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中国がレアアースを貿易戦争の武器に使用か?~ライナス株に恩恵とアダマス・インテリジェンスが指摘

中国がレアアース(希土類元素)を貿易戦争の武器に使用する可能性があると、業界を調査するアダマス・インテリジェンスが指摘~ライナス株、ふたたび暴騰なるか?

 

レアアース業界の動向を調査しているアダマス・インテリジェンスが「中国が貿易戦争の武器としてレアアースを利用する可能性」について言及しています。

Breakingviews – China aims rare earth bazooka at trade rivals ロイター

アダマス・インテリジェンスによると、中国政府はレアアース(希土類元素)の生産に制限を課しているとのこと。

中国には世界のレアアース埋蔵量の46%程度があるとされ、昨年は生産量ベースで8割が中国産です。

【統計】レアアース(希土類)の生産量と埋蔵量 国別シェア【グラフ】

レアアースは元素番号57~71番までと21番スカンジウム、39番イットリウムを纏めて指します。

ものによっては中国がほぼ100%の供給を担っているものもあり、各国とも備蓄はもちろんされていますが、供給が途絶えれば厄介なものとなります。

特に電気自動車EVにはネオジムなどが大量に利用されており(モーターに利用される磁石)、そういった意味で、中国に産業の首根っこを掴まれている状況ともいえます。

 

 

 

レアアース資源会社ライナスとマウント・ウェルド鉱山

ちなみに、同じような構図は以前もありました。

2010年、尖閣諸島の領有権を巡って中国は日本にレアアースを輸出しない制限措置をとります。

これに対して、経済産業省は平成22年度補正予算で「レアアース総合対策」を打ちます。

ジスプロシウム、セリウム等、6つの鉱種について代替技術の開発を促進したり、レアアースのリサイクル事業に投資、海外の鉱山権益に投資するといったものだったのですが、まぁ、いつもの経済産業省です。

予算をたっぷり無駄遣いしてくれました。

この当時、中国以外の民間レアアース資源会社というとほとんどなかったのですが、そのうちの一社が、この記事でも指摘されている豪州のライナス(LYC.AX)です。

西オーストラリアにMt Weld鉱床(Central Lanthanide鉱床)という世界最大級のレアアース資源鉱床を保有している企業で、同社のマウント・ウェルド鉱山プロジェクトには、日本のJOGMECや双日が、経産省の口車に乗って投融資をしていまいます。

 

ライナスは無茶苦茶なチャートしてます

もうお分かりだと思いますが、日本が投融資したのはこのスッ高値のところです。

たしか、全体で300億を超えるレベルの損失が発生していたと思います。

血税が無駄になっただけでなく、民間事業者にも損失を発生させた経産省は、一体だれのための省庁なのか。

とりあえず、この件は非常に甘い見通しで投融資が行われました。

 

 

 

レアアースの残渣にはウランやトリウムがいっぱい

レアアースは一般的にリン酸塩鉱物のモナザイト(モナズ石)から抽出しますが、このモナザイト、マグマ由来の鉱物ですからトリウムやウランなどの放射性元素も含まれています。

つまり、レアアースを分離して取り出すためには、このトリウムやウランなどをしっかり処理、管理する必要があるわけです。

だから、まじめに環境規制を考えたらやってられないビジネスなんですね。

中国がレアアース大国なのは、ひとえにこの環境規制が緩かったから。

環境規制を緩めて、安い価格でレアアースを世界に輸出して、他の事業者がビジネスとして成り立たないようにしていた・・・だけなんです。

本来なら、すっごく高くなるはずのものなんです。

ちなみにモナザイトですが、ウランやトリウムが多いのでα崩壊でヘリウムもたっぷりあります。

 

 

ライナス・アドバンスト・マテリアルズ・プラント(LAMP)

ライナスはオーストラリアのマウント・ウェルド鉱山で採れたレアアース鉱石・砂をマレーシアのライナス・アドバンスト・マテリアルズ・プラント(Lynas Advanced Materials Plant/LAMP)で精錬しようとします。

しかし、これが地元の猛反対にあうのです。

 

 

三菱化学によるエイジアン・レアアース公害事件(ARE公害事件)

というのも、マレーシアにはかつて三菱化成(現在の三菱化学)がエイジアン・レアアース(ARE)というレアアース精錬工場を作っていたのですが、ここで生み出された放射性物質を含む残渣を垂れ流したことで、周辺の環境を著しく汚染して小児がんや先天性異常を引き起こしたとして、訴訟になったことがあったのです。

1970年代後半から1990年くらいのはなしです。

ARE公害事件は最高裁まで争われましたが、加害責任が否定されて結審。被害者は何の補償も受けられずに泣き寝入りとなりました。

そのことがマレーシアの人々にとってトラウマとなっており、ライナス・アドバンスト・マテリアルズ・プラントへの反対運動に繋がった、ということでした。

 

それでもライナスに出資するJOGMECと双日

そう、ライナスという会社はそれだけリスクの高い出資先でありながら、JOGMECと双日は経産省に背中を押されるかたちでライナスへの出資を決めてしまいます。2011年のことです。

先ほどのライナスの株価チャートをみていただければわかりますが、これは恐ろしいほどのスッ高値です。

そもそもにおいて、なんで前回汚染して日本へのイメージが悪化してる地域に進出する企業に日本が出資するのか?

経産省の連中は、地元の人々の気持ちを理解できないのでしょうか。

 

 

 

WTOで中国の輸出規制が解除、ライナス株暴落へ

2014年、WTOの枠組みによる紛争解決で、中国によるレアアース輸出制限はWTO協定違反であるとされます。

これにより中国の安価なレアアースがでまわることになり、ライナスの採算は大きく悪化。

資金繰りが悪化して破綻危機に直面します。

そこで破綻してもらって、日本が資源を接収・・・とすれば話は楽だったんでしょうが、経産省はそうさせずに資金支援をちょびちょびとやって、今に至ります。

このあたりは、外交関係を考えたりしたのでしょう。最初から、民間が噛むような話にしたのが間違いですね。

三菱重工のMRJもそうですが、経産省が提案した事業にはろくなもんがない。

経産省はハーメルンの笛吹き男みたいにみえてきます。

 

 

 

中国はレアアース輸出を貿易戦争の武器にするか?

で、冒頭におけるアダマス・インテリジェンスによる今回の中国によるレアアース生産減少見通しですが・・・

まぁ、たぶん本気で米中貿易戦争になったら、中国はきっとやるでしょう。

アメリカがWTOのルールを破るなら、中国だって破ると思います。

たぶんそのとき、本当に世界は持ちつ持たれつなことにトランプ大統領も気づくでしょう。

とりあえずそこまで行きつかないように、日本政府ができることはあるはずです。

日中首脳会談、がんばってください。

以上です。