ナトリウムイオン電池時代の到来と日本経済のゆくえ

ナトリウムイオン電池時代の到来と日本経済のゆくえ

 

ナトリウムイオン電池がいよいよ車載向けに実用化へ

二次電池における次世代の注目の的であるナトリウムイオン電池(NIB)ですが、いよいよ車載向けにも実用化段階に入ったとのことです。

 

CATLのナトリウムイオン電池、世界で初めて量産EVに搭載へ

中国CATL(寧徳時代新能源科技)は2023年4月16日23時15分(現地時間)、同社のナトリウムイオン2次電池(NIB)が、中国の自動車メーカーChery Automobile(奇瑞汽車)の電気自動車(EV)に採用されたとツイッターで公表した

 

BYD to launch electric hatchbacks with new Sodium-ion batteries

The BYD sodium-ion batteries are to be tested in December 2022 with an expected launch of the BYD Seagull in the second quarter of 2023.

 

発表したのは中国の二次電池メーカーであるCATLとBYD

どちらもEV向け二次電池ではシェア上位。

 

両社によるナトリウムイオン電池の開発自体は古く、昨年春頃には量産化の発表がされていました。

今回、それがいよいよ量産車に搭載され、実用化するという流れになります。

 

実用化されることで、その真の実力がみえてくることになるわけです。

 

ナトリウムイオン電池の優位性

とりあえず、ナトリウムイオン電池のスペック上の優位性について簡単にまとめると

 

電解液、正負極材ふくめ希少なものはなく、安定供給が可能。(クラーク数の観点から当然。地理的な偏りも小さいため地政学的にも安定)

当然のようにバッテリーユニットの価格を下げやすく、最終的には同容量のLiB比で1/6の価格になるだろうとの予測も。

通常使用で発火・爆発などの心配がほぼないため、LiBに比べて設計の自由度が向上。

発熱に強いため急速充電性能が優秀(5Cレート以上とのこと)

充放電サイクル数が大きく寿命が長い。

動作温度範囲は広く、寒冷地での利用も可能。(マイナス20度でも容量維持率90%弱。LFPBはここが弱点)

 

といったところでしょうか。

 

自由電子数の質量数比から当然、重量エネルギー密度はLiB比で低いものの、設計の自由度の高さを活かして体積エネルギー密度を高めているもよう。

走行可能距離の差はまぁまぁ無視できる水準になっています。

 

 

ナトリウムイオン電池産業にほとんど参加できていない日本企業

このように、ポジティブな面が多いナトリウムイオン電池ですが、この産業のサプライチェーンに日本企業はほとんど参加できていないもよう。

 

ナトリウムイオン電池時代幕開け、関連メーカーが50社超で価格はLIBの1/2へ(日経クロステック)

上記記事には「NIBを既に発売した、もしくは量産計画を持つ主なメーカー」と「NIBの主な材料/部材メーカー」の一覧表が載っていますが、そのどちらにも、日本企業の名前はほぼ無し。

 

かろうじて、電解液でセントラル硝子、負極材でクラレの名前がみてとれますが、その他の企業はほとんどが中国企業です。

それも、数年前なら聞いたことも見たこともないような郷鎮企業的な新興メーカーだらけ。

たぶん情実融資などで引っ張ってきたのだろうカネを使って大規模投資をしている。

 

それだけでなく、風力発電やソーラーパネル事業などを手掛ける企業も、本業で浮いたカネを使って投資も行っている。

いつもの中国らしく、儲かりそうとなれば大量の資金が集まって、雨後の筍の如くにポコポコと企業が作られて、そのうちで生き残った企業が総取りするやりかた。

 

これを日本の社会は否定的に捉えがちですが、そもそもアメリカのテック系企業も同じやり方で新陳代謝を繰り返してきているわけで。

これこそが世界の常識的な営みであるはず。(まぁ、中国と米国では資金源には違いがありますが)

 

ナトリウムイオン電池の普及は、日本経済にも影響か

とりあえず、他の方も言及していますが、ナトリウムイオン電池が本格的に実用化されていくからといって、リチウムイオン電池がまったくなくなるというわけではないはず。

二次電池市場は爆発的に拡大するタイミングに入っているわけで、LiBも当然にその拡大の恩恵を受けるはず。

高電圧を必要とする分野などではナトリウムイオン電池の入り込む余地は当分ないでしょうし、高級車市場も三元系LiBが中心なんでしょう。

 

