貿易統計2018年5月分 化学製品の最終需要家には受難の季節

貿易統計2018年5月分 原粗油輸入増加で大幅赤字

 

財務省関税局より貿易統計2018年5月分が発表されました。

 

輸 出 6,323,324 5,851,616 8.1
輸 入 6,901,645 6,056,015 14.0
差 引 △578,321 △204,399 182.9

 

輸出入ともに増えましたが、とくに輸入の大幅増加によって三か月ぶりの赤字に転落しています。

 

輸出品目の増加寄与度上位は

品名 数量伸率 金額伸率
 自動車 8.2 7.1
 半導体等製造装置 18.6 23.4
 自動車の部分品 7.5 10.4
 鉄鋼 0.8 7.8
 非鉄金属 11.8 23.7
 半導体等電子部品 8.4
 電気計測機器 19.7
 プラスチック 2.2 9.2

自動車は寄与度上位だが、かつてほどの勢いがない。鉄鋼、電子部品、プラスチック(高機能プラ)なども一頃の勢いはない。

半導体製造装置と電気計測機器は好調。

ちなみにリスト外では、建設用鉱山用機械、加熱用冷却用機器、繊維機械、紙類紙製品、電池などが金額ベースで二けた増となっている。

建機はコマツと日立建機、加熱冷却は不明、繊維機械は島精機、紙パルプは日本製紙と王子製紙、電池はパナソニックあたりが関連か?

 

 

逆に減少寄与度上位は

品名 数量伸率 金額伸率
 科学光学機器 -3.8
 船舶 1.8 -44.4

特に船舶のマイナス寄与度が大きく-1.1となっている。これが輸出の下押し圧力になっている。

 

 

 

つぎに輸入品目の増加寄与度上位は

品名 数量伸率 金額伸率
 原油及び粗油 0.4 28.6
 航空機類 264.4
 液化天然ガス 2.7 13.1
 医薬品 3.5 17.8
 非鉄金属鉱 43.7 30.6
 石油製品 26.9
 有機化合物 21.7
 非鉄金属 10.4 20.8
 衣類・同付属品 13.4
 石炭 9.2 12.8
 半導体等電子部品 10.9

原粗油、液化天然ガスLNG、石油製品の輸入が際立っている。これらを原料とする有機化合物、医薬品も恒常的に上昇している。

非鉄金属鉱も国内精錬の増加で右肩上がり。

また、特別要因として航空機の輸入もこの月は多かった。

 

 

国別に貿易黒字額上位をみると、以下のようになっている。

輸出価額 伸率 輸入価額 伸率 差引価額 伸率
 アメリカ合衆国 1,145,891 5.8 805,186 19.9 340,705 -17.3
 香港 283,904 -4.6 10,674 0.7 273,230 -4.8
 大韓民国 463,132 -0.6 291,071 12.7 172,061 -17.1
 シンガポール 224,062 11.5 91,379 16.9 132,683 8.1
 台湾 374,994 12.5 249,364 12.2 125,630 12.9
 オランダ 113,082 16.7 23,296 27.1 89,786 14.2
 メキシコ 105,328 4.2 50,918 17.1 54,410 -5.5
 タイ 273,343 10.6 227,130 6.9 46,213 33.1
 インド 96,155 32.9 53,387 7.8 42,768 87.4
 英国 116,243 -8.1 74,056 16.3 42,187 -32.8

圧倒的にアメリカへの輸出が大きいことがわかるが、東アジア、東南アジア、中米、欧州とそこそこ満遍なく貿易で稼いでいることがわかる。この点が、中国などと日本が異なる点である。

 

 

 

国別に貿易赤字額上位をみると以下のようになっている。

輸出価額 伸率 輸入価額 伸率 差引価額 伸率
 中華人民共和国 1,272,297 13.9 1,552,505 8.6 -280,208 -10.4
 サウジアラビア 26,925 6 299,609 34.6 -272,684 38.3
 オーストラリア 157,574 28.1 417,066 21.1 -259,492 17.3
 アラブ首長国連邦 66,911 29.3 223,472 13.7 -156,561 8.1
 カタール 8,387 1.1 131,775 61.1 -123,388 67.9
 インドネシア 114,094 -0.3 197,739 14.5 -83,645 43.8
 イタリア 40,471 -54 121,676 22.3 -81,205 598.7
 ロシア 60,948 2.4 134,413 -8 -73,465 -15.2
 ドイツ 170,223 7.3 238,513 11 -68,290 21.6
 アイルランド 9,723 23.7 72,937 36.1 -63,214 38.3

中国は香港と合わせてみる必要がある。実際には日本と中国との貿易関係はほぼ差し引きゼロの状態。

実際の貿易赤字は、サウジアラビア、UAE、カタールなど中東各国にたいしてのものが大きい。これは原粗油および化学製品などの輸入によるもの。

 

 

とりあえず、5月の貿易統計からいえることは、交易条件がかなり悪化しつつあるはず、ということ。夏から秋にかけてマージン悪化で業績を落とすところが出てくるはず。とくに化学製品の最終的な需要家は厳しいんじゃなかろうか、と思う。たとえば容器やカーペット業界などはこういう環境ではボロボロな決算を出しやすい。具体的なことは言わないが(小粒すぎるので)、そういった銘柄が下げ始めたら、売りで入るのも一興かもしれない。

 

以上。