日産取締役会決議をリークして視聴率を稼ぐテレビ東京~フェア・ディスクロージャー・ルールは風前の灯に~

フェア・ディスクロージャー・ルールを形骸化させるテレビ東京や日経新聞

 

日産の取締役会決議内容を正式発表前にリークするテレビ東京はフェア・ディスクロージャー・ルールを崩壊させる張本人だ

テレビ東京が独自取材として、日産自動車の大幅業績下方修正を報じています。

独自 日産 再び下方修正へきょう発表

報道によると、日産は主力の北米市場や中国市場で売上減少が止まらず、2019年3月期決算の大幅な下方修正を24日発表する、というもの。

これは23日の日産自動車取締役会を受けたものだそうですが、この報道は本来、踏まえなければならない公表方法を経ていません。

フェア・ディスクロージャー・ルールから離れた発表方法です。

完全にリーク情報というべきものです。

 

 

日経新聞やテレビ東京のやり方はフェア・ディスクロージャー・ルールを崩壊させかねない

今回、テレビ東京は堂々と

「関係者によると、決算下方修正が24日にある」

などと報じています。

つまり、業績予想を自分たちで積み上げたのではなく、内部情報のリークに頼って原稿を書いてますよ、と堂々とアピールしているわけです。

よくもまぁ、そんな恥知らずでイリーガルぎりぎりなことをできたものだと思います。

本当に、いろいろと肝の座り方に感心します。

 

ちなみにこういったことは、テレビ東京に限った話ではなく、提携先の日経新聞でもしょっちゅう行われています。

毎期、決算期近くになると多数の決算予想記事が書かれますが、その予想的中率はほぼ100%です。

日経新聞はさすがに「関係者から聞きました」なんて危なっかしいことは書きません。

ですが、多くの人は、この情報が取締役などかなり上層部の人間からもたらされていると、信じています。

はっきりいって、こういった行為が野放しにされている日本市場は、かなりヤバいと思います。

 

メディアが情報を事前に入手できるんだから、メディア以外だってリーク情報に触れているはずなんです。

少なくとも投資家たちは、そのほとんどがフェアな環境で投資を行えていないと感じているはずです・・・感じているなら阿呆です。

日本はインサイダー情報がいまだに垂れ流される市場であり、情報統制が各企業でしっかりできていない・・・

今回の日産自動車の決算情報リーク問題は、そうした現実を白日の下に引きずり出してきたものでしょう。

 

 

日本版フェア・ディスクロージャー・ルールは2018年4月開始

2018年4月1日、日本版フェア・ディスクロージャー・ルールが施行されました。

フェア・ディスクロージャー・ルールというのはつまるところ、

  • 重要情報はちゃんとした手順で公表しましょうね
  • 重要情報が提供されるときは、すべての投資家が情報に接することができるようにしましょうね

というものです。

法令としては金融商品取引法第二十七条の三十六から三十八金融商品取引法施行令三十条有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第五十六条あたりがそれにあたりますでしょうか。

(間違っているかもしれませんので、詳しくは法律家の方に訂正していただけることを期待しつつ書きます)

 

 

