WTI原油価格は90ドルを突破する?

WTI原油価格は90ドルを突破できるか?~中国の経済を混乱させるための原油価格の人為的引き上げはありうるが、米国経済が堅調であることが大前提~という話

 

最近、原油価格の動向について質問されることが多いので、ちょっと考えを書いておこうと思います。

https://twitter.com/chu_sotu/status/1049354362575761408

 

 

まず最初に、自分は原油市場のプロではありません。

需給の読みに関して間違っている可能性はあります。

そのうえで自分の予想を書かせていただくなら、

原油価格は90ドルを突破する可能性は十分にあると考えています。

 

とりあえず、根拠となる数字をいちいち引用しながら書くのは面倒なのでザックリかきます。EIAやIEAなどのデータでもみてください。嘘は書いてないつもりですので、間違ってたら指摘いただければ幸いです。

それと、纏めながら書くのは面倒なので、思ったことをダラダラ書きます。

とりあえず、読みにくいとは思いますが、読みたい人だけ読んでください。

 

それでははじめます。


 

 

原油価格上昇のカギとしては、主に米国の中間戦後のトランプ政権の対中、対露、対イラン政策にあると思っています。

 

アメリカは、中国の経済発展を邪魔するために、原油を含めエネルギー価格をわざと引き上げようとして来る可能性があると考えています。

そのために、対露、対イラン制裁を使いこなし、原油価格を人為的に引き上げてくるのではないか、という気がしています。

 

 

 


 

現状、足元の世界の原油市場は、

「原油の需要増加スピード減速、供給増加スピード減速局面」

になっているとみています。

 

 

原油は14年、15年にかけて大幅に供給増になった反省から、16年は原油の供給が一気に絞られました。

対露政策の一環としての原油増産が過ぎた16年2Q~3Qは実質的に前年比マイナスの原油供給だったはず。

その後、米国のシェールを中心に徐々に供給能力が回復していき、現状では前年比100万バレル半ば~後半あたりの伸びとなっていると思います。

 

原油の需要面についても書きますと

需要面はここ数年、毎年コンスタントに前年比100万バレル台前半~後半の伸びをつづけてきました。

ここもと、原油価格は上昇基調ですし、世界経済もクールダウンしてきていますから、前年比の原油需要はやや軟化してきているはずですが、それでも100万バレルちょっとは需要が増えているはずです。

 

 

で問題は、原油の供給力は世界的に頭打ちだということ。

原油の上流権益の開発があまりすすんでいないのです。

 

この原油の上流権益開発が進まないひとつの理由に、ESG投資やグリーン投資、サステナブル投資の影響があるように思います。

 

昨今、環境問題への意識を多くの金融機関が持つにいたり、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料の上流権益プロジェクトへの融資が以前ほど積極的でなくなっています。

また、その観点からエネルギー企業へのエクイティファイナンスも行われにくく、純粋な株式投資の対象としてもこれら化石燃料会社を外す動きが出ています。

当然これは、低いコストでのファイナンスができず、レバレッジを聞かせた上流権益の開発ができないことになります。

また、ESG投資の観点から化石エネルギー企業を外す運用者が多ければ(その目論見があれば)、それらエネルギー関連企業の株価も押し下げられます。

そうなると、エネルギー事業会社にとっては自社株買いや配当などで還元する方が株主価値を向上させやすい、ということになってきます。

これが現在、エネルギー関連企業で起きている上流権益への投資遅れの実態なのではないかと思います。

一部、シェルなどによるカナダの天然ガス液化案件はありますし、ロシアのヤマルLNGプロジェクトもあります。

でもそれらは、かなり巨大なプロジェクト、かつ需要家側の政治的・外交的要請があってのものであり、必ずしも経済的要素だけで動いているとは言えない部分があります。(ヤマルの後ろには中国と欧州、カナダの後ろには中国と日本がいます。どちらも中国が大きく影響しています。)

 

