【EUV】半導体製造装置大手ASMLの業績と株価
今回は要望のあった半導体製造装置大手ASMLの業績と株価を見ていきます。
https://twitter.com/chu_sotu/status/1058208355443863552
とりあえず、ASMLの会社説明からはじめます。
半導体製造装置大手ASMLとは?
ASMLとはオランダ、フェルトホーフェンに本部を置く半導体製造装置メーカーです。
ASMLはおもに半導体露光装置(ステッパー、フォトリソグラフィ装置)などに強く、半導体メーカーのほぼすべてが顧客となっている、世界最大の半導体露光装置メーカーです。
半導体露光装置業界におけるASML
かつて、半導体露光装置はニコンとキヤノンがトップを争っていた時期もありましたが(2000年くらいかな?)、その後の技術競争でニコンがトップになりキヤノン脱落。
さらに技術革新に乗り遅れたニコンが脱落し、現在はASMLが半導体露光装置のシェア最大手となっています。
ASMLとIMEC(Interuniversity Microelectronics Centre)
半導体製造装置業界におけるASMLの躍進をささえたのが、ベルギーの研究開発機関IMEC(Interuniversity Microelectronics Centre)です。
ニコンがどちらかというと顧客向け(とくにインテル向け)にカスタマイズした製品を極秘に開発しようとしていたのに対し、IMECは多様なデバイスメーカー(サムスンやTSMCなど)と共同で、汎用的に利用可能な製品の開発をオープンイノベーションで進めようとしていきました。
多様な頭脳と資金を集めたIMECが提携していたのがASMLであり、その成果を大きく享受したことで露光装置業界のシェア逆転に至ったといわれています。
ASMLとTSMC(台湾積体電路製造)
ASMLはIMECを通じて半導体受託製造業最大手のTSMC(台湾積体電路製造)とも協働。
資金力と開発、テスト体制をTSMC、ASML、IMECで差配することで開発スピードをアップさせ、最先端露光装置の分野で確固たる地位を占めるに至ったといわれています。
ASMLのEUV露光装置~極端紫外線リソグラフィ、EUVL、EUVリソグラフィ、Extreme ultraviolet lithography
ASMLは世界で唯一のEUV露光装置メーカーです。(日本のコマツ傘下ギガフォトンも開発中ですが、商用化には至っていません。)
EUVリソグラフィ(極端紫外線リソグラフィ、Extreme ultraviolet lithography、EUVL)は波長13.5nmの極端紫外線を用いて露光するリソグラフィ技術で、ムーアの法則をあと10年続けるために必要な次世代半導体露光技術です。
これを用いることで線幅7nmの半導体の製造を効率よく行えるようになるほか(現状ではまだ液浸ArFの応用技術の方が効率がいいらしいが、将来的にはEUVが超えると予想されている)、将来的には5nm、3nmまでEUVで露光していくための研究がされています(液浸の液体の開発など)。
この分野でASMLは世界唯一の企業であり、よって、EUV露光装置は非常に高価であるといわれています。
ASMLから最先端EUV露光装置購入を狙う中国
ASMLの最先端EUV露光装置に対しては、半導体の自国製造を狙う中国も強い興味を示しているとされ、これが米国の産業政策をも巻き込んだ議論に展開していくことが懸念されています。
【中国】半導体製造イノトロン(合肥長鑫/睿力集成電路)、蘭ASMLからEUV露光装置の調達めざす
ASMLの業績
ここからはASMLの業績についてみていきます。
(以下は2018年11月2日に書きました)
ASMLが2018年Q3を発表。
上図は四半期ごとの業績推移を追ったものになります。
ASMLの製造装置の売り上げは前期比で2086.5→2080.6に減っていますが
サービスなどの売上が653.9→695.5に増えており
ASMLが製品の販売だけでなくサービスで稼ぐ体制も着々と進展。
ASMLの売上全体では2740.4→2776.1に増加しています。
また、粗利は1186.9→1335.9に増加
研究開発費、販管費などは伸びたものの、
営業利益も689.4→817.8に増加しており
ASMLの決算は非常に好調だったと言えます。
ASML半導体露光装置販売データ
こちらはASMLの半導体露光装置販売の詳細なデータです。
左から、ASMLが販売した半導体露光装置の技術別比率を示した図
エンドユーザーにおける導入目的別比率
仕向け地別比率
半導体露光装置の技術別の台数です
まず一番左の図から解説すると、
ASMLにおける18年Q3にはEUV露光装置の販売が売上全体の25%でした。
最先端品の投入はありましたが、世界的にはいまだに液浸ArFの需要のほうが旺盛です。(技術革新よりも安定したスループットの方が重要という顧客が多いということ)
次に真ん中左の図、ASMLの装置購入したエンドユーザーにおけるメモリの比率が増えています。
汎用的なメモリ向け需要が多いということは、やや意外です。
この期間、メモリ価格はDRAM、NANDともに下落傾向にあり、やや作りすぎ、生産効率あがりすぎな状態になっています。
ここは落ち込んでくることが懸念されます。
次に地域別ですが、18年Q3は台湾の比率が増えています。
TSMCが積極的にASMLからEUV露光装置を導入すると発表しているので、この影響かと思われます。
ASMLの売上のうちアメリカの比率は非常に落ちています。驚くほどに。
トランプ政権は自国への投資を促したいようですが、その動きにはなっていません。
なお、ASMLの半導体製造装置の出荷を台数別に見たのが一番右の図です。
こちらをみるとわかりますが、EUVの販売は液浸ArFやKrFなどに比べて非常に少ないです。
が、販売額でみるとEUV露光装置は25~32%を占めます。
つまり、EUV露光装置はべらぼうに高いということ。
ASMLにとって、EUV露光装置は間違いなく稼ぎ頭になっています。
ASML売上推移
こちらはASMLの過去4年間の売上推移と、今年3Qまでの売上です。
御覧の通り、非常に好調です。
ただ、個人的な見解を言わせていただければ、メモリ事業分野が大きく伸びすぎているように感じます。
長期的なトレンドから大きく離れており、このことがリスクになります。
ロジック分野が伸びずに一方的にメモリだけ伸びるということは、少なくとも過去を見る限りあまりありません。比率がちょっと歪かな、と思います。
ASML受注残高
こちらはASMLの受注残高です。
残高2200は一四半期で掃ける量であり、さほど大きな数字ではありません。
また、メモリ比率がいかんせん高すぎる。
このことが同社の業績に短期的には下押し圧力となることが予想されます。
ASMLの株価
ASMLの株価は世界的な株安傾向を受けて直近値下がりしています。
ASMLはEUVLへの期待から値を保ってきましたが、上記でも書いたように、結局のところシリコンサイクルからは離れられないと思います。
個人的には同社の株価には短期的に弱気ですが、長期的な同社のポジションについては強気でみています。
大きく押したところは買っても良いと思っています。総弱気になれば130~110割れくらいはあるかもしれない、とみています。
以上です。
なお、上記はあくまでも個人的見解であり、特定の投資スタンスをお勧めするものではありません。投資においては自己責任で行っていただきますようお願いいたします。