General Electricとおぢいさんのランプ(新美南吉)

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「おじいさんのランプ」という童話があります。

「ごんぎつね」「手袋を買いに」などで有名な新美南吉の作品です。

要約すると以下のようなものです。

  • 明治の半ばころ、ある村に貧しい巳之助という男の子がいました。
  • 巳之助はあるとき、隣町で「ランプ」を目にしました。
  • ランプの明るさに感動した巳之助は、「多くの人達に明るい文明的な生活をさせてあげたい」という一心で、ランプを売りさばく商売を始め、成功します。
  • あるとき、隣町に電気がやってくることになりました。
  • 最初は見くびっていた「電燈」ですが、その明るさがランプ以上なことを知り驚愕します。
  • いよいよ自分の村にも電気がやってきてしまうことになりました。ランプが売れなくなることを恐れます。
  • 彼は逆恨みして、お世話になった区長さんの家に放火しようとします。
  • ところが、マッチが見当たりません。しかたなく持ってきた火打石では火がつきません。
  • そのとき巳之助は気づきました。「古臭いものはダメだ・・・」と。

おじいさんになった巳之助は、孫に語ります。

いつまでもきたなく古いしょうばいにかじりついていたり、自分のしょうばいがはやっていた昔の方がよかったといったり、世の中のすすんだことをうらんだり、そんな意気地のねえことは決してしないということだ」(原文ママ)

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まさに今、それと同じことが起きようとしています。

巳之助が恐れた「白熱電球」ですが、その実用化にこぎつけたのはエジソンです。

そのエジソンがつくった会社が、General Electric、略してGE(の元企業)です。

かつてピカピカに輝いていたこの企業は、現在大変なことになっています。

暴落

 

理由についてはいろいろとあります。

かつて20世紀最高の経営者とヨイショされたジャック・ウェルチ元CEOの置き土産である金融事業が大赤字を出していることは一つの要因です。たしかに、いろいろとアレな数字が並んでいて、素人目にも何か危なそうに感じます。(ヤワラカギンコウよりは遥かにマシにみえますが・・・。)

GEキャピタルの整理はジェフリー・イメルト前CEOには荷が重すぎました。余計にごちゃごちゃにしてしまい、さらに本業に集中することが出来ずに、時代の変化に取り残されます。

(個人的な見解を述べさせてもらえれば、確かにジャック・ウェルチの言う「選択と集中」の戦略は間違っていませんでした。彼が間違っていたのは、ポートフォリオのバランスを無視して事業集中してしまったことにあります。金融事業が半分以上ってのはさすがにやりすぎです。)

イメルトCEO下では選択と集中戦略が蔑ろにされてきました。また、選択と集中する対象も古臭いものばかりになってしまっています。

その最たる例が重電事業です。



このPOWER(重電)セグメントには、火力発電、原子力発電などの設備販売、保守を行う部門が入っていますが、それらが利益率を極端に落としていることがわかります。また、受注も減少しています。

また、OIL&GAS(GEの石油天然ガス部門と子会社のベーカー・ヒューズの技術部門)もまた、利益をろくにあげていません。というか、どうみてもお荷物です。

TRANSPORTATION(主に鉄道事業)もイケマセン。北米の石炭輸送が頭打ちなので、BNSFやUnion Pacificなど鉄道貨物各社が積極的な設備投資を控えています。

未だにLIGHTNING(照明事業)なんて抱えているあたりも頭おかしいですね。祖業だからやっているんでしょうか?ソーラー発電もここに含まれるようですが、GEのソーラーなんて最近はほとんど聞きません。ファーストソーラーに売却したんじゃなかったんですか。Longi、ジンコー、GCLとか中国勢なんかに良いようにヤラれています。

その一方で、横のRENEWABLE ENERGY(再生可能エネルギー)は売上、利益ともに徐々にではありますが伸びていて、しかも利益率を向上させていますが、他社(シーメンスガメサ、新疆金風科技、VESTASなど)と比べると小粒感が否めません。

