仏マクロン大統領が年金生活者向け減税などを含むバラマキ策を発表~黄色いベスト運動を受けて~
フランスのマクロン大統領、『黄色いベスト運動』後はじめてのテレビ演説
フランスのマクロン大統領が『黄色いベスト運動』後、初めてのテレビ演説を行いました。
このなかで、かなり財政に影響してきそうなバラマキ策を2件発表しています。
今回はこれをみていきましょう。
『黄色いベスト運動』を受け、年金生活者向け社会保障税免除や最低賃金引上げを発表
『黄色いベスト運動』後の世論調査によると、調査会社4社のうち一社は政権支持率が10%台をつけたと発表するなど、マクロン大統領の支持率は急速に低下しています。
この状況を受けて、フランスのマクロン大統領が世論におもねる積極的なバラマキ策をとっています。
具体的には
- 収入が2000ユーロ以下の年金生活者に対しては社会保障税の引き上げが免除
- 最低賃金を2019年から1カ月当たり100ユーロ引き上げ。ただし雇用者の負担は発生せず
というもの。
『黄色いベスト運動』によるバラマキ~最低賃金の引き上げ
最低賃金100ユーロ引き上げ、しかし雇用者負担が発生せず・・・ということは、差額は公的補助が行われるということでしょう。
これによって問題になるのは
- 制度的な不公平感をどう解消するか(現在最低賃金レベルの支払いをしている雇用主だけ潤う可能性)
- 財源の確保の問題
とくに財源の確保は非常に重要です。
『黄色いベスト運動』によって壊される財政規律
EUは各国に厳しい財政規律を強いています。
最近だとイタリアとEU当局とのあいだで来年度予算案をめぐりスッタモンダがあった(というか現在進行中)なのは広く知られていますが、実はフランスの財政もそんなによろしくはないわけです。
マクロン政権は大型の法人減税などを盛り込んだ予算案を成立させており、この穴埋めとして社会保障税増税や燃料税の引き上げを考えていました。
しかし、先に燃料税が引き上げ停止に追い込まれていますし、これで社会保障税増税を一部免除、さらに最低賃金引上げにともなう財政負担をするようですと、財政悪化は避けられません。
フランスはイタリアに対して強硬に財政再建を要求してきましたが、そういうことを言っていたフランスの側がEU財政規律(GDP比3%未満)を守れない可能性が高くなってきています。
たしか燃料税引上げ凍結前の状況で2.8%の予想ですから、今回のバラマキを考えた場合、確実にオーバーしてくると思われます。
フランス経済は今回のデモの影響で観光業を中心に冷え込むことが予想され、これらが財政問題に大きな影響を与えています。
以上。