金融商品取引法
第二章の六 重要情報の公表
(重要情報の公表)
第二十七条の三十六 第二条第一項第五号、第七号、第九号若しくは第十一号に掲げる有価証券(政令で定めるものを除く。)で金融商品取引所に上場されているもの若しくは店頭売買有価証券に該当するものその他の政令で定める有価証券の発行者(以下この条において「上場会社等」という。)若しくは投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十二項に規定する投資法人をいう。第一号において同じ。)である上場会社等の資産運用会社(同法第二条第二十一項に規定する資産運用会社をいう。)(以下この項及び次項において「上場投資法人等の資産運用会社」という。)又はこれらの役員(会計参与が法人であるときは、その社員)、代理人若しくは使用人その他の従業者(第一号及び次項において「役員等」という。)が、その業務に関して、次に掲げる者(以下この条において「取引関係者」という。)に、当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する公表されていない重要な情報であつて、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすもの(以下この章において「重要情報」という。)の伝達(重要情報の伝達を行う者が上場会社等又は上場投資法人等の資産運用会社の代理人又は使用人その他の従業者である場合にあつては、当該上場会社等又は当該上場投資法人等の資産運用会社において取引関係者に情報を伝達する職務を行うこととされている者が行う伝達。以下この条において同じ。)を行う場合には、当該上場会社等は、当該伝達と同時に、当該重要情報を公表しなければならない。ただし、取引関係者が、法令又は契約により、当該重要情報が公表される前に、当該重要情報に関する秘密を他に漏らし、かつ、当該上場会社等の第二条第一項第五号、第七号、第九号又は第十一号に掲げる有価証券(政令で定めるものを除く。)、これらの有価証券に係るオプションを表示する同項第十九号に掲げる有価証券その他の政令で定める有価証券(以下この項及び第三項において「上場有価証券等」という。)に係る売買その他の有償の譲渡若しくは譲受け、合併若しくは分割による承継(合併又は分割により承継させ、又は承継することをいう。)又はデリバティブ取引(上場有価証券等に係るオプションを取得している者が当該オプションを行使することにより上場有価証券等を取得することその他の内閣府令で定めるものを除く。)(第二号及び第三項において「売買等」という。)をしてはならない義務を負うときは、この限りでない。
一 金融商品取引業者、登録金融機関、信用格付業者若しくは投資法人その他の内閣府令で定める者又はこれらの役員等(重要情報の適切な管理のために必要な措置として内閣府令で定める措置を講じている者において、金融商品取引業に係る業務に従事していない者として内閣府令で定める者を除く。)
二 当該上場会社等の投資者に対する広報に係る業務に関して重要情報の伝達を受け、当該重要情報に基づく投資判断に基づいて当該上場会社等の上場有価証券等に係る売買等を行う蓋然性の高い者として内閣府令で定める者
2 前項本文の規定は、上場会社等若しくは上場投資法人等の資産運用会社又はこれらの役員等が、その業務に関して、取引関係者に重要情報の伝達を行つた時において伝達した情報が重要情報に該当することを知らなかつた場合又は重要情報の伝達と同時にこれを公表することが困難な場合として内閣府令で定める場合には、適用しない。この場合においては、当該上場会社等は、取引関係者に当該伝達が行われたことを知つた後、速やかに、当該重要情報を公表しなければならない。
3 第一項ただし書の場合において、当該上場会社等は、当該重要情報の伝達を受けた取引関係者が、法令又は契約に違反して、当該重要情報が公表される前に、当該重要情報に関する秘密を他の取引関係者に漏らし、又は当該上場会社等の上場有価証券等に係る売買等を行つたことを知つたときは、速やかに、当該重要情報を公表しなければならない。ただし、やむを得ない理由により当該重要情報を公表することができない場合その他の内閣府令で定める場合は、この限りでない。
4 前三項の規定により重要情報を公表しようとする上場会社等は、当該重要情報を、内閣府令で定めるところにより、インターネットの利用その他の方法により公表しなければならない。
(公表者等に対する報告の徴取及び検査)
第二十七条の三十七 内閣総理大臣は、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、重要情報を公表した者若しくは公表すべきであると認められる者若しくは参考人に対し参考となるべき報告若しくは資料の提出を命じ、又は当該職員をしてその者の帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による報告若しくは資料の提出の命令又は検査に関して必要があると認めるときは、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
(公表の指示等)
第二十七条の三十八 内閣総理大臣は、第二十七条の三十六第一項から第三項までの規定により公表されるべき重要情報が公表されていないと認めるときは、当該重要情報を公表すべきであると認められる者に対し、重要情報の公表その他の適切な措置をとるべき旨の指示をすることができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による指示を受けた者が、正当な理由がないのにその指示に係る措置をとらなかつたときは、その者に対し、その指示に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

 

 

 

