Amazon.comのジェフ・ベゾス氏が米長者番付トップに~推定資産1600億ドル~しかしいまだに慈善活動はほとんどせず~
Amazon.comのジェフ・ベゾス氏がForbes誌が毎年発表する今年の米長者番付で一位になり、24年間トップだったビル・ゲイツ氏を抜いたとのことです。
ジェフ・ベゾス氏の推定資産は1600億ドルといいますから、18兆円くらいです。
凄まじい金額です。
すでに第一線を退いているビル・ゲイツがいまだにトップだったことも驚きですが・・・
というか、ビル・ゲイツが長者番付トップになったのが24年前ということは、1994年ですね。
1994年といえば、Windows95の発売を95年に控えた前年。
当時はChicagoというコードネームで呼ばれていた時代です。
自分は当時まだ中学生で、アメリカ株の動向までは眺めていませんでしたが、その熱気は強く印象に残っています。
いまのアマゾンはその当時の熱狂を持っているでしょうか。
ジェフ・ベゾス氏が長者番付1位になる一方、アマゾンはその経営手法をめぐり非難されることが増えています。
まず第一に、トランプ大統領はことあるごとにアマゾン批判、ジェフ・ベゾス氏批判を展開しています。
今年の春には、トランプ大統領は
「アマゾン・ドットコムは米国郵政公社(USPS)を不当に取り扱っている」
「アマゾンの配達ひとつごとにUSPSは平均1.50ドルの損失を出している」
と発言。
トランプ大統領、アマゾンが郵便料金「不正」と再び非難 4月1日 ロイター
この方針の元、トランプ大統領はUSPSの事業検証を命令しました。
なお、この時点でアマゾンの配送する荷物の約6割がUSPS経由だったとのこと。
トランプ米大統領、郵政公社の事業検証を命令-アマゾンに影響か 4月13日 Bloomberg
そして、トランプ大統領はUSPSに料金増加を要請しました。
米大統領、アマゾン向け配送料倍増を郵政公社に要請=報道 5月18日 ロイター
こうしたトランプ大統領によるアマゾン批判は、
「アマゾン創業者であるジェフ・ベゾス氏が個人的に所有する新聞、ワシントン・ポスト誌がトランプ大統領の批判を繰り返していることからだ」
と指摘する声もありますが、共和党ではマルコ・ルビオ氏なども
「アマゾンによるニューエコノミーの独占は長期的に見て悪影響がある。注視してみていく必要」
Potential “new economy” monopolies will require close monitoring. From retail to entertainment @Amazon growth has meant lower prices & more convenience. But long term could mean less competition. That said, #AppleTV needs to step it up versus #Firestick https://t.co/HDR413YjIU
— Marco Rubio (@marcorubio) April 2, 2018
とのことを言っていますので、ジェフ・ベゾス氏のやり方を批判しているのは決してトランプ大統領だけではない、というのが実際のところだと思われます。
なおこうしたアマゾンおよびジェフ・ベゾス批判を繰り返しているのは共和党員だけではありません。
民主党議員であるバーニー・サンダース上院議員もまた、ジェフ・ベゾス批判で人気を取ろうとしています。
バーニー・サンダースが主張しているのは
「ジェフ・ベゾスは世界一の金持ちになったけど、彼の会社が雇っている人たちのなかには生活保護を受けている人も多い」
「ジェフ・ベゾスに雇われた低所得者たちは、政府の用意する家賃補助、フードスタンプ、医療補助などの社会保障に頼っている。」
「政府が負担しているぶんを世界一の金持ちジェフ・ベゾスの率いるアマゾンドットコムから税金として取り立てよう」
というもの。
バーニー・サンダースのFacebookフォロワーは凄く増えて、いっきに拡散。
サンダースはさらに「全米の最低賃金を15ドル以上にしよう」と煽りました。
これを受けて、アマゾンのジェフ・ベゾスCEOは時給引き上げを決定
アマゾン、従業員数十万人の賃金引き上げ 批判受け BBC 10月2日
同時に、現在7.25ドルに設定されている米国の最低賃金を15ドルに引き上げるためのロビー活動を積極化すると発表。
バーニー・サンダースから指摘されて15ドルに引き上げることになったのに、さも自社が主導して最低賃金を引き上げていっているかのように見せるあたりが、ジェフ・ベゾスのうまいところです。