またもう一つ、コノコフィリップスとPDVSAの訴訟の和解によるベネズエラの原油生産減の影響もあります。

故チャベス大統領が2007年?だったかにコノコフィリップスやエクソンモービルのエネルギー関連資産を接収して国有化しました。

その資産からあがるカネでベネズエラ国有石油会社PDVSAは潤い、そのカネをばら撒いて一時はベネズエラ経済はよかったんです。

でも結局、ベネズエラの左派政権は経済運営に失敗します。

アメリカが経済制裁を科したためPDVSAは上流権益から中流権益にかけて開発が滞りました。完全に、いまある資産だけをほそぼそ使っていく状態に陥っていたのです。

この状況を解消しようとPDVSAはコノコフィリップスと和解しますが、コノコはPDVSAのカリブ海にある備蓄施設などの資産を接収しました。

これによってPDVSAの生産活動も停滞

ただでさえ落ち込んでいたベネズエラ経済にとどめが刺される形になりました。

ベネズエラはOPECにおいて7%程度の生産をしてきた国ですから、これが減るのは大変大きな影響でした。

 

 

 

 

つまり、原油の世界需要の伸びはコンスタントでありながら、ひところまでの生産余力はない(とくに協調減産していたOPEC)ということ

 

というふうに自分はみています。

OPECとロシアをあわせた生産余力は世界需要に対して2~3%程度上回っている程度でしょう。

ここから、米国による経済制裁で輸出禁止になるイランを外すと、一気に需要が供給を上回ることになるはずです。

 

大まかにいって、OPECが世界の原油生産に占める比率は4割強です。OPECのうちイランの生産量は10%くらいです。つまり、イランの生産量は世界の原油生産に占める比率が4%程度ということになります。

 

この分を除くと、差し引きで供給が需要を下回る可能性があると思います。

もちろん、備蓄もありますし、価格が上昇すれば休止していた生産設備も動き出しますから急激な上昇にはならないでしょうが、それでも値上がり傾向になる可能性は十分にあるのではないかとみています。

 

 

 

 

 

アメリカは今年春、対イラン核合意からの離脱を表明。

イランに対して原油輸出禁止を含む経済制裁を科す方針を発表しました。

アメリカはイランの原油を友好国、同盟国などに輸入しないよう圧力をかけています。

たぶん多くの国が同調するでしょう。

もしイランからの輸入を続ける国があるなら、対テロ資金法などを持ち出して経済制裁を科すぞ、とトランプ大統領は同盟国を脅しています。

アメリカと商売できなくなるのは困りますから、欧州系を中心にイランから撤退する動きがでています。

 

 

 

このイラン産原油を輸入している国の上位には中国やインドがいます。

中国もインドもイランとの原油取引を続ける構えです。

中国もインドもエネルギーが足りませんし、イランから輸入する必要があるわけです。しかもイラン産原油は安いですしね。

でも、そのことを理由にトランプ大統領は中国に経済制裁を科す可能性があります。(インドはおめこぼしするかも。)

インドが米国の言うことを聞かない件について~イラン原油輸入、ロシア製兵器購入など~

 

 

 

アメリカはイラン同様に、ロシアに対して経済制裁を科しています。

ロシアとの経済協力をする企業、国、個人に対して経済制裁するぞと脅しています。

とくにアメリカの権益が脅かされる可能性のある対象についてはそうです。

ロシアは現在、ヤマルなどで大規模な天然ガス開発をしています。

この天然ガスは欧州にはノルドストリームおよびノルドストリーム2などによって運ぶことになっています。

独露首脳がノルド・ストリーム2の推進で合意~ウクライナの立場が危うい~

しかしこのことにトランプ大統領が噛みついています(ぶっちゃけ、トランプではなくペンスあたりが主導していると思いますが)