金融商品取引法施行令
第三十条 法第百六十六条第四項又は第百六十七条第四項に規定する多数の者の知り得る状態に置く措置として政令で定める措置がとられたこととは、次の各号に掲げる措置のいずれかがとられたこととする。
一 法第百六十三条第一項に規定する上場会社等、当該上場会社等の子会社若しくは当該上場会社等の資産運用会社を代表すべき取締役、執行役若しくは執行役員(協同組織金融機関を代表すべき役員を含む。以下この項において同じ。)若しくは当該取締役、執行役若しくは執行役員から重要事実等(法第百六十六条第四項各号に掲げる事項をいう。以下この項において同じ。)を公開することを委任された者又は法第百六十七条第一項に規定する公開買付者等(法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)にあつては、当該法人を代表すべき者又は管理人)若しくは当該公開買付者等から同条第三項に規定する公開買付け等事実(以下この項において「公開買付け等事実」という。)を公開することを委任された者が、当該重要事実等又は当該公開買付け等事実を次に掲げる報道機関の二以上を含む報道機関に対して公開し、かつ、当該公開された重要事実等又は公開買付け等事実の周知のために必要な期間が経過したこと。
イ 国内において時事に関する事項を総合して報道する日刊新聞紙の販売を業とする新聞社及び当該新聞社に時事に関する事項を総合して伝達することを業とする通信社
ロ 国内において産業及び経済に関する事項を全般的に報道する日刊新聞紙の販売を業とする新聞社
ハ 日本放送協会及び基幹放送事業者
二 法第百六十三条第一項に規定する上場会社等の発行する有価証券を上場する各金融商品取引所(当該有価証券が店頭売買有価証券である場合にあつては当該有価証券を登録する各認可金融商品取引業協会とし、当該有価証券が取扱有価証券である場合にあつては当該有価証券の取扱有価証券としての指定を行う各認可金融商品取引業協会とする。以下この項において同じ。)の規則で定めるところにより、当該上場会社等又は当該上場会社等の資産運用会社が、重要事実等又は公開買付け等事実(当該上場会社等が公開買付者等(法第百六十七条第一項に規定する公開買付者等をいう。以下この項において同じ。)となるものに限る。以下この号及び次号において同じ。)を当該金融商品取引所に通知し、かつ、当該通知された重要事実等又は公開買付け等事実が、内閣府令で定めるところにより、当該金融商品取引所において日本語で公衆の縦覧に供されたこと。
三 法第百六十三条第一項に規定する上場会社等であつて次のイからハまでに掲げる者であるものの発行する有価証券を上場する各金融商品取引所の規則で定めるところにより、当該上場会社等又は当該上場会社等の資産運用会社が、当該イからハまでに定める事実を当該金融商品取引所に通知し、かつ、当該通知された事実が、内閣府令で定めるところにより、当該金融商品取引所において英語で公衆の縦覧に供されたこと。
イ その発行する第二十七条の二各号に掲げる有価証券が全て特定投資家向け有価証券である者 重要事実等
ロ 上場株券等(法第二十四条の六第一項に規定する上場株券等をいう。以下この号において同じ。)の法第二十七条の二十二の二第一項に規定する公開買付けをする者(その発行する上場株券等が全て特定投資家向け有価証券である者に限る。) 公開買付け等事実
ハ 法第百六十七条第一項に規定する公開買付け等(上場株券等の法第二十七条の二十二の二第一項に規定する公開買付けを除き、当該公開買付け等に係る上場等株券等(法第百六十七条第一項に規定する上場等株券等をいう。以下この項において同じ。)の発行者の発行する上場等株券等が全て特定投資家向け有価証券である場合に限る。)をする者 公開買付け等事実
四 公開買付者等(法第百六十三条第一項に規定する上場会社等であるものを除く。次号において同じ。)が、その公開買付け等(法第百六十七条第一項に規定する公開買付け等をいう。次号において同じ。)に係る上場等株券等の発行者又は当該公開買付者等の親会社(法第百六十六条第五項に規定する親会社をいい、法第百六十三条第一項に規定する上場会社等であるものに限る。以下この項において同じ。)に対し、公開買付け等事実を当該発行者又は当該親会社の発行する有価証券を上場する各金融商品取引所に通知することを要請し、当該発行者又は当該親会社が、当該要請に基づいて、当該金融商品取引所の規則で定めるところにより、当該公開買付け等事実を当該金融商品取引所に通知し、かつ、当該公開買付け等事実が、内閣府令で定めるところにより、当該金融商品取引所において日本語で公衆の縦覧に供されたこと。
五 公開買付者等が、その公開買付け等に係る上場等株券等の発行者の発行する上場等株券等が全て特定投資家向け有価証券である場合において、当該発行者又は当該公開買付者等の親会社に対し、公開買付け等事実を当該発行者又は当該親会社の発行する有価証券を上場する各金融商品取引所に通知することを要請し、当該発行者又は当該親会社が、当該要請に基づいて、当該金融商品取引所の規則で定めるところにより、当該公開買付け等事実を当該金融商品取引所に通知し、かつ、当該公開買付け等事実が、内閣府令で定めるところにより、当該金融商品取引所において英語で公衆の縦覧に供されたこと。
2 前項第一号に規定する周知のために必要な期間は、同号イ、ロ又はハに掲げる報道機関のうち少なくとも二の報道機関に対して公開した時から十二時間とする。
有価証券の取引等の規制に関する内閣府令
第五十六条 令第三十条第一項第二号から第五号までに規定する重要事実等(同項第一号に規定する重要事実等をいう。以下この条において同じ。)又は公開買付け等事実(同項第一号に規定する公開買付け等事実をいう。以下この条において同じ。)の通知を受けた金融商品取引所(当該重要事実等又は公開買付け等事実の通知を受けた者が認可金融商品取引業協会の場合にあっては、当該認可金融商品取引業協会。以下この条において同じ。)は、電磁的方法により、当該通知を受けた重要事実等又は公開買付け等事実を公衆の縦覧に供するものとする。
2 前項に規定する電磁的方法は、金融商品取引所の使用に係る電子計算機と情報の提供を受ける者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法であって、当該電気通信回線を通じて情報が送信され、当該情報の提供を受ける者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報が記録されるもののうち、当該金融商品取引所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された情報の内容を電気通信回線を通じて当該情報の提供を受ける者の閲覧に供し、当該情報の提供を受ける者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報を記録する方法であって、インターネットに接続された自動公衆送信装置(著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第九号の五イに規定する自動公衆送信装置をいう。)を使用する方法とする。
3 前項に規定する方法は、電気通信回線を通じた不正なアクセス等を防止するために必要な措置が講じられているものでなければならない。
4 第一項に規定する金融商品取引所は、その通知を受けた重要事実等又は公開買付け等事実を、七日間以上継続して公衆の縦覧に供しなければならない。

