中国で医薬品の『帯量採購』方式による集中調達制度を実施
中国の大都市で医薬品の『帯量採購』を実施したところ、価格急低下する薬品が続出
中国の11大都市で試験的に導入された医薬品調達をめぐる新制度が波紋を広げています。
制度導入で急激に薬価の低下する医薬品が続出、全体で約50~60%もの薬価引き下げに成功しており、中央政府および地方政府としては狙い通りといったところですが、医薬品メーカーにとっては死活問題となってきています。
株価も大きく影響しており、今後の行方には注意が必要な状況です。
今回はこの『帯量採購』方式による医薬品集中調達制度についてみていきたいと思います。
『帯量採購』方式による医薬品集中調達制度とは
『帯量採購』方式による医薬品集中調達制度は、まず医薬品ごとに販売したいメーカーを募集します。
次に、メーカーから提供されたサンプルの品質と効能が水準に達しているかを担当当局がチェック。
そのうえで、基準に達したメーカーに対して入札制度で競わせる形で薬価を決めさせる、というものです。
『帯量採購』方式による医薬品調達でなんと9割も薬価下落するものも
なんと、国家医療保険庁が導入した『帯量採購』方式による医薬品集中調達制度によって薬価が9割も下がるものが出てきているとのことです。
B型肝炎治療薬であるエンテカビルは90%安、高血圧治療薬であるイルベサルタンが60%安になったということです。
また、平均すると(個人的な見立てでは)50~70%程度の薬価引き下げになりそう、と思います。
『帯量採購』方式による医薬品の集中調達制度は11の大都市から順次展開
この制度は4つの直轄市(北京、天津、上海、重慶)と、7つの地方大都市(広州、深セン、アモイ、成都、西安、瀋陽、大連)から始まりました。
これらの都市では中国で使用される薬品の3~5割程度の消費が行われているとのことです。
今後、『帯量採購』方式による医薬品集中調達制度はさらに10の都市に展開、さらに二線、三線級都市にも広げていく模様です。
『帯量採購』方式による医薬品の集中調達制度により、Sino Biopharm株が暴落
夏ころまで米中貿易戦争の影響を受けない銘柄としてディフェンシブ性を期待されて売買されていた中国の医薬品銘柄でしたが、ここにきて急落するものが目立ってきています。
Sino Biopharm (1177.HK)は6月高値からほぼ1/3程度にまで下落。
CSPC Pharmaceutical Group Ltd, 石薬集団 (1093.HK)も半値以下に落ち込んでいます。
『帯量採購』方式による医薬品の集中調達は創薬系にとってはポジティブだが、後発薬系にとってはネガティブ
『帯量採購』方式による医薬品の集中調達制度は、競合が多い医薬品ほど薬価が低くなり、そうでない創薬系にとっては利益を稼ぎやすいモデルと言えます。
今後、中国では創薬系に事業をシフトしていく企業が増えていくとみられ、それは政府の意図なのだと思われます。
また、過当競争の回避を目指した合従連衡や、過当競争による倒産と事業売買なども相次ぐと思われます。
中国の医薬品業界は、まさに死に物狂いの争いに突入ということになります。
『帯量採購』方式による医薬品の集中調達制度は中央、地方政府による社会保障コストを低下
『帯量採購』方式による医薬品の集中調達制度によって、国民の負担する薬剤費が低下することが期待されています。
いままでコピー薬、ゾロ薬で暴利をむさぼっていた連中がいなくなることで、国民の生活はよりよくなる・・・というのが中央・地方政府の思惑のようです。
今後、この流れは続きそうに思います。
とりあえず、かなり大きな動きになっている中国の医薬品業界。
要チェックです。
以上。