中国が補助金をやめることはできない~米中閣僚級交渉
米中通商協議が閣僚級で行われました。
中国、補助金やめる方針表明 具体策は示さず=通商協議関係筋 ロイター
こちらの記事の写真をみると、中国側は劉鶴副首相、易綱中銀総裁。米国側はムニューチン財務長官、ライトハイザーUSTR通商代表部代表の姿が確認されます。
ようするに、トランプ大統領の決定までの地ならしです。
この協議のなかで中国は、国内産業への補助金をやめるとの方針を表明したそうです。
これを受け、中国側が軟化しているとみる向きもあります。
お互いに、早く協議を妥結させたいのだろうと市場からは見られています。
その見方は、たぶん正しいです。
しかし、今回のこの「国内産業への補助金をやめる」という条項が含まれた場合、将来的にいろいろと面倒なことになるんじゃないかと思います。
中国では国内銀行はすべて半国有銀行
中国では、上場非上場にかかわらず、ほぼすべては半国有銀行です。
というわけで、中国で融資を受けようと思った場合、どんなふうに頑張ってみても、それは国から迂回されて借りていることと等しいわけです。
ぶっちゃけた話、アメリカがイチャモンつけようと思えば、これはすべて政府による補助金ということになるはずです。
しかし、こうした国有銀行による融資を補助金と言ってしまうと、中国で補助金を受けずに経営している企業なんてなくなってしまいます。
中国の補助金の大半は省、市、郷レベル
また、中国の補助金の大半は政府による補助金ではなく、省や市、郷など地方政府によるものです。
中国はそもそもにおいて中央政府の管理が末端まで行き届いていません。
中国は上が規制すれば下が対策をする国ですが、それは地方行政区レベルでも同じことです。
中央政府が指示しても、それ通りにならないのが地方行政区です。
補助金をなくせといっても、すぐになくなるはずがありません。
そもそもアメリカだって州・市レベルで補助金をたっぷりやっている
もっというと、そもそもアメリカだって州や市レベルで大量の補助金を出しています。
例えばトヨタの工場を誘致したテキサス州とか、Amazonの第二本社を誘致していたNY市とか、税金を安くしたり、補助金をつけるなどして産業を誘致するのはどこの国でもやっています。
なぜ中国だけが叩かれるのか、という問題もあります。
結局、具体策なんて決めようがない
つまるところ、補助金をどの程度カットするかなどというのは、具体的なものを決めようがありません。
この議論をし始めたら、たぶん数か月で済む話ではなくなるはず。
いつまでも米中関税は現状のままのこり、追加の関税は導入延期となる可能性があります。
その一方、アメリカとしてはこれまでの関税措置を残すことになります。
トランプ大統領は、米中貿易協議が解決すれば、これまでの関税も撤廃すると言っています。
しかし、米中貿易協議が解決しなければ、追加で関税を導入すると言っています。
もしかしたら、トランプ大統領の頭のなかには、追加で関税を導入せず、かといって通商協議を解決して関税を引き下げるようなこともなく、だらだらと今のままの協議をつづけていけばいい・・・そんな考えがあるんじゃないかとすら思えてきました。
その方が、交渉的には米国側に痛みがなく、中国に圧力を加えられますから。
以上です。