中国政府が日本の工作機械をダンピング調査しているのは、中国製造2025実現のため
中国政府が日本のファナック、ヤマザキマザック、オークマ、ブラザー工業、ジェイテクトの工作機械をダンピング疑いで調査していると伝えられています。
ほかにも、台湾の工作機械メーカー5社の製品もダンピング疑いをかけられているとのことです。
中国市場は日本企業、台湾企業どちらにとっても非常に重要な市場となっていますから、仮にこれが認定されるとなかなかに困った事態となります。
なお、この件に関しては質問箱にも質問をいただいております。ありがとうございます。
https://twitter.com/chu_sotu/status/1064067222417551360
質問箱の返答にも書きましたが、これは技術移転・もしくは生産拠点移転を狙ったものであると思います。
簡単にいえば、
日本の工作機械に反ダンピング関税をかけることで、中国製造2025の鍵となる技術を手に入れたいのだと思います。
日本の工作機械は非常に高性能です。
とくに切削型の工作機械に関しては世界でもトップレベルのものを作っているとされています。
国別の工作機械製造金額では中国がすでに1位だと思いますが(※1)、品質面でいったら中国はまだまだ、日本のメーカーがダントツで人気です(あとは、個別にドイツ企業も強い分野があります)。
※1ここらへんは精緻なデータがないので何とも言えませんが、金額だけでみたら中国に抜かれているのではないか、と思います。)
ご存知の通り、中国は現在アメリカと米中貿易戦争を繰り広げています。
これの原因のひとつと言われているのは、中国製造2025というイデオロギー色の強い製造業強化策です。
中国製造2025とは?
これについては書くと長ったらしくなるので別枠に回しますが(今度纏めて書くようにします)、とりあえず、簡単にいってしまうと中国製造2025とは、産業の高度化を図る、ということです。
中国は1990年年代までに縫製業や雑貨製造などの軽工業を新興しました。
その後、2000年代になると重工業や石油化学工業などの設備産業を大きく育てました。
2010年代になるとそれらが環境汚染の元として嫌がられ、よりクリーンで、よりハイテクで、より高収益の事業を目指すようになってきました。ちょうどスマホや通信設備のファーウェイなどが大きく勃興してきたのはこのころです。また、テンセントやアリババなどのように第三次産業、情報技術系企業も活発になってきました。
2020年代には、この情報技術を利用して製造業をさらに高度化しようと中国は画策しています。
具体的には、半導体の自前調達(いまはほぼ輸入に頼ってます)、ロボットや工作機械などの内製化です。
それが中国製造2025年の方針です。
中国製造2025の実現に漂う米中貿易戦争の影
中国製造2025の実現は第13期はじめの全人代でも決定されたことですから、非常に重要な意味を持ちます。
ただ、ご存知の通り、中国は現在米中貿易戦争のさなかにあります。
この影響もあって、中国の製造業は全体的に元気がありません。
夏場まではまだマシだった工作機械や産業ロボットの生産も落ちてきています。
直近、10月の鉱工業生産をみますと、金属切削工作機械の生産台数は前年比9.8%減
産業用ロボットの生産は3.3%減少しています。
これに関しては上記に表をまとめてありますのでごらんください。
中国製造2025の実現のため、中国は自国の工作機械業界を優遇したい
中国は自国の工作機械業界を優遇したいのだと思います。
また、技術移転などもしてほしいし、なんだったら中国に工場も作って欲しい。
今回、日本企業の工作機械に反ダンピング関税をかけてきたのは、こうした意図があると思います。
最先端の工作機械の製造技術をなんとかして手に入れ、それを中国製造2025の中核にしよう・・・という考えがあるとおもいます。
なお、2017年度の日本の工作機械メーカーの受注残高は1.8兆円です。
もしこれが中国との競合で敗れてしまうと、日本は世界市場で魅力的なマージンを得て売れるものがなくなります。
なにげないダンピング関税問題だと思っていると大きな問題になります。
日本の産業界全般にとって、非常に厳しい局面にあると思います。
以上です。