 

ようするに、「おじいさんのランプ」と同じなのです。

時代は再生可能エネルギー、新エネルギーに向かっているのに、火力発電、原子力発電、石油や石炭などの化石燃料、石炭の輸送などの古臭い事業に固執して、利益が漸減傾向です。GE株の投資家は、これをどうにかして欲しいと思っています。

 

 

一応GEもいろいろと手を打っています。

GE、世界で電力部門1.2万人削減 火力向け機器低迷で (日経新聞)

こういった流れはGEに限った話ではなく、シーメンスなども同様です。

独シーメンス、火力発電機事業などで6900人削減  (日経新聞)

三菱重工と日立ももがいています。

三菱重工、手痛い「虎の子」火力の不振 (日経新聞)

三菱重工はもがいていますが、いまだに人員整理には手をつけないようです。スピード感がないです。

 

 

 

各社とも火力発電の未来には悲観的です。なんせ現在の太陽光発電パネルでも、設置場所によっては原発や石炭火力のコストを下回るというのです。

こちらをご覧ください。

これは中国のGCLの決算資料ですが、太陽光発電PVのコスト低下が著しいことがわかります。

化石燃料による発電コストは現状で3~10US cents/kwhですが、PVのコストは二年以内に火力に十分対抗できるだけのコスト競争力になると書いています。(個人的には、それは条件次第だと思いますが。)

 

 

また上のデータは既存のポリシリコンやモノシリコンを用いたパネルによる太陽光発電を想定したものですが、いま研究が進んでいるペロブスカイト太陽電池システムが実用化すると、さらなるコスト削減につながるのではないか?と言われているそうです。

太陽電池の新顔「ペロブスカイト」、18.2%の記録が意味するもの (1/3) (実験段階ではありますが、発電効率の向上スピードがハンパなくて吃驚します。製造に高温状況が必要なく、塗布で済むことからコストも安そうです。)

 

 

また、風力発電のコストも激減しています。こちらも設置場所次第ですが、安定した強い風が吹き続ける海峡地域などでは、火力発電よりも低コストで発電できるそうです。

風力発電のコスト低下、欧州で先行

世界の再生可能エネルギーコストは大幅低下 7年で太陽光は73%下落とIRENA

 

太陽光にしても風力にしても、いちいち燃料を補充する必要のない電源です。

安定した発電は期待できませんし、メンテナンスコストもかかりますが、いずれランニングコストは火力や原子力を下回るのでしょう。

技術革新はますます速まり、未来のいつかの時点では、エネルギーを誰でも簡単に作れる世の中になるはずです。電池式電卓をソーラー電卓が脇に追いやったように、発電用塗料をボディにまぶした自動車がガソリン車にとって代わるような時代もくるかもしれません。なにごとも技術開発次第です。

 

こういった流れを受け、欧米企業のなかには火力事業からの撤退、もしくはスピンオフの方向で考えている企業もありますが、日本の三菱や日立、それに東芝などは政府・経産省との兼ね合いから色々と難しい立場に置かれています。

 

 

 

新美南吉の「おぢいさんのランプ」では、お国のために古いことを棄てて新しいことを始めましょう・・・という主張がされています。

しかし今はどうでしょう。どうも国が率先して古いものを残そうとしているような気がしてなりません。政府や大企業の一部の者たちが、反動的で暗愚だったころの巳之助と同じ価値観を持っているようにみえます。

 

巳之助はきれいさっぱり事業を諦めます。ランプに石をあてて割って棄てます。

いま企業、投資家、経産省に必要なのは、その思い切りじゃないかと、おいらは思います。

 

 


新美南吉童話集 (岩波文庫) [ 新美南吉 ]

 

 

幼いころにおじいさんのランプを読んでくれた母に感謝します。

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おいらの投資家としての一歩は、この本から始まったように思います。

(当時はこんな綺麗な装丁じゃなかったけどねぇ・・・)

 

by中卒くん