【雑感】介護保険制度は世紀の愚策だったと思う件

【雑感】介護保険制度は世紀の愚策だったと思う件

 

介護保険制度導入時に語られていた失業者対策の目的はなんだったのか?

多くの人はもはや覚えていないかもしれませんが、介護保険制度導入時には、たしかに

「失業者対策」

という意味合いがありました。

 

単純に、介護を充実させようだとか、老人福祉法や老人保健法の代わりになるものを作ろうだとか、そういった意図だけではありませんでした。

多くの人は当時の議論をすっかり忘れていると思います。

介護保険法の成立の過程で、たしかに、失業者対策という側面が囃されていたのは事実です。

 

 

「介護で雇用の場を確保」

介護保険法が成立したのは1997年12月17日です。

当時日本経済はガッタガタに傾いていました。

それでいて、まだリストラは本格化しておらず、今後大量の失業者が生まれてくる、どうしよう?

と労働省の政策担当者たちは頭を悩ませていた時期でした。(当時はまだ厚生労働省にはなっていません。)

そうした一方で、厚生省では今後の老人増大に備えて介護施設の充実をしていかなければならない

けれど既存の老人保健法などは既に破綻状態

何らかの新たな財源が必要だ。

 

・・・というそれぞれの立場から、推し進められたのが介護保険法でした。

当時はメディアも賛否わかれていましたが、1996年に始まる橋本第一次内閣で厚生大臣を務めた

「菅直人」

の清潔で、老人に寄りそうようなイメージも相まって(当時は人気者だったんですよ)、多くの国民が

「まぁ、介護は重要だし、失業者の就労の場にもなるし、いいんじゃないか?」

みたいな感じで導入されたのが、介護保険制度でした。

 

 

介護保険制度に対して当時自分が感じたこと

当時から自分は、この介護保険制度に対して懐疑的でした。

というより、絶対に無茶だと思いましたし、きっとウマい汁を吸う奴が出てくるとみていました。

 

まず、今まで作られてきた老人医療制度がことごとく財政問題で頓挫してきたのに、新しい制度が上手くいくとは思えませんでした。

明らかに弥縫策であることは、当時からテレビタックルやサンデープロジェクトなどで盛んに議論されていました。

介護保険料だって、徐々に上がっていくことは予想されていました。

 

また、大企業をリストラされた中高年失業者を介護人材にするだなんて、どう考えても難しいと個人的に感じました。

今でもそうですが、当時も大企業の中年男性というのはとても横柄な方が多く、とくにリストラの嵐がふきまくりそうな電機、自動車、金融のオッサンなんて、介護に向いていないのは子供の目にも明らかでした。

 

さらには、介護職の所得水準は当時から低く、制度設計時点でも大して上昇しないことが見えていましたから、若者をそこに就けることは将来的な購買力を奪うことになりかねず、経済に非常に問題となることはみえていました。

 

それ以前に、若者はそもそも減っていくのに、どうして介護人材が確保できるのか疑問でしたし、将来的にはロボット化か、もしくは外国人労働者を導入するしかない、とみていました。

 

こうした見方は自分だけでなく、他の方も同じだったと思います。

当時、介護の現場をロボット化することの問題点を指摘した「老人Z」というアニメが作られました。

AKIRAの大友克洋氏が脚本、北久保弘之監督で製作された作品です。

多くの人が、介護人材の枯渇に気づいていました。

 

 

 

介護制度をめぐる悪い予感はあたった・・・

20年経ち、その悪い予感はあたりました。

制度設計当時に懸念されていた失業問題なんて、当の昔に解消しました。

そして、現在は労働力不足です。

ここ10年程、医療介護にはどんどん労働力が吸い上げられていますが、それでも足りない状況です。

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かつて日本は海外から製造業でガンガン外貨を稼いでいましたが、そうした産業で利用されてきた労働力は、爺さん婆さんのシモの世話に今では回されてしまっています。

 

また、こうした深刻な人手不足を補うため、介護人材を外国から呼んでこようとか、機械に置き換えようとかいう話が出ています。

まず、機械を導入すると言ったって、機械はタダじゃありません。

メンテだって必要です。

言うは易し、行うは難しです。

介護労働の生産性を上げるというのは、労働生産性だけでなく、資本生産性も含めて総合的にみないといけません。

 

また、海外から出稼ぎの介護人材を呼ぶと言っても、まず日本語でのコミュニケーションがそこそことれる外国人が、日本でわざわざ介護職をやりたいだろうか?という点から考えてみる必要があるでしょう。

老人にイビられながら、シモの世話をせっせとやってくれる便利な外国人像を思い描いているのだとしたら、酷い差別意識ですし、そんなものはありえないと断言できます。

仮にそういったシステムが上手く機能するようになったとしても、今度は国際収支にひずみが出てくるはずです。

出稼ぎな彼ら彼女らは、本国にせっせと外貨送金するでしょう。

日本人の購買力は相対的に、長期的に、落ちていくはずです。

 

すでに介護保険料はどんどん上昇していっており、社会保険料負担など全体が家計に大きくのしかかる状態になってきています。

これが勤労者世帯の購買力低下の一因となっているのは明らかです。

 

 

介護保険制度なんていらなかったはず

はっきりいって、介護保険の制度設計自体に問題があったと思います。

どう考えても諦めるべきところは諦めるべきでした。

変に制度設計すると、ズルいことをやる奴もでてくるし、ひずみが出る。

だったら何もしないというのも、一つの手です。

老後を安心して過ごしたい奴は、家庭を作って子作りして、子供の教育を真面目にやって、親孝行な優しい息子・娘を育てたらいいんです。

昔はそれが当たり前でした。

なんでもかんでも政府に頼ろうという姿勢が、いろいろな制度疲労を起こしています。

介護に限らず、これはどんなことにも当てはまります。

あらゆる面で、市場の自由に任せていけばいいと思います。

以上。