【統計/グラフ】成長続く『アジアのデトロイト』~タイの自動車産業をみてみよう~

【統計/グラフ】成長続く『アジアのデトロイト』~タイの自動車産業をみてみよう~

 

 

今回は、『アジアのデトロイト』こと、タイの自動車産業についてみてみましょう。

 

タイの自動車生産、輸出、販売は近年以下のように推移してきました。(データ元はFTI)

 

タイの自動車産業のこれまでの流れ

日本車メーカーおよびその下請け部品企業各社が集積するタイですが、これまでずっと安泰に成長してきたわけではありません。

まず、98年にはアジア通貨危機の混乱から大きく生産を落とします。

また、2009年にはサブプライムローンバブル崩壊の余波がアジアにも波及し国内販売と輸出ともに減少して生産調整が行われました。

さらに2011年にはタイの大洪水が起こり、日本では大震災が起きたことで日本車メーカーの体力が落ちて生産減少。

その後、これを挽回するためにインラック政権によって自動車購入支援策が実施されて大幅に生産と販売が伸びましたが、その後は反動から販売が急減、生産は輸出頼みの展開となり成長率が鈍化しました。

しかしここもと東南アジア経済の活発化によってタイの自動車産業は回復しつつあり、2018年には過去最高の生産量に達するとみられています。

 

 

2018年のタイ自動車産業は大幅に回復

2018年のタイ自動車産業は大幅に回復しています。

ここもと発表された統計でも二桁の伸びが確認でき、これは5年ぶりの高水準の伸びとなっています。

 

インラック政権による自動車購入支援策(First car buyer incentive program)から5年経ったことで買い替え需要発生

この要因として挙げられるのが、2011年9月から12年12月に契約された自動車に対する自動車購入支援策(First car buyer incentive program、30~50万円を補助する制度)から時間がたち、買い替えが可能になったことがあげられると思います。

2017年にはこれが切れてきましたが、ここまで販売回復は遅々として進みませんでした。

それがようやく動き出した、ということだと思います。

 

 

 

タイの自動車産業の現状~設備稼働率に問題があるか~

タイの自動車産業の現状としては、過去の生産ピークに投資をし過ぎたぶんは老朽化してきているとはいえ、それでも生産能力はいまだに7割前半程度に留まるのではいかと思われます。

今後は輸出にどれだけ期待できるかということになりますが、どうもアセアン地域全体に保護主義が蔓延しそうな気配があります。

ベトナムはVINグループ、マレーシアもプロトンを中国吉利とともに再建させたい、インドネシアも部品産業の誘致を進めたがっており国内に貢献した額次第で輸入税率を変えるとかなんとか言いだしています。

こういったことから、今後一本調子にタイの自動車産業が発展することは難しいかな、と個人的には思っています。

 

なお、この記事は以下の質問箱の内容にお答えする形で書きました。

いつも質問箱のご利用ありがとうございます。

今回はあまり言及しませんでしたが、他にもタイ国王の死去や、環境対策の増値税問題、政府によるここもとの公共投資積み増しなど複合的な要因があると思われます。

とりあえず、それらすべてを書いていたら日が暮れそうなので、掻い摘んで書き出してみました。

以上になります。