SRモータ(スイッチリラクタンスモータ)をEV向けに採用した日本電産

SRモータ(スイッチリラクタンスモータ)をEV向けに採用した日本電産

 

 

SRモータ(スイッチリラクタンスモータ)を日本電産はEV向けに採用

先日、日本電産の車載向けトラクションモータ事業について記事を書いたとき、書きそびれていたことがありました。

EV向けトラクションモーターシステム「E-Axle」市場急拡大~日本電産やボッシュなど本腰

この日本電産によるEV向けトラクションモーターシステムですが、採用している技術は現在一般的なEVやハイブリッド車に採用されているブラシレスモーターとは異なります。

SRモータ(スイッチリラクタンスモータ)といって、どちらかというとステッピングモータに近いものになります。




 

 

SRモータ(スイッチリラクタンスモータ)の特徴

SRモータ(スイッチリラクタンスモータ)の特徴としては以下のようになります。

(なにぶん中卒の知識ですので誤りもあろうかと思います。誤記あれば指摘お願いします。)

 

  1. 永久磁石がいらない(ネオジムなどのレアアースがいらない)
  2. ケイ素鋼と銅線だけで作れるので安価
  3. 低速時の回転制御が難しい(騒音・振動の発生)
  4. ピーク出力自体は大きい(軽量化)

 

材料コストが削減できるSRモータ(スイッチリラクタンスモータ)

1と2については非常にメリットです。

レアアース、とくにネオジムは中国がガッツリとシェアを握っており、EV時代にモータ向けに需要が拡大する中で安定供給に不安がありました。

これがSRモータ(スイッチリラクタンスモータ)なら心配不要となります。

(なお、SRモータにもネオジム利用して高出力を目指すタイプもあるとのことなのですが、今回はあえて外して考えています。)

多くのEV向けモータ開発企業はブラシレスモータを中心に考えていますから、どうしても材料コストがかかります。

このぶんをSRモータ(スイッチリラクタンスモータ)ではガッツリ削れる可能性があります。

 

 

制御が難しいSRモータ(スイッチリラクタンスモータ)

3に関してはSRモータ(スイッチリラクタンスモータ)のデメリットと言えます。

SRモータ(スイッチリラクタンスモータ)は低速時に回転が安定せず、トルク制御が難しく、振動、騒音も発生しやすいといわれています。

かなり高度なスイッチング周波数の制御技術が必要になるとのことですが、今回の日本電産のEV向けトラクションモーター開発の凄いところは、これを克服したことにある・・・との指摘をされている方がいました。

https://twitter.com/sukebeengineer/status/1122419826398388224

なるほど、という視点です。

確かにそういう意味で、今回の日本電産の車載トラクションモータ開発は凄いんですね。

SRモータ(スイッチリラクタンスモータ)は基本的に効率はいいはずなんで、ピーク出力は高く出せる、とされています。

そういった点で、ブラシレスモータよりも軽くはできるんじゃないかと思います。

あとは制御技術・・・ここを克服したことが、今回の日本電産の凄さなんじゃないかと。

 

 

 

SRモータ(スイッチリラクタンスモータ)技術をエマソン・エレクトリックから買収した日本電産

今回、日本電産が車載向けとして投入するトラクションモータシステムですが、これに使われるSRモータ(スイッチリラクタンスモータ)の技術は、アメリカのエマソン・エレクトリックから2016年頃に買収した技術がもとになっているようです。

エマソン・エレクトリックはかねてよりSRモータ(スイッチリラクタンスモータ)の技術開発に着手

当初は振動や騒音が多くてもかまわない用途、たとえば農機具や建機など向けに搭載していたようですが、日本電産の永守さんはこの技術の進展に期待したのでしょう。

1000億円を超える価格でこのエマーソン・エレクトリックを買収しました。

その後、開発を重ねて振動や騒音が出にくいように制御技術を磨いた・・・そして投入されたのが、今回のEV向けトラクションモーターシステムということになります。

 

 

SRモータ(スイッチリラクタンスモータ)が主流になれば、ジスプロシウムフリーやネオジムフリー磁石開発は…

SRモータ(スイッチリラクタンスモータ)だけがEV向けモーターとして有力なのか、それとも、快適性を重視した用途にはやはり既存のモータ技術の方が有利なのか。

そこらへんは実物が出てこないことにはまだ何とも言えません。

ただ、技術の進化により一つの可能性がみえてきたのは非常に喜ばしいことです。

つまり、ネオジムフリーやジスプロシウムフリーを素材技術の面から頑張らなくても、制御技術の面でカバーできるかも?という点です。

ネオジムフリーやジスプロシウムフリーは日立金属や大同特殊鋼あたりが必死に研究していますが、やはりいろいろと課題はあるようです。

こうした開発の動向にも、日本電産のSRモータ(スイッチリラクタンスモータ)の展開は影響してくるかもしれません。

とりあえず、以上になります。