『東和不動産』についてみてみよう~トヨタグループの株式持ち合い構造の扇の要
今回は毛色を変えて、非上場企業をみていきます。
トヨタグループの扇の要こと、東和不動産です。
東和不動産とは?
東和不動産はトヨタグループ各社(現:トヨタ自動車、豊田自動織機、豊田通商)の出資によって1953年に作られた不動産企業です。
東和不動産は豊田家の事業継承会社
東和不動産はトヨタグループの企業です。
そして、トヨタグループ各社と株式の持ち合いをしています。
たとえばトヨタ自動車の7.85%の株式は豊田自動織機が保有、3.04%はデンソーが保有していますが、
その豊田自動織機の株式のうち、トヨタは24.67%、デンソーが9.55%、藤和不動産が5.25%、豊田通商が4.93%、アイシン精機が2.12%保有しています。
またデンソーの株式をみても、トヨタ自動車が24.23%、豊田自動織機が8.89%、東和不動産が4.27%、アイシン精機が1.6%保有しています。
他にも書けばいっぱいありますが、とりあえず言えることは、
「トヨタグループは株式持ち合いでグッチョグチョに絡み合っていて、その扇の要になっているのが、非上場の東和不動産だ」
ということです。
豊田家はトヨタ自動車を真に株主にオープンな会社にはしたくないのでしょう。
少数株主による意見が極力通らないように、自分たちで鉄壁の守りをとろうとしているようにみえます。
トヨタグループの持ち合い構造を脇で支えているのが東和不動産です。
なお、東和不動産は(有価証券報告書から見える範囲だけでも)、デンソー株を4.27%、豊田自動織機を5.25%、トヨタ紡織を9.88%、アイシン精機を2.35%、愛知製 鋼を2.35%、中日本興業を7.54%保有しています。
また、トヨタ自動車は東和不動産の株式を40%ぎりぎりを保有していたと記憶しています(手元に資料がないので現況はわかりませんが)。
以前はトヨタ自動車が50%程度保有していたのですが、商法から会社法になるにあたり、40%以上保有していると議決権が消えてしまう問題があり、トヨタ自動車の保有を減らしてグループ会社の保有を増やした経緯があります。
東和不動産はトヨタグループの大家さん~ミッドランドスクエアを運営~
東和不動産はトヨタグループの企業が入る、名古屋駅前のミッドランドスクエアの大家さんです。
なお他にも、以下のビルを保有しています。
- ミッドランドスクエア
- センチュリー豊田ビル
- センチュリー三田ビル
- 名古屋クロスコートタワー
- 桜通豊田ビル
- シンフォニー豊田ビル
- 大阪豊田ビル
- 柳橋食品ビル
一つ一つみていけばわかりますが、トヨタグループが多く入っています。
東和不動産はトヨタグループから集金する役目を果たす
要するに、東和不動産は家賃という形でトヨタグループからお金を集める役割を果たしています。
トヨタグループでまわしていますから空室リスクがなく、安定して稼げます。
さすがトヨタグループ、外部にカネを流さず、豊田家に合法的にカネが流れ込みやすいようにしているあたりはさすがです。
カルロス・ゴーンみたいに成り上がった人とは違います。
スマートに会社の利益をかき集めます。
そして、豊田家にどれだけ流れているのか、その全貌は見えないようになっています。
さすがです。
もし創業家一族に多額のカネが流れ込んでいることがミエミエだったら、トヨタのクルマを買おうとする人が減るかもしれませんからね。
東和不動産という非上場企業を利用して流すようにすれば、資金の流れがみえない・・・
上手いやり方です。
カルロス・ゴーンは会社を私物化していると叩かれましたが、豊田家は叩かれずに済みます。
全貌がみえないからですね。
スマートですね。
東和不動産の役員はトヨタグループ重鎮、トップは豊田章男
東和不動産の役員は代々トヨタグループの経営幹部を務めた人物の天下りポストでした。
それだけ豊田家にとって信頼できる相手についてほしいということでしょう。
また、トップはとうぜん豊田家から出ており、トヨタ自動車の承継も兼ねていました。
現在の東和不動産トップは豊田章男ですが、先代は豊田章一郎でした。
この東和不動産のトップ交代が、トヨタ自動車のトップ交代を予感させるとして話題になってから数年後、ちゃんとトヨタ自動車のトップも豊田章男になりました。
東和不動産は豊田家の権力継承ユニットでもあるのでしょう
そういうふうにできているのです。
ですから、数十年後、豊田章男から誰がこの東和不動産のトップを継ぐことになるか・・・それをみれば、トヨタグループのトップも占うことができるわけです。
東和不動産は非上場で役員報酬わからず
ちなみに、東和不動産は非上場企業ですから役員報酬の額はわかりません。
トヨタグループでがっちり固めてますから、役員報酬の開示も外には漏れてきません。
役員報酬で豊田家にじゃぶじゃぶ流れていてもわからないわけです。
カルロス・ゴーンに比べて豊田章男の報酬額が少なすぎるとネットで言っている人たちがいますが、こういうスキームを理解していたら、そういう発言はできないはずです。
カルロス・ゴーンと豊田章男とは生まれも育ちも稼ぐ手段も違う、そこをまず理解しないとです。
とりあえず、今回は東和不動産について書いてみました。
トヨタ自動車各社への投資の役に立つかわかりませんが、一応、株主ならば事実は知っておいた方が良いと思ってかきました。
ガバナンス上の問題は、平時にはなんでもないことなんですが、いざという時に大きな問題につながりかねません。
トヨタ自動車およびトヨタグループには、そういった芽があります。
その原因のひとつが、この東和不動産であると思います。
もしトヨタグループ各社に投資するのであれば(とくに長期投資であればあるほど)、この点は十分に注意すべきだと思います。
以上です。