しかも、さすが自他ともに認める吝嗇家ジェフ・ベゾス、今回の賃金上昇と同時にしっかり特別手当を削減しました。
たしかに15ドルに時給は引き上げましたが、同時にストックオプションやボーナスをがっつり削減したとのことwww
アマゾンの倉庫従業員、賃上げでもボーナスと株式報酬失う Bloomberg
さすがですね。
ジェフ・ベゾスのこーゆー空気読まないとこすきですw
今回のアマゾンによる最低賃金引き上げは、米国内の労働力の奪い合いの過熱化を象徴していると思います。
新規失業保険申請件数はほぼほぼ過去最低水準。
米国の雇用情勢は非常にひっ迫しており、クリスマス商戦などで年末シーズンにかけて賃金水準は放っておいても上昇傾向をたどりそうです。ならば今のうちに引き上げておこうという判断なのでしょう。
また、ジェフ・ベゾス率いるアマゾンは、その節税スキーム・課税逃れスキームでも批判されています。
ようするに、低い税率のタックスヘイブンに節税用の会社を作り、そこに知的財産権をあつめる。そこから各国のアマゾン子会社にパテント、ロゴなどを提供し、技術使用料などを徴収するという手法ですね。
このなかにはアマゾンのクラウドサービスの使用料なども含まれているんじゃないかと、個人的に感じています。Amazonクラウドの使用料として、小売事業からクラウド事業に支払っている内部取引が相当程度あるんじゃないか?とみています。(この部分は憶測です。)
こうやって作り上げられたのが、ジェフ・ベゾスの18兆円もの個人資産です。
どうなんでしょう、これ。
今は好景気なので批判的な声はさほど大きくありませんが、不況に入ってくると批判がさらに高まりそうな気がします。
別に誰がいくら持っていようとやっかむ気はないんですけど、なんとなく、風向きが悪くなると動きが早いんじゃないかなぁと心配しています。
それはアマゾンに対しても、ジェフ・ベゾス個人に対しても、です。
とくにジェフ・ベゾスは今までの富豪とことなり、慈善活動に非常に消極的な人物として知られています。
こうした雰囲気を察したのか、ジェフ・ベゾスは最近になって慈善団体や基金設立に熱心です。
ジェフ・ベゾス、幼児教育とホームレス支援で20億ドルの基金設立
ただ、ジェフ・ベゾスという男、今までの行動をみるかぎりかなりのケチにみえます。
「平均賃金は引き上げるけど、そのぶんボーナスを下げるよ」とかシレッとやるのがジェフ・ベゾスです。
先ほどの件もそうなんですが、自分はジェフ・ベゾスが本当の意味での慈善の意思で行動したのをみたことがありません。
彼の行動はすべて、計算づくでやっているようにみえます。
(ちなみにゲイツは、慈善団体に360億ドルの寄付を行っています。インフレ調整すれば500億ドルくらいでしょうか。それを考えると、もしゲイツが寄付をしていなければ、いまだに長者番付トップはジェフ・ベゾスではなくゲイツということになりそうです。ジェフ・ベゾスが真の意味で「史上最大の富豪」ではない理由 Forbes)
ジェフ・ベゾスは、ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットと異なり、富豪なのに慈善家トップ50に名前がない人物として有名でした。
慈善活動からは距離? ジェフ・ベゾスの知られざる「お金の使い道」Wired
この記事の時点で年齢はすでに53歳であり、他の富豪たちはすでに巨額の慈善団体寄付をしていて当然の年齢です。
それなのに、まったくしていなかったのがジェフ・ベゾスです。
どんな意識の持ち主か、なんとなくわかろうと思います。別に悪い意味ではなく、節約家なんでしょう。
そんなジェフ・ベゾス氏、どんな慈善活動ができるのか、twitterでフォロワーにアイデアを募集しました。
つまるところジェフ・ベゾス氏は、自分では慈善に関してこれといった信念がないのでしょう。
まさにジェフ・ベゾスこそが、西海岸のサイバー・リバタリアニズムを体現した存在だと思います。
いままで政治にもほとんど無関心でした。
そんなジェフ・ベゾスですが最近になって政治献金にも熱心に取り組み始めました。
ジェフ・ベゾス、米中間選挙を控え「1000万ドル」の政治献金
>退役軍人を議会に送り込むことを目的としたスーパーPAC(政治活動特別委員会)に1000万ドルを寄付
なんでいきなりこんなところに寄付したのかまったく理解不能ですが、しかしそこはサイバー・リバタリアンなジェフ・ベゾスです。なんらかの計算がありそうです。
とりあえずジェフ・ベゾス氏ですが、今後はもう少しアメリカの富豪らしい振る舞いが求められるようになってくると思います。
そうでなければ、批判の声は高まりこそすれ、おさまることはないでしょう。
以上。