サウジアラビアとロシアが原油100万バレルのステルス増産中だったことが判明~イランとベネズエラによる輸出減少分を補うため
サウジアラビアとロシアが原油を100万バレル、ステルス増産中だったとロイターが伝えています。
サウジとロシア、原油増産巡りトランプ政権と「密約」(字幕・3日) ロイター
この報道によると
9月、サウジアラビアのファリハ・エネルギー相は大学の同窓であるペリー米エネルギー長官とフットボール観戦。
その後、数日のうちに両者は交互にロシアを訪問しロシアのノバク・エネルギー相と面会。
その後、ロシアとサウジは、原油生産量の引き上げで合意していたとのことで、このことは米国のトランプ大統領にも伝えていたとのこと。
なおこのサウジとロシアによる合意は、アルジェリアで開かれたOPEC会合前に結ばれていたとのこと。
OPEC会合ではサウジ、ロシアともにこれまでの減産合意順守の方針を堅持することで一致していましたが、
OPEC加盟国を出し抜いて、自分たちだけ増産していたことが判明したとのことです。
なお、増産規模は両者あわせて100万ドル程度とのこと。
トランプ大統領は中間選挙を控え、原油価格の上昇を嫌がっていると言われています。
(個人的にそれは、ある意味正しくて、ある意味違うと思っています。共和党は基本、エネルギー産業とずぶずぶですから。)
トランプ大統領はことあるごとにサウジに増産の圧力をかけています。
先日、トランプ大統領はサルマン国王に対して侮蔑ともいえるような態度をとったことが報道されました。
トランプ氏、サウジ国王に圧力-米支援なければ「2週間ももたない」 Bloomberg
「サウジ国王はアメリカが守ってやらなければ2週間と持たない。だから原油をもっと増産して、そのカネで自分たちの軍備を増強しなさい。」
ということです。
原油を増産すれば価格は下がるし、そのカネで兵器を買えばアメリカの軍需産業も儲かる、いいことづくめだ、というわけです。
トランプ大統領は先月末にもサウジ国王と電話会談したと伝えられています。
トランプ米大統領、サウジ国王に電話 原油供給を協議=サウジ通信
かなり頻繁に連絡をとっていることがみてとれ、中間選挙前に原油価格の動向にかなりシビアになっていることがみてとれます。
なお、今回の原油価格上昇は、サウジアラビア国営のエネルギー企業であるサウジアラムコ上場を狙って、サウジアラビアがOPECを主導して引き起こしたもの。
そしてこのサウジの方針は、アメリカとイスラエルがバックアップして行ったものでもあります。
このあたりの経緯は以下の記事で以前かきました。今年4月21日の記事です。
トランプ大統領がOPEC批判。しかしそれは中間選挙のため。本音は原油高を望んでいるはず。
この記事のなかで、
「原油価格は政策的に高め誘導されている」
「1バレル80ドル~110ドルになる可能性が出ている。」
と書きましたが、まさにいま、その状況になってきています。
今回、サウジとロシアはOPECを出し抜いて100万バレルの増産をしました。
アルジェリアで行われた先日のOPEC会合前にサウジとロシアは既に増産を決めていました。
サウジとロシアはこの会合で増産に否定的な態度をとっていましたが、これはOPEC加盟国を欺く行為です。
OPECと非加盟産油国、原油増産を見送り ロイター
しかし、ニュースまとめでも書いた通り、これは既定路線です。
OPECは全会一致が原則であり、どうせイランが反対するに決まっている(経済封鎖によるイランからの輸出減少分をサウジが増産することにイランが同意するはずがない)状況であり、まず賛同が得られるはずがなかったわけです。
また、OPEC加盟国の中で増産余力があるのはサウジだけであり、これに非加盟ながら協力しているロシアをあわせても、サウジ以外の増産余地は30万から50万バレル程度が良い所だと思います。
当然、増産余力がないなかで稼ごうと思えば価格上昇のほうが好ましく、OPEC加盟国は原油増産には後ろ向きになるのが当然です。
現在おきていることはそんな感じだと思います。
ちなみに、ロシアの生産能力は現在のところほぼ逼迫、のこり20~30万程度の増産余力が関の山ではないか、と個人的には思います。
とりあえず、最後にWTI原油先物価格の推移をみてみましょう。
下値を切り上げており、非常に強い動きになっています。
目先押すこともあるでしょうが、基本的に押し目には資金が流れ込みそうにみえます。
とりあえず今回はこれにておしまい。
次回は原油市場に潜むリスクについて書いてみたいと思います。
以上。