日本の自動車産業は、今後いろいろヤバいんじゃないかと思う理由
以前から書いていることの焼き直しになるんですが、ちょっとまとめて予想させてもらいたいと思います。
自分は、日本の自動車産業の未来に、かなりの不安を抱いています。
まとめると、以下の3点になります。
- 円高耐性が弱い
- EV化の進展によるモジュール化、ユニット化、共通化による生産性向上
- 所有からシェア、レンタルなどへの移行によるコダワリの消失
- 中国における外資マジョリティOK
ひとつひとつ見ていきます。
日本の自動車メーカーがヤバいかもな理由1~円高耐性の弱さ
日本の自動車産業の弱さ、それは今も昔も円高耐性の弱さだと思います。
近年、円高時にも利益を出せるようになったと言われる本邦自動車産業ですが、やはり円高になれば輸出数量は減少する傾向が見て取れます。
ここ数年は円安傾向が続いていたので気が緩んでいる部分はあると思います。
為替は長期的にみると実質実効レートに近づきます。
そういう意味では、日本の自動車メーカーの経営は、いま非常にぬるい湯の中にいる状態にみえます。
日本の自動車メーカーがヤバいかもな理由2~EV化の進展によるモジュール化、ユニット化、共通化による生産性向上
いま、世界は猛烈な勢いで電気自動車(EV)化が進展しています。
ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなど内燃機関の開発は、新規のプロジェクトではほとんど行われない状況にあります。
将来的にEV化がどれだけ進むかについては、専門家でも大きく予想に幅があります。
しかし個人的には、もはや方向性は決まったとみています。
- かつてランプが廃れ、電灯に代わっていったように
- かつて石炭の使用が廃れ、石油の使用が増加していったように・・・
- かつてワープロが消え、PC98が消え、PC/ATが普及していったように・・・
- かつてガラケーが消え、スマホが普及していったように・・・
なんでもそうですが時代の方向性は変わりません。
ガソリン車、ディーゼル車はオワコン技術です。
車載用固定電池などの技術的なブレークスルーが起こればなおさらでしょう。
そして、このEV化とともに進展していくのが、自動車部品のユニット化、モジュール化です。
もちろん、ユニット化、モジュール化は以前からありました。
エンジンの組み立てだって、ある意味ではモジュール化みたいなもんです。
ですがEVでは、このモジュール化が一層進展していきます。
パーツ点数は間違いなく少なくなります。
これにより、組付け精度の確認に要する部分が少なくなります。
テスラのイーロン・マスクの受け売りになりますが、自動車はスマホの生産のように進歩していくでしょう。
そうした価値観のもとテスラはモデル3の生産効率を上げてきましたが、昨年秋、ついにこの生産モデルが黒字化を遂げました。
イーロンマスクは正しかったのです。
テスラ・モデル3がついに黒字化!~既存自動車メーカーは警戒すべき
これは、生産管理技術に優れ、それをアドバンテージとしてきたメーカーが優位性を失う局面ということです。
簡単にいえば、トヨタなど国産車メーカーがアドバンテージを失うことになります。
日本の自動車メーカーがヤバいかもな理由3~所有からシェア、レンタルなどへの移行によるコダワリの消失
この3は、2で挙げた内容とも被ります。
いま世界的に、シェアエコノミーが急速に普及していっています。
ものを持たず、利用するときだけ借りる形態が普及してきています。
こういった動きは、自動運転技術が確立され、無人タクシーが供給されるようになればさらに進むでしょう。
すると何が起きるか?
簡単に言ってしまえば、「クルマへのこだわりが消える」ということです。
クルマに対して所有欲を持たず、道具としてしか見ない人が増えるということです。
こうなると、より共通化した内装、システムで十分と考える人が増えます。
既にそういう人は増えていますが、現在の生産システムはそうしたマスを狙ったマーケティングができていないように感じます。
今後は、売れる車種、仕様への集中が進むことになるでしょう。
クルマのユニクロ化です。
今は自動車のひとつのラインに数種の車種、仕様が流れるのがあたりまえですが、そのうち、一つのラインには一つの車種だけが流れ、ほぼすべての組付け作業などを自動化するようになると思います。
そうしたとき日本的な自動車製造ラインは時代遅れになるのではないか、と感じます。
もちろん、現場の方からしたら反論はあると思います。
いやいや、ずっと人間は生産現場で必要だ、という声もあろうかと思います。
クルマには愛が必要だと豊田章男社長は言っていますが、そういう見方もあるでしょう。
できれば、そういう価値観の方の反論も聞いてみたいので、遠慮なくリプください。現場の方やクルマ好きな方の声を聞いてみたいです。
日本の自動車メーカーがヤバいかもな理由4~中国における外資マジョリティを認める制度変更
中国政府は、外資自動車メーカーにマジョリティ出資を認め始めています。
これは米中貿易戦争で中国側が改革開放を続けていくアピールをしているなかで打ち出された方針です。
突如として示されたこの方針に、主に欧州系自動車メーカーが跳び付きました。
まってました!とばかりに。
すでにBMWはブリリアンスチャイナから合弁持ち株の多くを買い取る方向ですし、ダイムラーも北京汽車との合弁の出資比率を引き上げに前向きです。
テスラは中国国内に自社工場を建てると発表しました。
ボルボも中国工場を立ち上げます。
各社、目先だけで数千億レベルの投資を用意しています。
あわせて2兆円超でしょうか?
とりあえず、今後は中国でBMWやメルセデスメンツ、ボルボ、テスラなどが生産されます。
もちろん、各社の投資はもっぱらEVに寄ったものになりそうです。
先ほども書いたように、ガソリン車やディーゼル車と異なり、EVは生産管理が楽だと言われています。
そして、共通化した仕様の自動車を大量生産するのなら、一番重要なのはサプライチェーンの構築です。
これは中国が一番先行しています。
中国はEV生産に関し、コバルトやリチウム、ニッケルなどの電池材料調達から最終製品出荷まで一貫するサプライチェーンを構築しています。
これを利用したいと考える自動車メーカーは多いです。
特にしがらみのない欧州企業は。
今後は、BMWやダイムラー、ボルボのEVが大量に中国で生産されることになるでしょう。
そして、海外にどんどん輸出されることになるでしょう。
その多くは、日本に来ると思います。
日本人は中国の名もなきメーカーの製品は嫌ですが、BMWやベンツ、ボルボなど欧州のブランドのロゴがついていれば喜んで購入すると思います。
それはたとえば、アップルが中国国内で生産したiPhoneを日本人がありがたがって購入しているのと同じように。
今後、日本は海外からの自動車の輸入が増えていくと思われます。
外車メーカーにとっては、販売店網の構築だけが唯一のネックであり、逆に言うと、国内メーカーには販社の結束力のみが国内市場を守る唯一のバリアになる可能性がありますが、それすらコスト的には見合わないものになる可能性が高いです。
中国製品の質は飛躍的に向上しており、すでに時代は製品の質を競う段階から次の段階へと大きく転換してきているようにみえます。
こうした状況下では、よりスリムに、シンプルに生産体制を構築しなおす必要があります。
簡単に言ってしまえば、大量の人員解雇です。
これをドラスチックにできるか否か、そこが分かれ目になるのではないか、と見ています。
この点、ホンダはできそうですが、トヨタは難しそうです。
そして、カルロス・ゴーンなきあと、内向きになった日産もそういった改革は難しそうです。
非常に危険な状況が、ひたひたと近づいてきているようにみえます。
心しておいた方がよいです。
以上。