政策保有株の問題点は、そもそも政策保有が罷り通っているという現実にある
誰も指摘しない政策保有株の問題点を指摘させていただきます。
なぜでしょうか。
政策保有株(持ち合い株)の問題点について、一番重要な部分をほとんど誰も指摘しません。
専門家の方達の話を聞いても、
「総会決議で会社側が有利になる」とか、「資本効率が悪くなる」とか、
そういう部分ばかりを指摘しています。
それは政策保有株が存在することで起きる弊害の部分です。
もちろんそれも非常に問題なのですが、より重要な、根源的な問題について指摘する必要があります。
それは
政策保有株を持ち合っているからという理由で商売上優遇すること自体が問題ということ。
どういうことかわかりやすくするために、例を書きます。(余計わかりにくくなるかもw)
ここに、A社とB社があります。
A社は通信部品を作るメーカーで、B社はそこに納入する設備のメーカーです。
A社とB社は株式の持ち合い(政策保有)しています。
さて、あるときA社が設備を導入することになりました。
B社のほかに、中堅設備メーカーのC社がそれを聞きつけ、プレゼンします。
じつは、B社が扱う設備よりも、C社の設備の方が最近評判がいい。
しかも、B社よりも安い価格とアフターフォロー体制の充実を提案しています。
もろもろを含めてみても、どうやらB社よりもC社の方がよさそうです。
現場の従業員たちは、C社の設備導入に前向きです。
しかしA社経営陣は、今まで通りB社を選びました。
C社よりも明らかに高い価格で、明らかに性能の劣るB社を選びました。
もちろん、今までの設備との互換性が重要だの、何やらゴチャゴチャと言っています。
でもみんなわかっています。
今までの付き合い、とくに政策保有株の持ち合いが重要だったのだと。
政策保有株の持ち合いは経営者以外のすべてにデメリットがあります。
今回の件でメリットがあったのは、A社の取締役連中だけです。
A社は良い機種を安く導入するチャンスを失って損をしています。
A社の現場従業員たちは、せっかく新しい設備を導入することになったのに、自分達が使いたい設備じゃないものがやってくるのでガッカリです。
A社の株主たちは、せっかく安く良い設備が導入されるはずだったのに、それがされないことで損をしました。
C社も、せっかくいい商品を売り込んでいるのに相手にされずガッカリです。
B社は得をしたかというと、それは違います。
持ち合い株をやっている以上、B社もまた、被害者になる可能性が十分にあるからです。
B社が設備を導入する時にも、A社と同じようなことが繰り返されるはずです。
こうして、社会全体が損をします。
潤うのは経営者たちだけです。
ようするに、政策保有株の持ち合いというのは、経営陣の保身のために社会のリソースを無駄に利用する行為です。
政策保有株の持ち合いによって、いちばん被害を受けているのはこの国の人々です。
ぶっちゃけ、日本の株式というのは、株札みたいなものにみえます。
欧米型の所有と経営の分離を徹底させる株式ではなく、
江戸時代の株仲間の名残としての「株」だと思います。
その意識で経団連や経済同友会みたいなものが存在している。
そして、お互いにツバつけあうようにして株式を政策保有する。
そんなふうにみると、すんなり日本の株式市場を理解できるように思っています。
なお、こうした株仲間が非効率を生むことは、歴史が証明しています。
天保の改革は批判されがちですが、自分は良かったと思っています。
短期的には混乱を生みましたが、株仲間の解散による参入障壁の一部撤廃は長期的に見れば諸藩専売品や家内制手工業の発展を促した、と自分はみています。
これは論点がズレるのでこれ以上は書きませんが。。。
「取引関係の維持・強化を目的」として政策保有株式を持ち合うことこそが問題
企業の有価証券報告書を読んでいると、政策保有株の持ち合い目的として
「取引関係の維持・強化を目的とし~」などと書かれていることが多くあります。
しかし、上で書いたように、それこそが問題なんです。
取引関係の維持・強化したいなら、取引関係が維持・強化されるような商品・製品を常に用意したらいいだけです。
株式を持ち合って、ツバつけあって、内輪でぐるぐる利益を回しているのは問題です。
とりあえず
自分が言いたいのは、そもそも論として、政策保有株式の持ち合いが悪なのだ、ということです。
純投資以外の目的で資本を持ち合う行為そのものが悪なんです。
政策保有しているから取引上の優遇を与える(&期待する)という行為が、そもそも少数株主に対して害を与えていますし、社会全体にも害を与えています。
なぜ、こうした部分を指摘する人がいないのか不思議でしかたありません。
もっと専門家は本質を語ってほしいです。
以上。