欧州はアメリカからもっと天然ガスを買え、ロシアからの天然ガスに頼るな、というわけです。

トランプ米大統領がドイツを攻撃、ロシアとのパイプラインを問題視 Bloomberg

さらにいうと、中国もロシアからの天然ガスの輸入を増やそうとしています。パワーオブシベリアというやつです。

中国の天然ガス事情 ロシアからの新パイプラインは2/3が完成

 

 

 

中国は絶対的にエネルギーが足りませんから、調達を増やそうと必死です。(再生可能エネルギーやEVなどの普及も進めていますが、それだけではどうしても足りません)

アメリカは、中国がエネルギーを好きに輸入できなくなれば、国内物価が上がって困るだろうと思っています。

アメリカは、中国に直接的に攻撃するのではなく、イランやロシアをまずは叩いています。

イランやロシアと取引をつづけるなら制裁措置をするぞ、というわけです。

 

 

 

 

トランプ大統領だって、たぶん本当はこんなことしたくありません。

原油価格が上昇すれば、たしかにシェール関連のエネルギー企業は儲かりますし、ペンスやポンペオのラインは潤うでしょう。

でも、トランプが一番可愛がっているブルーカラーの労働者の生活を傷めることになりますし、少なくとも中間選挙まではそういった原油価格が急上昇する政策はやめておきたい、と考えている可能性があります。

ですから、対イラン制裁の本格化も11月以降なのだと思います。

 

 

 

ここらへんの見立ては、多くのメディアと異なっているように感じます。

多くのメディアは「中間選挙まで強硬姿勢だけれど、それは国内支持者向けのアピール。中間選挙を越えたらトーンが収まるはず」と解説しています。

自分は、そんなはずはないんじゃない?と感じます。

どちらが正しいかはわかりませんが、とりあえず、市場の見方は最近、自分の見立てのほうに傾きつつあるのではないか、と感じています。

 

 


とりあえず、なんだか散漫になってしまいましたし、長くなってきたので纏めます。

 

とりあえず以下です。

・アメリカは中国の覇権を阻止したい

・アメリカは敵対国であるイラン、ロシアの制裁を強化したい

・イラン・ロシアが制裁されることで、これらの国からエネルギー供給を受けている国は困ることになる

・イラン・ロシアの供給力が消えれば需給面で原油は逼迫する

・サウジ・アメリカのエネルギー産業は原油価格上昇で潤う

・逆に、エネルギー輸入国である中国は苦しむことになる

あとはクルド地域やリビアの情勢がどうなるかなど細かいところも影響してきます。

一部にはホルムズ海峡封鎖や偶発的な軍事衝突リスクを語る人もいますが、その可能性ももちろんあるにはありますが、仮にそれらがなくても、原油価格には上昇圧力がかかるのではないか、と自分はみています。

 

とりあえず、原油価格上昇は日本の経済にとってはコストプッシュ要因ですし、貿易収支は大幅な赤字になりやすい。歴史的にみても、貿易赤字のときは円安になりやすい傾向があります。

もしかしたら、そういったことを織り込む動きがここもとの円安だったのかもしれない、と感じていたりもします。

 

もうひとつ

中国はイランやロシアからのエネルギーを受けて米国との取引をやめるか、米国との取引を続けることを優先するかの二者択一を迫られるのではないか、という懸念があります。

これはエネルギー市場というよりも中国市場におけるリスクですが、そのリスクは十分に考えておいた方が良いのではないかと思っています。

ただあまりに中国との関係を悪化させてしまうとアメリカ経済にも影響が及びます。

というわけで、アメリカがこういった手法をとるかどうかは、結局のところ

経済環境がいいかどうか

だと思います。

アメリカおよび世界の経済環境がよければ、より強硬な手段に出やすいですが、経済状況が落ち込めば、よりソフトな手段しか取りようがなくなる。

というわけで結論としては

原油価格が上昇するかどうかは、景気が今のままかどうか

ということになると思います。

現状のままであれば、19年に100ドルを突破する可能性も十分にあるのではないか、と思っています。以上です。