北方領土(南クリル諸島問題)返還は誰のため?日本国民にはほとんどメリットがない可能性
安倍首相が北方領土(南クリル諸島問題)について以下のように語っています
安倍首相:南クリルに住むロシア人に「出ていってください」という態度では交渉はなりたたないとTV朝日のインタビューに答える Sputnik
アベノミクス、北方領土、日韓関係…安倍総理が単独インタビューで語った”2019年の展望” Abema
ーー北方領土にロシアの方が住んでらっしゃる、この点をどうするかというのが一番難題だと思うんですけど、北方領土の将来像、どういう形を描いているんでしょうか。
今まさに質問されたように、北方四島に住んでおられるみなさんは、全てがロシア人であります。残念ながら旧島民の皆さんはそこに住むことができないという状況になっている。誰も住んでいない島をどうするかということではなくて、ロシア人の皆さんが住んで生活をして、そしてすでに70年たっていますから、代を継いでいる。そういう中における交渉です。このロシア人の皆さんに「あなたたち、出ていってください」という態度では、これはもう最初から交渉は成り立ちません。ここに住んでいるロシア人の方々が日本に帰属が変わるということに納得していただける、受け入れていただく形でなければいけない。
(以下略)
北方領土(南クリル諸島問題)解決のためには現在の住民の処遇が重要との判断
この安倍首相のインタビュー内容からすると、北方領土(南クリル諸島問題)の解決のために、現在のロシア側住民の権利は保護される、ということになろうかと思われます。
戦後70年以上が経過し、そこに住むロシア側住民も二代目、三代目となってきています。
また、日本側の旧島民の子孫も、もはや北方領土(南クリル諸島)とは何の縁もない人が増えています。
そうしたなかで、ロシア側住民を全部追い出して、旧島民の子孫を帰還させることは現実的ではないという判断です。
北方領土問題(南クリル諸島問題)解決は旧島民のため、と日本政府はいうが・・・本当か?
旧島民のために北方領土問題(南クリル問題)解決を、と日本政府は主張してきましたが、今回の安倍首相の発言からすると、これは真っ向から対立する内容です。
日本側に返還されたといっても、施政権(立法、司法、行政の権利)が返還されるというだけであって、旧島民の個人的な請求権や財産権が保護されるわけではない、ということになります。
逆に、現島民および北方領土(南クリル諸島)で事業活動などを営む人々や企業の権利を日本政府は擁護する必要が出てきます。
旧島民には何のメリットもないように思いますが、果たして本当に旧島民のための北方領土(南クリル諸島)問題解決なのでしょうか?
北方領土問題(南クリル諸島問題)解決のあかつきには数兆円単位のインフラコスト、行政コストが発生か?
上記のとおり、北方領土(南クリル諸島)が日本に返還されたとしても、財産権などは日本側住民に渡されないようです。
施政権のみが日本側に返還されるようです。
となれば、そこで発生する治安や消防、社会保障や文教などの行政コストは全部日本側が丸抱えすることになります。
そして、インフラなどの建設にも日本側のカネが投入されるようになるでしょう。
たぶん数兆円単位で必要になるはずですが、それを日本政府はまだ明示していません。
北方領土問題(南クリル諸島問題)解決で潤うのはまず第一に現在のロシア側島民
安倍首相の発言したスキームからすると、北方領土問題(南クリル諸島問題)解決で潤うのは、まず最初に現在のロシア側住民と、そこで活動している事業者たちということになります。
これらの人々は行政を日本側に依存することができるようになるため、今まで受けることのできなかった高度な医療などを日本側の負担で受けることができるようになります。
日本側としては、所得水準が圧倒的に違う人々を国内に抱え込むことになりますし、ロシアとの二重国籍のような人々を呼び込むことになりますので、いろいろと厄介な問題(密輸など)を抱え込むことになります。
北方領土問題(南クリル諸島問題)解決で次に潤うのは、日本の土木業者、とくにマリコンなど
北方領土問題(南クリル諸島問題)解決でロシア側住民の次に潤うのは、日本の土木企業、とくにマリコンの類だと思われます。
港湾整備などにはかなり大規模な投資が必要になるはずで、ここでは五洋建設、青木マリーン、不動テトラ、若築建設、東亜建設などが活躍するでしょう。
あとは道路や行政施設、文教施設、無駄な箱モノもたくさんできるはずですから、土木関係の企業にとってはおいしい話だと思います。
でも、もちろんそれらは日本国民の税金がもとになっています。
北方領土問題(南クリル諸島問題)の解決法は、果たして領土返還しかないのか?
ぶっちゃけ、そこまでして北方領土(南クリル諸島)にこだわる理由がわかりません。
メンツの問題でしょうか?
日本人は領土返還実現というメンツにこだわりすぎて、リスクリターンの計算ができていないように感じます。
はたして旧島民は北方領土(南クリル諸島)の返還を強く望んでいるのか?
はたして、旧島民は北方領土(南クリル諸島)の返還を求めているのでしょうか。
もし望んでいるとして、その望んでいる内容は、財産権としてのものでしょうか。それとも気持ちの問題でしょうか?
財産権の補償を求めているなら、島民に日本政府がカネを払えばいいだけのように思います。
気持ちの問題なら、たしかに北方領土(南クリル諸島)の返還は求める必要があるでしょうが、しかし同時に財産権の問題は諦めてもらう必要が出てくるでしょう。
ロシア側住民の権利も保護しながら、日本側の旧島民の財産権まで補償していたら、消費増税どころの負担では済まないはずです。
北方領土問題(南クリル諸島問題)解決はカネで解決するのが一番
自分は学生時代から、北方領土はカネで解決するのが一番丸く収まる、と主張してきました。
その考えはまったく変わりません。
カネの使い道をロシア政府とロシア側住民への補償に使うか、日本側の旧島民の子孫に使うか、そのどちらかで統一するのが、一番低コストな解決法だと思っています。
重要なのは国交正常化であり、あとはビジネスライクに解決したらいいはずです。
とりあえず、国民は北方領土(南クリル諸島)返還に伴うコストがどれほどの水準になるのか、全体像を知らされる必要があるはずです。
そのうえで解決に向けて交渉しなければ、あとあとに禍根が残ることになると思います。
以上です。