以下は単なるコラムです。
ニュースまとめ記事に書くには長すぎる個人的見解をこちらに書いています。
おカネに直結する話ではありませんから、興味のない方はいますぐ飛ばしてください。
WLTP基準を不正操作 今度は意図的に燃費を悪くみせることで、2020年からの燃費基準強化に備える動きか
欧州の自動車メーカーが、また派手に不正行為をやらかしたようです。
Financial Timesが伝えています。
EU finds evidence carmakers are manipulating results
つまり、こういうことです。
欧州では2018年秋からWLTP基準による燃費試験が義務化されます。
これまで各国で燃費計測方法がバラバラだったものをひとつの基準に纏めましょうということで始まったWLTPでしたが、国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラムWP29で纏められた基準は、各国の厳しい部分を寄せ集めた、いわば自動車メーカー泣かせのものになりました。
(WLTP=Worldwide harmonized Light vehicles Procedure)
WLTP基準による測定の結果得られたスペックはWLTCと言われますが、これは今までの試験に比べて実際に利用される環境下での燃費性能が反映されやすく、より現実的な数字になるといわれています。
(WLTC=Worldwide harmonized Light vehicles Test Cycles)
つまり、旧来の基準・・・たとえば日本であればJC08だとか、欧州であればNEDCですが、こういった基準で測るよりも数値が悪く出てしまいがちだ、と言われてきました。
(NEDC=New European Driving Cycle)
実際に同じ車種をNEDC基準で燃費測定した場合と、WLTP基準に合わせて燃費測定した場合にはWLTP基準の方が圧倒的に燃費が悪く表示される
・・・と言われてきました。
どうやらこれは、トリックがあったようなのです。
というのも、欧州はこのWLTPへの試験移行を済ませたのち、この基準で得られた燃費データをもとに、2021年からはいよいよ本丸の燃費削減目標設定に踏み切るからなのです。
先ほどの記事にも書かれていますとおり、ブリュッセルのお偉方は、2020年から2025年のあいだに15パーセントの燃費改善、さらに2025年から2030年までに30パーセントの燃費改善を求めているのです。
問題は、これが 「2020年時点と比べて」 ということ。
つまり、この時点の数字が高ければ、あとの燃費改善をアピールしやすくなるわけです。
で、今回問題になっているのはまさにそういうこと。
WLTP基準で測った燃費が意図的に悪くなるように誤魔化されている
ということなのです。
具体的には、
- (ハイブリッド車などで?)消耗しきったバッテリーを利用することで、無駄にエンジンをまわさせたり
- アイドリングストップ機構をわざと停止しておいたり
- わざと燃費が悪くなるギア比で運転したり
こうやってわざと燃費が悪くなるように計測することで、2020年以降にゲタを履かせた状態で燃費改善競争をスタートできるようにしていた自動車メーカーがあった・・・
ということなのです。
ちなみに、本格的にEU基準に沿った燃費改善をするためにはEV化比率を高めなければならないと言われています。
当然、EV化を進めれば現状のガソリン車用とは別にEV用のラインを新設しなければなりません。
高額なリチウムイオンバッテリーを大量に調達したりしなければなりません。
ありとあらゆる部分ですごくコストが嵩みます。
一部の自動車メーカーは、そういったことを嫌がったのかもしれません。
正々堂々と戦うのではなく、ズルをすることで逃げようとしたようです。
いっぽうで、今までのNEDC基準の方は燃費がよく見えるように操作されていましたから、やり口は違うけれど、結局意図的に数字を動かそうという意思は健在ということのようです。
ちなみに、
今回WLTCを意図的に高く出るように誤魔化したメーカー名は明らかにされていません。
きっと欧州系のメーカーなんでしょう。これがもし日本車などであれば、すぐに公表してブランド価値を落とそうとアピールをしまくると思います。
欧州の連中はそういうズルいところがあります。
なお、今回の件を受けて、欧州委員会当局は自動車メーカーが計測したデータを利用するのでなく、実際に測定されたデータが利用されるようにしたらいいと提案しています。また
WLTP規制の改正なども考えたらいいと言っています。
要するに、自分たち欧州拠点の自動車メーカーがクリアできず、外国企業だけがクリアできるようなものはルールごと変えてしまった方がいいんじゃね?
みたいな論調にみえます。
欧州委員会当局としても、無駄に自国自動車メーカーを疲弊させるのは得策でないとみて、より軟派な代替案を出してくる可能性があります。
ここらへんは、冬季オリンピックでジャンプ競技やバイアスロンの採点基準がコロコロ変化するのに似ています。フィンランドとかノルウェーとかの連中は、自国の選手に有利なように、アジアの選手に不利になるようにいつもルールを変更します。
それと同じようなことが行われようとしています。
まぁ、欧州の中も一枚岩ではなく、環境保護団体の意識がかなり高いですから、EV化の流れに反するような方針は通らないかもしれません。
とりあえず、まだ実際の施行までには時間がありますから、今後も紆余曲折がありそうです。
日本メーカーも含め、しっかりと状況の推移をみていくと面白いと思います。
以上です。