以下は単なるコラムです。
ニュースまとめに書くにはあまりにも長すぎるのでこちらに書きました。
読んでもカネにはなりません。
飛ばしても大丈夫です。
中国政府、景気対策のため鉄道建設投資を1兆円積み増し~中国鉄路総公司は負債総額約80兆円、さらなる債務増大へ~
国家発展改革委員会と中国鉄路総公司は協議の結果、鉄道建設投資を再度拡大させる方針だそうです。
今朝の日経新聞が以下のように伝えています。
要約すると以下のようになります。
- 2018年の鉄道建設投資を年初計画の7320億元から1割増の8000億元にする。(約1兆880億円積み増し)
- 20年以降に着工する予定だった四川省~チベット自治区などの鉄道建設を前倒しする。
- 17年より新規承認が凍結されていた地下鉄建設計画(地方政府が投資主体)の承認も再開
- 高速鉄道の投資1億元につき、橋梁や線路などに利用するために鋼材3300トンを使用。今回の投資上積みで鋼材需要が200万トン以上増加。
- 17年の中国から米国への鉄鋼輸出は118万トンなので、貿易戦争で減少する需要を鉄道への投資でカバーできる。
- 鉄道事業を運営する中国鉄路総公司の17年総収入は1兆元超、税引き前利益18億元。負債総額は約5兆元(約80兆円)、支払利息760億元(約1兆2000億円)。
中国政府によるリーマンショック後の景気刺激策の中心は鉄道建設。
- 09年の鉄道建設投資は前年比7割増の7045億元、10年には8000億元突破
- 列車衝突事故のあった11年以降には鉄道省が解体されて一時的に投資額が5906億元まで減ったことはあったが、14年からはふたたび8000億元台に回復。
- 16年には東西8本南北8本の拘束鉄道を整備する「八横八縦」を策定
- 18年は地方財政の健全化を目指して、当初は7000億元台に抑えていた。これをふたたび8000億元台に戻す。
という内容。
さて、この件で思うことは、この
中国鉄路総公司の負債総額5兆元(約80兆円)という規模
のデカさ。
いくらなんでもそれはヤバすぎる・・・。
ちなみに、リーマンショックのリーマンですら65兆円くらいです。
フレディマックとファニーメイをあわせても40兆円くらいです。
負債が大きくなりがちな金融セクターにあって、この程度。
GMとかは破綻時に16兆円程度の負債規模でした。
クライスラーとかは5兆円。
テキサコなんかも4兆円ちょっとかな。
デルタ航空とかユナイテッドエアライン、ノースウェストなんかは2~3兆円くらいだと思います。
ウェスチングハウスとかは1兆円程度です。
ようするに、桁がちょっと違う。
負債総額80兆円ってのはかなり凄まじい大きさです。
そして、さらに驚くのが
中国鉄路総公司の負債総額は約5兆元、支払利息760億元という金利負担の低さ
です。
5兆で760億ですから計算しやすいですね。金利は1.52%です。
たぶん、中国鉄路総公司にかぎらず、中国の多くの国営企業はこういった低い金利でプロジェクトを展開してきたんでしょう。どう考えても、金利水準がこの規模の負債に見合っていません。
もちろん、国営企業ですからそこら辺を割り引いて考える必要がある。
ただ、中国の国債としてみてもこの金利水準は低すぎる。
かならず政府部門のどこかでそのぶんの負担がされているわけです。
これと似た公図は日本の旧国鉄(日本国有鉄道、現JR)で行われていました。
そして、その国有鉄道に景気刺激の調整弁を期待するあたりも、かつての日本とそっくりです。
日本も中国もやっていることがなんらかわっていませんが、規模感だけがさすがに大陸的です。
もし仮に、中国がこの景気刺激策で金利上昇に向かったなら、いったいどうなるのでしょうか?(中国の経常収支は赤字側におちてきています。そして、貿易収支は米国以外の国に対しては均衡しています。)
中国1-3月期経常収支が約17年ぶりに赤字転落 人民元・インバウンド需要は続くのか?
自分はこれのリスクを定量的に調べるだけの脳味噌がありませんから誰か専門の方に任せたい。
この低金利で調達してプロジェクトを行う、ということには限度があるように感じます。中国は、民間部門と国有部門とのキャッチボールが多すぎてよくわからない。きっとどこかに火種がある、とそんなふうに感じます。
少なくとも、こんなことをずっと続けられるはずがありません。きっとどこかで終わるはずと思います。
煮え切らないコラムになってしまいましたが、これにて〆ます。
以上です。