しており、政府がそれを後押しする形で、コンゴ民主共和国に積極的な投資を行ってきました。
コンゴ民主共和国は、少年兵の問題、児童労働による採掘など多くの人権問題を抱えており、欧米企業はESGなどの観点から撤退の動きが相次いでおり、そこを中国が縫うように投資の網を広げてきたのがここ数年の動きです。
コンゴ民主共和国DRCのコバルト生産~少年兵と鉱山における児童労働
その恩恵を受けてきたのが現政権なのは、いうまでもありません。
貧富の格差拡大、エボラ出血熱の蔓延でジョゼフ・カビラ大統領率いる政権与党には逆風
コンゴ民主共和国ではエボラ出血熱が流行り始めています。
18/5/28午後 コンゴ民主共和国DRCでエボラ蔓延、コバルト生産に影響は?
また、一部の権力者が鉱山資源の利益に与る一方で、ほとんどの国民はその恩恵に浴しておらず、不平が広がっていると言われています。
ここに欧米や周辺国の思惑が入り乱れ、政権側を支持する中国なども介入しており、このままいくと内戦の危機に向かいかねない事態となっています。
そもそも暗殺の歴史だったコンゴ民主共和国の大統領
そもそも、コンゴ民主共和国の首相・大統領が暗殺・亡命以外で交代したことは、独立の1960年から一度もありません。
1960年にベルギーからの独立した後、首相に就任したルムンバ首相は1961年には暗殺されます。
その後の混乱を経て1965年に就任したモブツ大統領も1997年に亡命。
その後を引き継いだLカビラ大統領は2001年に暗殺され
そしてジョゼフ・カビラ大統領が2001年から今に至る政権を維持しているわけです。
こんな政情不安な国に、リチウムイオン電池の重要資源が大量に眠っているというのが現実です。
世界は、この大統領選の行方を見守っています。