イギリスに亡命したロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏が襲撃を受け、意識不明の重体に陥っています。
分析の結果、旧ソ連製神経剤ノビチョク(Novichok)が使用された可能性が濃厚となり、英露関係が急激に緊迫しています。
結論までに飛躍があると思われるでしょうが、このことによって米朝首脳会談はうまく纏まらなくなったと思います。
まずはこれまでの経緯を確認してみましょう。
元スパイ暗殺未遂に使われた神経剤「ノビチョク」はロシア製化学兵器
要約(および補足)
- 今月4日、ロシア人の元二重スパイ、セルゲイ・スクリパリ(Sergei Skripal)氏と娘のユリア(Yulia Skripal)さん親子が、商業施設のベンチで意識を失った状態で発見された
- 毒物を分析した結果、旧ソ連で開発された神経剤ノビチョク(Novichok)を検出
- ロシア以外の国はノビチョクを保有しておらず、ロシアの関与が強く疑われる事態に発展
- 英政府はロシア人外交官23人に国外退去を要請
なお13日には、同じくイギリスへの亡命ロシア人で、ロシアの自動車メーカー「アフトワズ」や「ロゴワズ」、航空会社「アエロフロート」の幹部を歴任したニコライ・グルシュコフ氏が自宅で死亡しているのを発見されました。
ちなみに、グルシュコフ氏を後援してきたオリガルヒ(エリツィン時代の新興財閥)の大富豪ボリス・ベレゾフスキーという人もいましたが、この人もイギリスに亡命し、その後、自殺死体で発見されています・・・
イギリスに亡命したあと死亡した人物としてはアレクサンドル・リトビネンコ氏(元ソ連国家保安委員会KGB、元ロシア連邦保安庁中佐、放射性物質ポロニウム210で殺害)が有名ですが、これらの人々以外にも、亡命ロシア人は少なくとも14人が不審死を遂げているということです。
プーチンの差し金?亡命ロシア人の不審死が止まらない (Newsweek)
そんなわけで、英露関係は急激に悪化しています。
これらを受けて14日に開かれた国連安保理緊急会合では、米国は具体的な措置には踏み込まなかったようですが、英米が同盟関係にあることからみても具体的な制裁に踏み込む可能性が高まっていると思われます。
このことは、北朝鮮問題解決において最大のハードルになると思います。
北朝鮮は核放棄の条件として体制保障と米軍撤退を絶対条件にしていると言われています。(ここらへんの情報は錯そうしていますが、少なくともこの二点は北朝鮮としても引けない一線でしょう。そもそも朝鮮戦争の休戦協定では撤退する方向で話し合われていたのですから。)
この体制保障をどこがするのか、つまり
ケツ持ちは誰がやるのか?
という点が一番の問題になると思われます。
とりあえず、中国は金正恩を廃して金正男を後継候補に推していたそうですから、金正恩は中国を信用しないでしょう。(中国側とパイプ役になっていた張成沢は処刑されました)
金正恩が留学していたスイスなどは中立国として和平活動をしてくれていますが、地理的に離れすぎていることと軍事的バックアップ、安保理決議での反対票投票を期待できないことから、ケツ持ちにはなりえません。
唯一期待できるケツ持ち候補が、ロシアです。
そのロシアと英米が、急速に関係悪化していっています。
もちろん、シリア問題などで既に悪化してはいたのですが、今回の件は
「自国の主権領土内でロシアによる非合法活動が行われた可能性がある」
という点で、非常に重たいものになっています。
しかも、金正男と同様に毒物による暗殺ですから、人々のなかに連想が働くはずです。「ロシアを後見人を頼むのは間違っている」という認識が生まれる可能性が高いのではないかと思います。
2006年のことなので記憶が薄れていますが、リトビネンコ氏の毒殺事件のときには事件発生から告発、その後の外交官の追放なども含め、半年以上は騒いでいたように記憶しています。米朝が5月に首脳会談するとしたなら、日程的に足りません。
以上のことから、
米朝首脳会談がたとえ開かれたとしても、うまく纏まらないのではないか。もしくは、会談自体が延期になるのではないか
と、おいらはみています。
市場は北朝鮮リスクが緩和したと思いこんでいるようですが、まだまだ解決までは道のりが長いとみて良いと思います。
by中卒くん