ソニーがEMIミュージックを完全子会社化するそうです。
ソニー、EMIを子会社化 2100億円で株追加取得
ソニーがEMI Musicを約2,500億円で子会社化。「音楽出版のナンバーワンを維持」
まったく理解できません。どうして日本企業の経営陣はいつもこう、株主価値の極大化に直結しない行動をとるのでしょう?
記事によると、EMIミュージック社の売上高は6億6300万ドル、営業利益が1億2700万ドルだそうです。利払いと税引き後の株主帰属利益でみれば7000万ドル(約77億)くらいでしょうか。
UAE政府系ファンドでアブダビを拠点とするムバダラ・インベストメント(Mubadala Investment Co.)からSonyが買収する金額は2100億円とも2500億円とも書かれていますが、そのどちらでみてもかなり高い買収金額と言えます。
単純にPERでいえば27倍~33倍
Sony to acquire EMI stake from Abu Dhabi’s Mubadala for $1.9bn
上の記事によれば13億5900万ドルの借金も付いているくるそうなので、EV/EBITDAでみると23~29くらいでしょうか。現金がなんぼあるかわからないので正確なところはわかりませんが、借金がこれだけあるなら、まぁ、こんなもんでしょう。
これは、ソニーのバリュエーションである
PER13.3倍、EV/EBITDA4.32倍
からみると明らかに高すぎます。
どう考えても、ソニー側からみたらこんな高い金額でEMIを買収するのでなく、自社持ち分も一緒に纏めてどっかのファンドに売却して、そのカネで自社株買いする方が株主価値を極大化できるはずです
会社側プレゼンテーション資料によると
「音楽分野の基本戦略はコンテンツ IPの強化。ストリーミング市場の伸びから得られる事業機会を最大化するため、コンテンツ IP の質と量を強化するとともに、アーティストの発掘や育成を通して、新たな IP を生み出していく。」
と書かれています。
しかし、定量化した経営数値はまったく示されていません。
この買収によっていくら稼ぎがあがるのか、どういう意味があるのか説明が尽くされていません。
「とりあえず、売り物があったから買ったよ。」
そんな感じじゃないですか?
モノポリーってゲームやったことありますか?
一番やっちゃダメな手ですよ、それは。
ソニーの経営は、明らかに昔に戻っていっています。
事業説明会が開かれましたが、どの事業もすべて総花的に展開することばかりで、整理する事業が示されていません。そしてさらに、「教育事業に進出するぞ」と新規事業への意気込みも語られました。
別に新規事業をやることは悪いことじゃありません。
でも、新たなことをやる前に、ちゃんと今までのことを総括して、反省しなくてはイカンです。
撤退することも必要です。
というか、今のソニーは撤退すべき事業の塊みたいなもんです。
撤退しまくって、事業売却しまくって、スリムになって、自社株買いをしまくった方がぜったいに株主価値は極大化できるでしょう。
現CEOの吉田憲一郎は、ついこないだまでCFOをしていた人です。
CFOといえば最高財務責任者(chief financial officer)です。
そろばん弾きのプロのはずです。
損得勘定が得意で、ちゃんと数字で語れる奴がなる役職です。
それなのに、今回のEMIミュージック買収はどうでしょう。
こないだのスヌーピーの版権の買収はどうでしょう?
ちゃんと数字で語られましたか?
日本企業は、喉元過ぎれば熱さを忘れる悪い癖があります。
ちょっと経営が安定すると、途端に改革が鈍ります。
事業整理が滞り、あらたな天下りポストばかり作ろうとし始めます。
昔の悪い癖がぶり返します。
外国人投資家比率が57.9%と高いソニーですらこの体たらくなのですから、他の会社はいわずもがなです。
おいらは、小学生の頃から株式市場を眺めてきました。気づいた時には新聞で株式欄を眺めていました。
じっさいに相場を張り始めたのは1998年からですが、それ以前からずっとずっとみてきました。
バブル崩壊後、何度も何度も、「日本企業は生まれ変わった」と言われてきました。
たしかに、少しずつは変わってきています。
でも、変わり方はあまりにも遅いです。
蝸牛のごとき歩みの鈍さです。
そのあいだに、外国人投資家だらけになりました。
日本は資本で支配される植民地になりました。
そろそろ、こういう会社は本格的に料理されちまった方が良いと思います。
というか、されると思います。そう遠くないうちに。
マグロの解体ショーのように見世物にされて、サクドリされて刺身にされて、それをちょちょいと醤油につけて通ぶって口に運ぶ外国人たち・・・
その様子をみれば、どんな愚鈍な奴でも目が覚めると思います。
そのとき、日本は本当に変われるでしょう。