全国人民代表大会（全人代）、李克強首相による中国政府活動報告要旨について備忘録がわりに抜粋してまとめます。
かっこ内に個人的見解を斜線で書きます。
参考にしたのはNHKBSの中国ニュース他、以下の記事などです。
政策目標
- 2018年GDP目標6.5％前後
- 消費者物価伸び率3％前後
- 財政赤字2兆3800億元、対GDP比2.6％。17年予算より0.4ポイント下げる。
- 全国財政支出は21兆元、支出規模を拡大
- 直接金融推奨、新株発行を伴う資金調達の割合を高める。(企業部門の債務整理のために多額の新株発行が行われる可能性)
- 都市部新規就業者1100万人以上
- 都市部調査失業率5.5％以下
- 都市部登記失業率4.5％以下
- 国民所得の成長と経済成長率は基本的に同率に(あたりまえじゃないのか？)
- 貿易を穏やかに健やかに拡大させ国際収支を均衡(宣言しなくても国際収支は均衡するものでは・・・貿易額の均衡と言っているわけでないことに注意)
- 単位GDPあたりエネルギー消費3％超削減
具体的施策
- 製造業、交通運輸業などの増値税税率を下げる
- 企業所得税半減優遇政策の対象大幅拡大
- 企業による新規設備投資の税引き前控除上限を引き上げ
- 企業の海外所得控除政策を実施
- 物流企業の倉庫用地の税優遇拡大
- 通年で企業、個人の税負担を8千億元減らす
- 企業の保険料負担割合を引き下げ
- 全ての都市と農村をつなぐブロードバンド網の高速化と費用減に注力
- ローミング料金を撤廃。モバイル通信の料金を30％以上削減(通信各社に逆風)
- 集積回路、次世代移動通信5G、航空機エンジン、新エネルギー車、新素材の発展推進。中国製造2025地区を創設
- 生産能力削減は鉄鋼が3000万トン前後、石炭が1億5千万トン前後、出力30万kw以下の石炭発電所は運転停止(再生エネ各社に恩恵あり。旧来型電力企業に強い逆風。そのうちこの件について別途記事を纏めます。)
- ゾンビ企業を潰す
- 送電網接続料金と送配電価格を引き下げ(再生可能エネ各社に恩恵あり)
- 一般商工業用電気料金を平均10％引き下げ
- 高速道路料金と橋の通行料を引き下げ
- 税金以外のコスト負担軽減額は通年で3000億元超
- ベンチャー企業への上場支援およびベンチャー投資への租税優遇政策の拡大
- 国有企業の株式制改革継続。混合所有制を推進。民間資本による国有資本の効率化を推進
- 民営企業の発展を妨げる隠れた生涯を排除するため、企業家が中央政府の政策制定に参与できるようにする。
- 不動産税導入を目指す。不動産税は地方税とする。(以前から言われているものの、影響がデカすぎてなかなか進みません。)
- 知的財産権の保護強化。権利侵害に対する懲罰的賠償制度を導入。
- 地方の中小金融機関を発展させ、中小零細企業の資金繰りを支援
- 金利・為替レートの市場化改革を深化、人民元為替レートの合理的な均衡水準での基本的安定を保つ。(具体的にどの程度が合理的なのかわかりませんが・・・購買力平価でみるのか、実質実効レートでみるのか・・・)
- 養老保険制度を深化、地域間の基金格差がなくなるよう中央政府が調整
- 債務の株式化と企業の合併再編を加速
- シャドーバンキング、理財商品、インターネット金融、金融持ち株会社への監督管理の充実
- 地方特別債を5500億元増やして1兆3500億元とする
- 農村貧困人口を1千万人減らす
- 二酸化硫黄と窒素酸化物を3％減らす
- 汚水処理施設の建設を加速し、料金制度を改善(上下水道企業に恩恵)
- 農村道路を20万キロメートル新設もしくは改修
- トイレ革命を推し進める
- 北京の首都機能以外を移転し、河北省の雄安新区を建設する(これは大きいです。そのうち別途記事を書きます。)
- 農業からの移転人口の市民課を進め、1300万人を都市部へ転籍・定住させる
- 鉄道投資7320億元、道路、水運投資1兆8000億元前後。現在進行中の水利プロジェクトへの投資規模を1兆元にする
- 重要インフラ建設は中西部地区に重点的に行う
- 中央政府の投資予算は5376億元、前年比300億元増
- 鉄道、航空、石油、ガス、通信の分野で民間資本が参入できるプロジェクトを実施
- 一帯一路諸国と通関業務効率化協力をする
- 電気通信や医療、教育、介護、新エネルギー自動車などの分野の開放を拡大
- カード決済などの市場を開放
- 外資系保険販売の経営範囲規制廃止