 

 

 

長ったらしいですが、とりあえずザックリまとめると、公表にあたっては

  1. 情報の出所が明確であること(会社によるもの、代表者によるもの、または委任を受けた者)
  2. 日刊紙や通信社、放送事業者など少なくとも2つ以上に公開して12時間が経過するか(12時間ルール)、もしくはインターネットなどで公衆の目で縦覧できるようにされた場合

のふたつが重要です。

 

今回、日産の決算情報リークに関しては、このうちの1と2を満たしていないのは明白です。

公表したのは日産の代表者ではないし、会社でもないわけです。

テレビ東京1社がリークを受けて、その情報をもとに各社が報じただけであり、2社に情報が提供されたわけではありません。

法律からみたら、どう考えてもまったくおかしなことになっています。

 

 

 

 

日本版フェア・ディスクロージャー・ルールを厳密に捉えるなら、報道を受けて売買した人すべてがインサイダー取引に該当??

さて、ここで厄介な問題が発生するように思います。

最高裁平成28年11月28日決定をもとにすると、今回のリーク情報に従って売買して利益を得た者は、全てがインサイダー取引として扱われる可能性がある・・・んじゃないかと個人的にみています。

 

 金融商品取引法違反被告事件 平成28年11月28日 最高裁判所第一小法廷

1 情報源を公にしないことを前提とした報道機関に対する重要事実の伝達は,たとえその主体が金融商品取引法施行令(平成23年政令第181号による改正前のもの)30条1項1号に該当する者であったとしても,同号にいう重要事実の報道機関に対する「公開」には当たらない。
2 会社の意思決定に関する重要事実を内容とする報道がされたとしても,情報源が公にされない限り,金融商品取引法(平成23年法律第49号による改正前のもの)166条1項によるインサイダー取引規制の効力が失われることはない。

 

ようするに先ほど書いたように、情報源がたとえ取締役など会社における重要人物であったとしても、情報源があいまいな状態では公開情報とは言えないということなんです。

そして、この「公開情報とはいえない情報」をもとに売買したら、インサイダー取引規制にひっかかる、というわけです。

 

・・・つまり、日経新聞やテレビ東京が出所を明示せずに流す情報にしたがって売買したらインサイダー取引にあたるのが日本の現状ってことですよね?

もちろん、日経新聞はこんなことわかりきってますから、自分たちが独自に予想を組み立てていると主張するでしょう。

しかし、何度も書きますが、日経が独自にアナリストを雇って業績予想やってるだなんて、ほとんど誰も信じちゃいません。

きっと、仲のいい(口の軽い)取締役から情報を抜いているのだと、多くの人が思っています。

 

 

とりあえず、金融庁は誰がリークを流しているのか調べ、どの取締役が不当なのか調査すべきです。

金融庁、証券取引等監視委員会はもっとちゃんと働くべきだとおもいます。

今のままでは、日本の資本市場はやったもん勝ちの無茶苦茶な状態になります。

こんな状態で「東京をアジアの金融ハブに」なんてよく言えたもんだと思います。

面白過ぎて臍で茶がわきます。

以上。