ただ、ナトリウムイオン電池は安価で必要十分かつメリットも多い。

この普及は、リチウムイオン電池が今まで担っていくと見做されていた市場を喰うはずなわけで。

当然にリチウムイオン電池の需給、価格にも影響してくるんじゃないかと自分は考えます。

 

また、日本の自動車メーカーは

「じゃあリチウムイオン電池をやめてナトリウムイオン電池を採用しよう」

とは、なかなかスムーズにはやりにくい。

トヨタ自動車などはパナソニックと提携していますし、その取りまとめをしたのは経産省や経団連などのムラの繋がりによる信義則でしょう。

それを一気に壊して、自社の利益だけを突き詰めていけるほど、日本の企業経営はドライではない。

「企業経営にはスピード感が大切」とは口で言うものの、現実的にはそれができないのが日本社会ってもののはず。

 

そうこうしているうちに、世界はどんどんEV化へ。

バッテリーの価格が1/6になるなら、100万円台後半の小型車EVが登場する未来もそう遠くない。

中国はどんどんと新しい技術を開発し、産業構造も集積化し、量産により低コスト化が進み、日本車が得意としてきた世界中の自動車市場を次から次へと奪っていく。

 

西側諸国(日本、欧州、アメリカ)は中国からの安価なEV輸入を制限するかもしれないけれど、新興国などではもろにバッティングしてしまう。

自動車産業を基幹にした日本の産業構造も壊れ、関連企業の信用市場を通じて金融機関の経営にも影響。

労働市場を通じては家計・消費に、甚大な影響が及んでいく・・・

 

そんな未来がみえるようです。

 

日本企業は中国ナトリウムイオン電池市場から締め出されるかも

日本企業の立場がさらに悪いのは、アメリカ主導の対中輸出制限に、これまで日本が安易に協同してきてしまったことにあると思います。

「サプライチェーンを日本に頼ると、いざというときアメリカ主導で輸出制限されるかもしれない」

という警戒感から、日本企業と取引をしたがらない中国企業が多くなるんじゃないかとみていあmす。

その結果、中国国内でナトリウムイオン電池市場が完結してしまい、日本企業はなかなかこの市場に入り込めない・・・

最初のうちは素材でハブられ、そのうちに資本財でもハブられ…

 

そんな未来がやってくるんじゃないかと、自分は考えています。

 

ナトリウムイオン電池の開発に遅れた日本

東京理科大、岡山大学など大学レベルでは日本も色々とナトリウムイオン電池の研究をしていたようです。

しかし、産業レベル、企業レベルではNIBを本格採用しようという動きが今までほとんど見られなかった。

それは多分に、自動車業界トップ、そして日本の産業界トップに位置するトヨタ自動車が、そもそも電動化そのものに軸足を置くのが遅れたことが影響しているのではないかと、自分は考えています。

 

とりあえず、トヨタ自動車の豊田章男前社長。

彼が内燃機関に拘泥しているうちに、世界はどんどんEV化を進め、その産業の中心地が中国になってしまった。

 

「僕はガソリン臭いクルマが好き」 2019年・豊田章男氏の“本音”にみる自動車メーカーの理想と現実、EV礼賛社会で考える

ここである人物の言葉を紹介したい。既にご存じの人も多いと思われる「モリゾウ」こと豊田章男トヨタ自動車会長が社長時代(2019年)に語った一言である。いわく「僕はね、ガソリン臭くてね、燃費が悪くてね、音がいっぱい出る、野性味あふれるクルマが好きなんです」

 

この事実からは、目を背けてはいけないはず。

 

日本の自動車産業において、日本の産業界全体において、日本の経済全体において、誰が戦犯であり、癌でだったのか。

 

いずれ、なんのしがらみもなく、歴史的に検証される日がくるはずです。

さて、その時に豊田章男氏はどのように扱われるか。

 

私には、なんとなく見える気がします。

以上です。

 

※なお、先にも書きましたが、私はtwitterのアカウントが(不当に!)永久凍結されておりますw

なので、この記事を自分でtwitterで拡散することができません!

とゆーわけで、最後まで読んだならちゃんと拡散してねw

誰も反応ないと書く気おきなくなるんで。。。

よろしくお願いしますm(__)m