- 銀行や証券などの外資持ち株比率規制を緩和もしくは撤廃
- 中国資本の銀行と外国資本の銀行の市場参入基準を統一
- 輸入を積極的に拡大、自動車や日用品などの輸入税引き下げ
- 東アジア地域包括的経済連携（RCEP）妥結
- アジア太平洋自由貿易圏（FTAAP）と東アジア経済共同体建設を加速
- 新エネルギー自動車の取得税優遇政策を３年延長(BYDなどに恩恵)
- 中古車の地域間取引規制撤廃
- 重点国有景勝地の入場料引き下げ
- 個人所得税の基礎控除額引き上げ。教育費や重大疾患医療費などの特別控除を増やす
- 住宅難に苦しむ低所得世帯に必ず住宅を保障(北京の低端人口への迫害を受けて？)
- 都市スラム街再開発を推進。新たな3年計画を始動、2018年に580万戸を着工する
- 賃貸住宅市場を育成。共有財産権住宅を発展させる(不動産各社にとって賃料ビジネスが拡大される余地あり)
- 香港については「一国二制度」の方針を貫徹
- 台湾については「ひとつの中国」の原則を堅持
個人的雑感
文言から「資源配分で市場に決定的な役割」が消えたことに注目している向きもあるようですが、そこまで気にしなくて良いのではないかと思われます。供給側構造改革と混合所有制改革において民間資本の効率性導入を重視しているのは例年通りですし、むしろ社会問題に関して民間企業経営者からの助言を求めているあたりはこれまでになく市場フレンドリーです。
ただし、過剰債務問題を解決するための手段として、debt equity swapやequity financeの多発リスクがありうることは考慮しておいた方がいいかもしれません。地方政府とつながりの深い民営企業がそれらを多用し、地方政府直轄の傷んだ資産を買うような展開もあるかもしれません。これは既存株主にとっては微妙なところです。とりあえず、蓋を開いてみないとわからない状態です。
5G社会に向け通信コストの低減を推し進める方針です。確実に、通信各社にとってはネガティブです。
不動産に関しては固定資産税の導入がポイント。当然、不動産価格には悪影響があるはずなので、何かしらのサポートはあると思われるものの・・・不動産各社にはやはりネガティブ要因です。賃貸市場の拡大も要点のひとつです。
環境と発展のバランスをかなり重視した政策になっています。30万kw以下の石炭発電を止めることと、石炭の生産量制限を厳しくすることによって、古くからの石炭火力発電各社は大きな影響を受けることになります。送電網接続料金と送配電価格を引き下げる方針も含め、風力・太陽光発電各社にとっては物凄い追い風です。また、粒子状物質や二酸化硫黄の削減はこれまで通りですが、より一層、石炭から天然ガスへのエネルギーシフトが起こるものと思われます。株式市場でみると、関連銘柄は以下のようになります。
新奥能源控股(ENN Energy) bloombergサイト
都市ガス経営と天然ガスパイプライン運営を行っています。
中国大唐集団新能源(China Datang Corporation Renewable Power、チャイナ・ダータン・リニューアブル・パワー) bloombergサイト
風力と太陽光発電の大手です。
華能新能源(HuaNeng renewables、ファネン・リニューアブルズ) bloombergサイト
風力と太陽光発電の大手です。
新天緑色能源(China Suntien Green Energy、チャイナ・サンティエン・グリーンエナジー) bloombergサイト
風力と太陽光の中堅です。また、河北省でガスパイプライン運営と都市ガスの経営をしています。雄安新区関連銘柄でもあります。
華潤燃気控股(China Resources Gas Group、チャイナ・リソーシズ・ガス・グループ) bloombergサイト
都市ガス経営とパイプライン運営をしています。
昆侖能源(KunLun Energy Company、クンルン・エナジー) bloombergサイト
都市ガス経営とパイプライン運営をしています。ペトロチャイナ系。以前は上流部門の開発もしていましたが、今は資産再編して下流部門に集中しています。
以上です。
P.S.
ごめんなさいー
自分でも思いますが、相変わらず長くて読みにくいですねえ
おいら中卒なもんで、うまくまとめる能力が足りません
まだ学生のひとに伝えたいです
ちゃんと大学くらいは行った方がいいです！
だれかに伝えるための訓練を受けないと、おいらみたいになっちゃいますよ！
by中卒くん